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シェイク・ユア・ボディ&ソウル♪/連載エッセイ vol.109

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「姿勢ッコくらぶ通信 vol.111(2019年・第2号)」掲載(原文ママ)。

今号のエッセイは、表紙面にもあるように、毎回楽しみにされている『隠れファン』も多いと聞く、恒例の『アメリカ研修ネタ』である。

今回で15年連続&16回目の訪問となったラスベガス。

お客様からよく、『ラスベガスは憧れの街だけど……そんなに毎年行って、飽きませんか?』というご質問を頂く。
それに対する答えは、『YES』であり『NO』と言えよう。

確かに『旅行先』として考えるならば、同じ場所に訪問し続けるのは、少々勿体無い気も正直ある。

しかし、世界中の全ての場所がそうであるように、『行った事がある』レベルでは見えてこない『街の息吹』は確かに存在する。

ヒトの『わかる』には、『知る(知識を得る)→解かる(自身が深く理解する)→分かる(人と分かち合えるまで身に沁みる)』という段階があると私は考える。

特にも我々は、『健康』という『価値観』を扱う商売をしているので、それをお客様と分かち合う為には、常に自分自身の価値観を常に揺さぶる必要があるとも思っている。

そういう意味で、常に『壊しては創る(スクラップ&ビルド)』を繰り返し、訪問する度に風景を変えるラスベガスという街は、非常に刺激的だ。
彼の地の観光客の再訪問率が高水準なのも、そのあたりに理由があるのだろう。

さて今年は、到着早々、思わぬ形でその『価値観』を揺さぶられる事となった。
そう、ニュースでご覧になった方もいるかもしれないが、ラスベガスに雪が降ったのである。

これがどれだけ『常識外れ』な事かというと、乗車したタクシーの運転手が、運転しながら『フォ~~♪♪』と陽気に叫びつつ、スマホで動画を撮影し始めたくらいである。

もちろん、市街地は積もる程ではないにしろ、雨さえめったに降らない砂漠の街での珍事。
笑顔で興奮を分かち合おうとする運転手に、『いいからハンドルを握りなさいよぉ~!!(ペラッペラのノーマルタイヤなんだし!!)』と冷静にツッコミを入れる、北国在住の私であった。

そして、この異常気象の影響で、数日後、私は史上最高レベルに揺さぶられる事となる……身体的な意味で……。

話は戻るが、上記の理由から私は、何度も訪れる街において、必ず『初訪問』の場所をセッティングするようにしている。

そして今回の設定は『デスバレー国立公園での星空&朝日鑑賞ツアー』。

この選択は、今から約10年前に行ったグランドキャニオンにイマイチ感動できず、それ以降、所謂『大自然ツアー』を避けてきた私が、昨年の『アンテロープキャニオンツアー』にハマッた影響もあるが、一番の理由は、真夜中にホテルを出発して、昼には市街地へ戻ってこられるので、『パーカーセミナー』には午後のお目当てのセッションから復帰できる事にあった。

午前3時過ぎ。
仲間達5名と一般客2名で大型のアメリカ車に乗り込む。
私の座席は、ツアー責任者の定位置的な最後方シート。
この選択が、道中の私を酷く苦しめる事となる。

普段から日本国内を、様々な交通手段で巡り回っている私。
『移動時間=休憩時間』のようなものなので、まぁ、大概の場所で寝付く事ができる。

しかし……そんな私が、一向に寝られないのである。
とにかく……揺れが酷い。

後から判明した事であるが、あまりに車が大型である為、最後列のシートが、後輪の更に後方に位置する事に由来するらしい。
後ろに寄りかかってもダメ……前にもたれてもダメ……しかし……このアメ車の洗礼的な揺さぶりでさえ……悲劇の序章に過ぎなかったのである。

拷問のような2時間が経過した頃、添乗員から車内マイクで告げた。

『まもなく星空観測ポイントに着きます!! 
今夜は満月に近いので星を見るのに最適ではありませんが、とっておきのポイントにお連れしますよ!!』。

言葉通り、周りに明かりも建物もない平坦な場所に車が停まる。

『それでは見事な星空を堪能してください!!』という言葉に促され、車外に踏み出す仲間達。
その刹那、暗闇を切り裂く、悲痛な叫び声がこだまする……『ぎゃぁぁああ~~!! 寒ぅぅ~~ぃぃいい!!』。

我々はラスベガスの『上級者』である。
だから、2月下旬の現地の気候は知り尽くしている。
もちろん、この異常気象による寒波の影響も織り込み済み。
各々重ね着をして臨んでいた。

しかし……そんな我々を嘲笑うかのような強烈な冷気と吹きすさぶ強風。
ヤバイ……生命を維持すべく、全身の筋肉が収縮を繰り返し、熱を生み出そうとする。
それでも……追いつかない!! 
あっと言う間に奪われていく体温!! 

『もう車に戻るぅぅうう~~!!』。

震える顎(アギト)から絞り出された最初の脱落者の断末魔は、停車1分後にあっさりとアメリカの星空へと放たれたのだった……。

戻った車中にて暖を取る事、僅か20分。
いよいよメインイベントの『朝日鑑賞』。
場所は、侵食された黄土色の断層が朝日を浴びると黄金色に輝きだすという『ザブリスキーポイント』。

生ける屍のような我々は、添乗員に促されるまま、見晴らしの良い……つまり360度の全方向に吹きっ曝しな展望台へと、重い足を引き摺りつつ……向かった。

想像して頂きたい……。
夜明け前のスキー場の頂上に、スキーウェアも纏わぬ、単なる厚着な40~50代の男女が空ろに立ち震えている様を……。

そして、ここからが実に永かった……。
太陽がなかなか昇らないのである。

他にする事もなく、とりあえず各々がその場でクルクルと回り始める。
つまり……黙っていられないのだ。

ふと気づくと、全員の目には、涙が滲んでいた……。
そうか……これは『修行』なんだね……我々の価値観を揺さぶる為に、まず身体を全力で揺さぶろうという、彼の地の神様からのギフト(贈り物)……。

今は……この揺さぶりに全身を委ねよう……だってそうしないと……そんな神様のもとへ旅立ってしまいそうだから……。なんか……一周まわって、ボク、楽しくなってきたみたいだ……アハハハ……アハハハ……アハ……ハハ……。

数時間後……私はスーツに身を包み、セミナー会場に立っていた。
早くも来年の参加登録をする為、受付ブースで係の方と話していると、偶然、セミナー代表のパーカー大学学長がすぐ傍らを通り抜けた。
私は臆することなく声を掛け、言葉を交わす。

『今日の午前中のセッションはどうだったかな?』、学長が笑顔で尋ねた。

私はそれ以上の笑みを湛えてこう返した……『身体と魂を揺さぶられるような良い経験でした!!』。


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