見出し画像

【星の王子さま】自分を感動させてくれる人が、すごい人だ。

このエッセイは私と「星の王子さま」の出会いから現在に至るまでの9年間をざっくりとまとめたものです。貴重なお時間を割いてまで読んで下さる方は、最後までどうぞよろしくお願いいたします(ちなみに写真は旅先の香川県の無人駅近くで出会った猫ですが・・・とても初対面とは思えませんね)。

さて、「星の王子さま」というと、内容は知らないけれどタイトルぐらいなら聞いたことあるよ!っていう方はかなり多いのではないでしょうか。かくいう私も知ってはいましたが、どこにでもあるただの1冊の絵本という程度の印象しかなく、大学を卒業するまで読んだこともなければ、それ以降も読む予定などありませんでした。

私がこの作品の中身を初めて知ったのは2009年8月のこと、東京・中目黒にて「星の王子さま」の朗読を含めたイベントに行った時のことです。本を手に持ち、文字を目で追うという面倒な作業が必要な読書とは違って、耳を傾けるだけという朗読を聴くスタイルは、リラックスして物語の世界にすんなり入っていくことができましたし、とても集中して聴くことができました。それだけではなく、声媒体特有の感情がプラスされて伝わってきたので、その世界観とあいまってすぐに圧倒されてしまいました。

聴いた直後は「なんだこれ!?すげぇんだけど、何がどうすごかったのか言葉では言い表せない。一体どう表現したらいいんだ?あぁ、誰か助けてくれ・・・」という感じだったのです。

その時の自分を今になって振り返ってみると、それまで自分の人生に無かった概念をポン!と目の前に出されてどう解釈していいのか分からない状態に似ているでしょう。というのも、当時の私はガチガチの理系人間だったからです。興味のほとんどは天体や自然エネルギーといった現実にある物の法則や現象(つまりは自然科学)に偏っていて、自分の中では絵本や小説などをはじめとする文学は世の中に実質的な豊かさをもたらさない価値の低いものだ、という位置づけをしていました。

それがどうしたことでしょう?そういった偏見はイベントにおけるたった数分、数十分のうちに理由も分からぬままに粉砕されてしまいました。そしてそれ以来、自分がすごいと思う人の定義は「科学を通じて人類の利益に大いに貢献した人」から「めったに感動することのない自分を感動させてくれた人」へと広がったのです。イベントで「星の王子さま」を朗読されていた大本眞基子さんはその数少ない中の一人で、大本さんの「星の王子さま」をいつでも聴くことができるようになればどれだけ素晴らしいことだろう、とその頃から思い続けてきました。

2009年当時、「星の王子さま」に関するCDやアニメ、映画といったものが全く無かったというわけではないし、別にそれらを鑑賞すればいいだけの話でしょ?と思われる方がいるかもしれません。でも、私が大本さんの手がける「星の王子さま」にこだわっているのには、次の2つの理由があったのです。

1つめは声質です。大本さんは3万人に一人の割合しか持っていない1/fのゆらぎの声の持ち主です。1/fのゆらぎには、それを見たり聴いたりすると人をリラックスさせる(癒し)効果があります。自然界でいうと、海辺の穏やかな波音や川のせせらぎ、蛍の光り方や木漏れ日の光、ろうそくの揺らめく炎などに含まれているそうです。

そんな1/fのゆらぎが含まれる声の持ち主は、大本さんをはじめ、森本レオさん、宇多田ヒカルさん、小田和正さん、美空ひばりさんと言った方々がいらっしゃいますし、ネットで検索すればまだまだ見つかります。1/fのゆらぎを持った人の声は実際に聴いてみるとスッと耳に入ってくるので、人の心を掴みやすかったり、人の心に響きやすいという性質を持っています。それは「星の王子さま」という作品の美味しい部分を伝えるのに、とてもマッチしている声質だったのです。
そして、2つめは大本さんの「星の王子さま」に対する情熱です。「星の王子さま」のナレーションはもちろんのこと、登場人物のパイロットや王様、ビジネスマン、ガス灯の点火夫など男性役が多いのにもかかわらず、全員をたった一人で演じきっていて、それだけで並々ならぬ思いをこの作品に持っているのだということが伝わってきます。私の知る限り、そのようなことをされている方は大本さん以外にはいません。

『いつか「星の王子さま」をCDなり何なりといった形にしたいんだよね』と、私が大本さんから初めてお聞きしたのは2011年4月の別イベントが終わった後に交わした言葉でのことです。「形になったら絶対に買いますよ!」と私は内心狂喜乱舞しながらそう答えていました。その時はまだ東京スカイツリーが建設中だったり、東日本大震災に見舞われた直後で世の中が混乱している時期だったので、そのこととリンクしてよく覚えています。

それから6年の月日が経った2017年、ようやく1つの実が結ばれました。スマホで聴くことができる「星の王子さま」が発表されたのです(総朗読時間:2時間56分27秒/¥1400)。残念ながら2019年3月現在は販売が終了したようです(    'ω'  ; )

朗読イベントでは時間の都合もあって、内容が数十分程度に圧縮されたものしか聴くことができなかったのですが、こちらは本1冊をまるまる聴くことができるという私にとっては最高に贅沢なものです。スマホでしか聴くことができませんが、知った時は飛びあがる程に嬉しかったです。ぶっ通しで聴くこと約3時間、気がつけば文字通りあっと言う間に時間は過ぎ去っていました(体感30分くらいでした)。

それから1年経った2018年の夏、その瞬間は訪れたのです。

2009年8月に出会ってから丸9年、2018年9月に大本さんが手がけた「星の王子さま」がついにCD化されます(¥3500)。それもこれも大本さんの長きにわたるこの作品への情熱があってこそだと思いますし、いつでもCDで聴くことができるようになるという事実は本当に夢のように感じられます。特に私が何か成し遂げたわけではありませんけれど、9年もの間待ち続けたことに対する思いをこんなに長々としたエッセイに書いてしまうほど、深い感慨に浸っています。今から9月が待ち遠しいです(追記:2019年3月現在、発売が延期されているそうで、ご所望の方はBOOTHの入荷お知らせメールを受け取る設定にしておくことをおすすめします)。

必死に書くのをこらえていましたが、作品の美味しい部分を一つ一つ抜きだして書いてしまうと作品の偏見的な解釈を押しつけることになりかねないですし、初めて聴く時の楽しみが損なわれそうなので、考察編はまた別のエッセイなり何なりに書くことにいたします。それでは( 灬'ω'灬 )੭⁾⁾

「ためになるわ」と感じて頂ければサポートを頂ければ幸いです。よろしくお願いいたします。