マガジンのカバー画像

死語の世界

15
運営しているクリエイター

2022年2月の記事一覧

【死語の世界】第二十八話 『イチャイチャ』

【死語の世界】第二十八話 『イチャイチャ』

世の中少子化にもなろうというもの。イチャイチャしてるカップルなぞ、ついぞ見かけない。
今年は初詣に三ヶ所行ったが、イチャイチャするどころか、君たち距離遠いよと横から押したくなるような2人組ばかりであった。
イチャイチャを見かけるとしたら壮年の、おそらくは倫理から逸れた男女と、女性同士のおそらくはビアンであろうカップルくらいだ。
人前でイチャイチャする必要はなく、どちらかの部屋にしけ込んで(これも死

もっとみる
【死語の世界】第一話 『強情っぱり』

【死語の世界】第一話 『強情っぱり』

死語にはおおよそ2種類あって、ほんとにその現象や考え方や心性などが消滅してしまったものと、なにかの言葉(より簡単で広い意味を持つもの)に取って代わった場合とがある。「ヤンエグ」は「セレブ」に食われた。たとえば。

私が復活をめざしてやまない「強情っぱり」は往々にして「わがまま」で語られている。意地っぱりと頑固は強情っぱりにとても近いが、「わがまま」はちがうものだろう。強情っぱりを知らない、あるいは

もっとみる
【死語の世界】第十七話   『鍵っ子』

【死語の世界】第十七話 『鍵っ子』

いまとなってはこれもまた信じられないことかもしれない。
かつては、小学生がだれもいない家に帰ることのほうが珍しかった。昭和中期以降、専業主婦というあり方が爆発的に増えてくる時代であったこともあるだろうが、両親が働いていてもおじいちゃんかおばあちゃんか、あるいはおじさんやおばさんや近所に住むお手伝いさんなどが家にいて、なんやかやと手を動かしながら帰りを待っていてくれた。
もしそうでなくても、鍵がかか

もっとみる
【死語の世界】第二十七話 『不潔!』

【死語の世界】第二十七話 『不潔!』

「不潔」は衛生的でない、実際に汚らしいという意味と、精神的に淫らで汚らわしいことの二つの意味がある。「!」がつくものはたいてい後者の意味合いで使われるが、両方ともに死語となったようである。
物理的な意味が消えたのは、どんなおっさんもたいがい毎日風呂に入り、一度着れば洗濯に出し、なにより自分が発するにおいを気にするようになったことが大きい。加齢臭とかいう言葉を編み出し、資生堂やライオンは本格的にどん

もっとみる
【死語の世界】 第二十六話 『ふてえ』

【死語の世界】 第二十六話 『ふてえ』

神経が太いことである。度胸があり、何事にも物怖じしない。太いでもいいが、「ふてえ」といえばより臨場感が増す。図太いとかふてぶてしいとか、心臓に毛が生えてるようとか、面の皮が厚いとか、だんだんあつかましいという意味になるが、これらとはちょっと違う。だって、「ふてえ」は半ばいい言葉なのだから。
今もよく使われるのは「図々しい」だが、「ふてえ(太い)」とはニュアンスはまったく異なる。辞書で引っ張れる意味

もっとみる
【死語の世界】第三十話 『世界征服』

【死語の世界】第三十話 『世界征服』

小学校のころ、夢はなんだという質問に「世界征服」と答えるやつがクラスに2人はいた。たいがい勉強は中位のやつで、体格がよくスポーツにも長けており、やれば喧嘩も強い、そういうタイプがこれをいう。
なぜガキどもは世界征服を目指さなくなったか。これは興味深い。

わたしが塾のセンセをしていたときだから、90年代前半までは、まだいた。将来を聞かれたら、世界征服と答えねばならぬといった風情で、奴らはそう即答す

もっとみる