見出し画像

「音量を上げる」vs「音源を増やす」/連載エッセイ vol.89

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「姿勢ッコくらぶ通信 vol.91(2015年・第6号)」掲載(原文ママ)。

親愛なる読者の皆様こんにちは…博士デス…。
『ヒロシ』じゃなくて『ハカセ』デス…。

…と思わず前回と同じ書き出しを用いてしまったが、通信表面の記事にあるように、ワタクシ無事に『博士(健康科学)号』の学位を取得した。

幼少時より、割とひとつの事を掘り下げて(マニアックに!?)知識を吸収する傾向にあったので、学級文集などでは『○○博士』などと呼称される経験が多かったような気もするが、今度は正真正銘、紛う事なき『博士=その道のプロフェッショナル』となってしまった訳だ。

この『なってしまった』というのが、不謹慎かもしれないが、偽らざる現在の心境である。

私の所属する業界組織は、約四半世紀前に設立された当初から『姿勢科学』という観点を打ち出し、拡大していった。
しかしながら、『姿勢』はあくまで『健康学』の分野であり、『医学』の分野ではない。

当時の社会はまだ『健康の維持向上』よりも『身体的悩みの解消』に重きを置く時代であった為、我々は『代替医療の旗手』として世界中に浸透する『カイロプラクティック』の呼称を用いて活動範囲を広げた。

しかしながら『カイロプラクティック』を表向きとはいえ標榜する限り、『国際教育基準』を無視する事はできない。

そこで我々は海外大学で『カイロプラクティック学位』を取得する道を模索した。
正しい事を広める為には、居心地の良い『地中(アンダーグラウンド)』ではなく、お天道様が優しくも厳しい視線を注ぐ『地表(オーバーグラウンド)』へ打って出る必要があったのだ。

そして挫折する多くの仲間達の『屍』を乗り越えて、私を含む『1期生』がオーストラリアのマードック大学から『カイロプラクティック健康科学士』の学位を取得したのが2005年の事であった。

この『学士号取得』を以って、それまで混沌としていた日本の業界に『国際教育基準準拠』という大きな潮流が生まれる。
2006年に世界保健機関(WHO)が『カイロプラクティックの基礎教育と安全性に関するガイドライン』を公表した事も追い風となった。

但し、『学士号取得』で留まっていては、その影響は業界内に限られてしまう。

医学界を含めた、より広い層へ働きかける為には、せめて『専門教育および研究者としての登竜門』的な位置づけである『修士号』を取得しなければならない。

そのような経緯から始まった『プロジェクト』は、2012年に私を含む『1期生』が、韓国のハンソ大学より『カイロプラクティック理学修士号』を取得した事で結実する。

そして今回の『博士号取得』。

これを以って、我々は日本のカイロプラクティック業界における『教育および研究のトップランナー』を務め得る存在となっただけでなく、いよいよ我々の本来の姿である『姿勢科学』を世の中へ打ち出していく基礎固めが完了したとも言える訳である。

事実、それと同期するかのように、米国ウエスタンステイツ大学による日本人を対象とした『姿勢科学インターナショナルディプロマコース』がこの秋から始まった事が持つ大きな意味を、するどい視点を持たれる読者の方であれば、既にお気づきなのかもしれない…。

…と、このように、『学位取得』の観点でこれまでの歩みを『大河ドラマ』風に振り返ると、我ながら『仰々しい過程を経て現在に至ったんだなぁ…』とシミジミしてしまいそうになる。

しかし…やはり自分自身の印象としては『なってしまった』という感が未だ強い。
一体何故なのか…??

それは、『自分自身ではまだ何も成し遂げていない』とわかっているからだ。

ただ自分は、周りのお膳立てしてくれた『ステージ』を懸命に走り抜けただけで、自分自身が、その『ステージ』自体を創る側に回っていない…。
つまり、自分自身を成長させる事ばかりに注力して、周囲の人間を見渡す事を、どこか『二の次』にしてきてしまったのではなかろうか…??

『正しい事を広める手段は2つある』…昔からよく口にされてきた言葉である。

1つは『声を大きくする事(音量を上げる)』。

私は以前…というより、博士号を取得するまで、この考え方に偏っていたのかもしれない。

幸いにして私は、公共施設の会議室で講義をしていると、マイクを使っていないにも拘らず、隣室の使用者からスピーカーの音量を下げるよう要請されるくらいの大声の持ち主である。
だから自分自身が力を付けて、声を張り上げていけば、思いは結実する…そう信じていた。

しかし…それでは…それだけでは駄目なのである…。
いくら自分が懸命になろうとも、所詮、自分以上のものにはなれない。
残念ながら世の中は、より広くより深いのだ…。

もう1つの手段は『口を増やす事(音源を増やす)』。
つまり『人材の育成』である。

なにも全てに秀でた『スーパーマン(ウーマン)』を育てる必要はない。
歩みは遅くとも、自分なりの『思い』を持って、粘り強く活動してくれる人間…。
そんな仲間を本気で育てていこう。

そして、そんな仲間達が本気で取り組める『ステージ』創りが次の自分の仕事であり、自身の更なる成長は、その先にのみ存在する…そう確信しているのだ。

間もなく新しい年が始まる。

節分をもって特に後半イロイロあって、なお今も傷心が癒えていないワタクシの『厄年』も明ける。
人生を掛けた本気の勝負の日々が続くのであろう。
志を高く持って、『リスク上等』で踏み出そう。

そして…もしまたヤラカシテしまったら…このエッセイのネタにして笑い飛ばそう!!
(←期待するなよ…期待するなよ……絶対に期待するなよぅ!!)

そんな訳で、良くも悪くも(!?)ワタクシの『ガス抜き』となっている感のあるこのエッセイコーナー…連載開始16年目に突入する来年もご愛読頂けたら幸いである。

それでは皆様よいお年を!!


☆筆者のプロフィールは、コチラ!!

☆連載エッセイの
 「まとめページ(マガジン)」は、コチラ!!

※「姿勢調整の技術や理論を学んでみたい」
  もしくは
 「姿勢の講演を依頼したい」という方は
  コチラまで
  お気軽にお問合せください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?