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褐色の珈琲、黄金色の麦酒、橙色の蝙蝠男/連載エッセイ vol.71

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.73(2012年・第6号)」掲載(原文ママ)。

2012年の最後を飾る、本エッセイの舞台は…またもや海外、『韓国』である。

思えば今年、この通信に寄稿したエッセイのネタは全て『海外モノ』…。

自分としては心身ともども、非常に見識が広がった1年であったといえよう。
ありがたい限りである。

さて、表面の記事にあるように、今回の訪韓目的は、今年8月に『修士課程』を卒業したばかりの『ハンソ大学』の『健康増進大学院・公衆衛生学博士課程』へ改めて進学した事を受けて、その第1回目となる集中講義に参加する為であった。

彼の地へは既に6回目の渡航となる私は、もはや手慣れたもので、岩手を出発する数時間前まで臨床活動に勤しみ、帰宅後1~2時間で支度を終え、前々回のソウル滞在時にオーダーメイドした鮮やかなオレンジ色のイタリア~ンな新品ライダースジャケットへ入念に防水スプレーを振りかけた上で羽織り、颯爽と旅立った。

正直、集中講義が始まるまでは、もう何度も体験している事なので、今回はエッセイのネタになるような『特別なコト』は起こらないかもなぁ…と考えていた。

…のではあるが、ところがどっこい、期せずして『ネタ・オン・パレード』な滞在となった!!

ここでざっと思い浮かべるだけでも、『天上天下な海獣の咆哮事件』や『疾走するミッドナイトスプリンター事件』、『日の丸ニューフェイス隊・玉砕事件』などなど、枚挙に暇がない。

(その詳細については…とても公共の紙面におこせる描写ではないので、ご勘弁願いたい!!)

そんな中、集中講義での、個人的な最大の『アクシデント』は、『謎の病原体襲来!?事件』であった。

それは行程3日目に発生した。

この集中講義後、直接西日本入りしてセミナー講師を務めなければならない私は、その準備をするため目覚ましアラームを作動させ、夜明けに独り身体を起こした。

そこで最初に感じたのは、『胃の膨満』。

おもむろに立ち上がり、お手洗い場へ。
…通常の生理現象。

布団に再び腰を下ろし、様子見。再び、お手洗い場へ。
…通常の生理現象。

引き続き様子見。
…いつのまにか出発時間。

バス乗車。バス発車。
…消化器官付近に異常発生。

気分悪化。
…大学に到着。
…お手洗い場に到着。

ワタクシ…発射!!!!

結局…その日、僅かな白湯以外は全く口にする事ができず、フラフラになりながらも講義だけは何とかこなし、しかしながら最終夜恒例の現地の大学関係者との『交歓会(…またの名を「潰し合い」withマッコリ&ソジュ)』を泣く泣く欠席し、講師仲間I氏の頭蓋調整を含めた全身フルチューンナップ施術を受け、大人しく就寝する事となった。

その効果があってか、幸運にも翌朝から徐々に体調は回復。

夕方のソウル市内での夕食までに『完全回復』するあたりが、ワタクシらしい都合の良さ全開ではあったが、明らかに『食あたり』とは異なるあの体調不良はいったいなんだったのだろうか…。
今となっては謎である…。

さて先程、この『事件』を『集中講義での最大のアクシデント』と述べた。

確かに、その渦中にある時、私は心の中で、『今回のエッセイネタは…この「体調不良」でキマリ!!』などとほくそ笑んでいた。

しかし、『今回の訪韓全体での最大のアクシデント』はその後に発生する!! 

集中講義終了後の『ソウル・フリータイム』中?? 
…いや、確かにソレはソレでイロイロあったが……最大の事件は……なんと……帰りの機内で起きたのである!!!!

帰国日の夕刻。

成田行きよりはかなり小型な、岡山行きの大韓航空機に搭乗。
私の座席は、最終列の3人掛けシートの中央。
まず私が席につき、次に通路側の団体客らしき女性が腰掛け、最後にかなり遅れて、窓際へ若い女性が腰を下ろした。

翌日から始まるセミナーの構想をあらかたまとめた私は、少し余裕をもった気分で、シート前方の小型モニターを注視した。
行きの機内では鑑賞が途中になってしまった某大作ハリウッド映画の続きを楽しむ為である。

そしてモニターが、機内放送で途切れる合間を縫って、私は手早く『帰国用税関書類』を記入完了。
旅慣れたものである。

ふと気配が気になって窓際の女性の方を伺うと、どうやら書類記入用の筆記用具を持ち込んでいないようで、韓国語の会話集を開きながら、必死に韓国人CAにその旨を伝えようとするも、うまくいかなく困っている様子。

そこで私は自分のペンを差し出し、『良かったら使いますか?』 
旅慣れたものである。

やがて食事の時間。
私は料理プレートを受け取りつつ、韓国ビールの缶をプシュッと開けてグラスに注ぎ、口へ運ぶ。
…美味し。

モニターでは人々の為に身を挺して奮闘する黒づくめの蝙蝠男が告げる…『礼を言うにはまだ早い』…渋い…渋いぜ…。

ふと気配が気になって窓際の女性の方を伺うと、どうやらコーヒーのお替りを貰おうと通路方向へ身体を伸ばすも、うまくいかなく困っている様子。

それならばと、私は『中継』役を買って出て、空のカップをCAへ手渡し、褐色の温かな液体で満たされたソレを女性に手渡そうとする。
会釈をしながら受け取ろうとする女性。
私は心の中で呟く…。

『礼を言うには……ん??……右の袖口が…異常に…冷たい…!?』

急いで手元を確認すると、テーブルに置いたはずのビールグラスが見事に手前方向へ倒れ、大腿上面に固定していた私の袖口から、ヒエヒエな液体がジョボジョボと侵入するアンビ~リバボ~な光景が私の網膜を貫いた!!!!

ギャァァ~~!!!! 
あんたヒトのグラス倒したね~~!!!! 

それで小声で『スミマセン』って…それだけ~~!?!? 
いやいや事態は急を要するから急いで拭いて…って内側だから拭っけなぁいじゃ~~ん!!!! 

急いで脱いで、裏っ返っして……だぁぁ~~めっちゃ染み込んでるぅぅ~!!!! 

おニュ~だからって念入りに掛けた防水スプレーは、表面にしかしてなかったからね、裏面には効かないよね…うん、納得納得……って腑に落ち取る場合かぁ~~い!!!! 

…ってお前、狸寝入りすなぁぁ~~!!!! 
のぉぉぉぉ~~!!!!!!

…翌日、緊急搬送先のドクター(クリーニング屋店主)は、非情にも『完全復元』が困難である事を告げた…。

そして私は心中で呟くのである…。

『まさか、帰りの機内で…最後の最後で…
 こんな目に遭うなんて……
 そういえば昔、偉い人が言ってたっけ…
 「オウチに帰るまでが遠足デス!!」ってね…。
 コレで……今回のエッセイネタは…
 キ・マ・リ…!!』


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