風船🎈でなぁんとなくイメージをつかむ熱力学入門用語１

2020年3月2日 18:36

今回は自分が物理で一番苦手な「熱力学」のはじめの方で出てくる用語をかみ砕いて自分なりの言葉で説明してみようというぱわぽｄｅプレゼン企画ＮＯＴＥです。物理の教科書を開くと厳密に定義をするためなのか、難しい専門用語を含んだ文字ばかり並んでいて、理解を助けるような絵があまり載っていない印象があるんです。自分としてはそれが入門者にとっての大きな理解の妨げになってると思ってます。言ってみれば、レベル１の人がいきなりレベル１００の言葉で書かれた本を読むようなもんですよ。

このＮＯＴＥは物理専門外の自分が書いているのでそんなに難しくないはずです。感覚的に分かりやすいことを優先したパワーポイントと言葉で表現したので、物理的に間違ってる箇所とか、ディテールが違うとか色々あるかもしれません。が、まぁ今後はそういう体で行くので、興味のある方は最後までお付き合いくださいませ。

第１回目となる今回のテーマは内部エネルギーです。

１．内部エネルギーＵと熱力学の第一法則

イメージがつかみやすいようにガスが詰まった風船🎈を使いましょう。ここからは、ガスと風船の外の世界（外界）の二者間でエネルギーのやりとりを考えますので、読者のみなさんはガスになった気持ちでいてください。なので、もしガスがエネルギーを獲得するとプラス、エネルギーを消費するとマイナスの符号がつきます。このことを先に把握しておかないとマジでちんぷんかんぷんになって詰みますからご注意を。それでは、はじめましょう。

いま、ガスが持っているエネルギー量のことを内部エネルギーＵと呼びます。このガスに熱エネルギーＱin を与えて、膨張エネルギーＷout を使ったときのことを考えてみますよ。

ＲＰＧ風に例えるなら、
　　内部エネルギーＵ　＝　体力（ＨＰ）
　　与えられた熱Ｑin ＝　ポーション（ＰＯＴ）
　　膨張Ｗout 　　　＝　ダメージ（ＤＡＭ）
と言った感じでしょうかねぇ。ここでの添え字 in, out は、ガスを基準としてエネルギーの増減が分かるように書いてあるもので、in はプラス、out はマイナスを意味します。敵との戦闘でＨＰは変化するので、戦闘前後の変化量を ΔＨＰとすると次のように書き表すことができるでしょう。
　　ΔＨＰ＝ＰＯＴ－ＤＡＭ
記号 Δデルタは変化量を意味してまして、今後ひっきりなしにでてきますよ。

ＲＰＧの例

この式に、先ほどのガスの内部エネルギーの変化量 ΔＵを当てはめると、
　　　 ΔＵ＝Ｑin－Ｗout 　（熱力学の第一法則）
になります。これがエネルギーは保存されるっていう熱力学の第一法則を表す式です。外部から熱エネルギーＱin を与えられるとプラスになり、外界の方向に膨張エネルギーＷout を使っているので符号がマイナスになります。この２つをトータルしたのが内部エネルギーの変化量 ΔＵです。

＜教科書によっては紛らわしい違い－Ｗと＋Ｗ＞
ここでちょっと補足ですが、教科書によっては次のように書かれていることがあります。
　　　 ΔＵ＝Ｑ＋Ｗ
これをみたら「さっきの式の符号と違うやんか！どういうことやねん！？」って混乱するでしょう。ごもっともですが、落ち着いてください。この＋Ｗはガスが膨張してるんではなくて圧縮されてる場合を考えたときを意味してるんですよ。添え字を付ければ次の通りです。
　　　 ΔＵ＝Ｑin＋Ｗin
　　（熱Ｑin を獲得、圧縮されるエネルギーＷin を獲得）
ガスの立場からしたら、熱Ｑin も圧縮エネルギーＷin も受け取ったら、両方プラスの符号になるってのは「そらそうよ」って感じじゃないですか。自分が出した例は、熱Ｑin は受け取って膨張エネルギーＷout を使っちゃう設定だったので－Ｗout と符号がマイナスになっているだけです。
　　　 ΔＵ＝Ｑin－Ｗout
　　（熱Ｑin を獲得、膨張するエネルギーＷout を消費）
ガスがエネルギーを受け取ったのか、それとも使っちゃったのかをしっかり把握しておけば、符号がどっちになるかなんて不安にならずに済みますよ。

＜状態量＞
さっきのＲＰＧの話の続きで、たとえば現在のＨＰが２５０、最大ＨＰを３００としたら「ＨＰ：２５０／３００」のような表記方法をしますよね。この現時点でのＨＰ：２５０っていうのがいわば内部エネルギーＵでして、回復したりダメージを受けると増えたり減ったりするわけです。例えば、戦闘後のＨＰが２５０から１５０に減ったとしたら、その時の内部エネルギーはＵ＝１５０、内部エネルギー変化量は ΔＵ＝１５０－２５０＝－１００になるっていう感じです。

ただ、戦闘前後の数字だけ見ても「どうやって戦闘後のＨＰになったん？」っていう経緯いきさつの情報はすっぽりと抜け落ちちゃうんですよね。もしかすると、ＨＰが２５０→２３０→２１０→１９０→１７０→１５０と５回攻撃を分けて食らったかもしれないし、２５０→５０→１５０とクリティカルを食らってから回復したかもしれません。戦闘内容の詳細は全然違うのに、戦闘後のＨＰが１５０になっているのは同じです。

大事なのは、どういった経緯であっても、戦闘における全てのターンの変化量を足し算していけば戦闘後の数値に行きつくっていうことです。このＨＰのように、戦闘前後を含めて全てのターンを一つの定まった数値で表現できる指標を専門用語で状態量と呼んでいます。どのターンを知りたいか決めた瞬間、取り得るＨＰは何個も存在するわけじゃなくて、ただ一つだけって決まっているんですよ。だから、計算するにはめっちゃ便利なんです。

「ＨＰがまだ２５０あるから安心やなぁ」の２５０とか「体温が４０℃超えてヤバイ、死ぬかも」の４０℃と一緒で、内部エネルギーは温度や体積、圧力などと並ぶ状態量の１つなんですよ。

鬼畜な教科書の紛らわしいところの補足と状態量

１'．風船が膨張しない場合の ΔＵ

ここで一つ思考実験をしてみましょう。ガスに熱エネルギーＱin を与えたのに、風船が全く膨張しないことを考えてみます。この場合、Ｑin は全てガスに蓄えられるので内部エネルギーの変化量 ΔＵは下式のようになります。
　　　ΔＵ＝Ｑin －Ｗout　（膨張しなければＷout ＝０なので）
　　　　　＝Ｑin
つまるところ、ΔＵはガスに与えた熱Ｑin そのものであって、これ以上深い意味はありません。

現実世界だったら「いやいや…… さすがに、なんかしらのエネルギーロスは起こるやろ？おーん」と難癖がつくところですが、ここでは思考をシンプルにするために、ガスには全くロスが生じないチート機能を付けてあります。このような都合が良いチートガスを専門用語で理想気体と呼びます。

さて、与えられた熱Ｑin はどこに行ってしまうでしょう？それはガスの分子運動を活発化させることに使われて、その分だけ温度が上がります。上昇した温度を ΔＴ、ガスの量をｎ、ガスの比熱をＣｖとすると、内部エネルギーの変化量 ΔＵは次の式で表せます。
　　　 ΔＵ＝Ｑin ＝ｎ・Ｃｖ・ΔＴ
ぶっちゃけると、この式は中学理科で習う水の比熱を使った熱量の計算式をただ難しくより本質的に書き直しているだけです。下のスライドをご覧ください。

例えば、比熱１ cal/(g･℃) の水２ g を３ ℃ 温めた場合、
　　　Ｑin ＝ｎ　・　　Ｃｖ　　　・ ΔＴ
　　　　　＝２ [g] × １ [cal/(g･℃)] × ３ [℃]
　　　　　＝６ [cal]
このように与えた熱が計算できますよって言ってるようなもので、量ｎ、比熱Ｃｖ、温度変化 ΔＴがそれぞれ対応していますよね。まぁこの際、水のような液体とガスの違いは無視してもらって、言いたいことは一見難しそうでやってることは中学理科に毛が生えたようなもんですよってことです。

熱力学を習いはじめた時、自分はこの「内部エネルギー」の名前から受けるふわっとした印象のせいで全然理解できなくて以降の内容がすべて詰んだんですよね。今思えば「教科書やからゆうてお前『読めば分かる』って勘違いしたらあかんで。誰に向けて書いとんねん。どんなアホにでも分かるように書くんが筋やろ。なぁ。むっずかしい言葉並べて、大好きなピストンの絵ばっか描いてやなぁ、あんなん分かるわけあらへんやん。分かってて気持ちよくなってんの自分だけやで、はっきり言うて」って教科書を書いてる人にお願いしたいですね。そういうわけでエライ人、なにとぞよろしくお願いいたします。

＜単位のはなし＞
中学理科ではとやかく言われないんですが、世界各国が独自の単位を使っていると混乱してしまいます。例えば、アメリカで距離を表すマイル、重さを表すポンド、温度を表す華氏［℉］を見ても自分は使い慣れていないのでパッと見ではどれくらいなのか分かりません。
そんな感じで、そういう混乱が起こらないようにできるだけ単位を統一する国際的な取り決めがあります。長さはメートル［ｍ］、重さは［ｋｇ］、温度は［Ｋケルビン］を使いましょうっていう具合です。例えば、先ほどの比熱の場合は［ｃａｌ／（ｇ・℃）］から［Ｊ／（ｍｏｌ・Ｋ）］になりまして、これは世界中の誰が見ても分かるように書き直したよっていう意味合いがありますね。

国際単位系

今回はここまで

第２回はエンタルピーとエントロピーについて語りたいと思います。どうもありがとうございました ( 灬'ω'灬 )੭⁾⁾

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