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NO.2の育て方㊹ナンバー2はイエスマンであるべきか

ナンバー2はイエスマンであるべきかどうかは悩ましいところです。

社長はイエスマンを好む傾向にあります。誰も好き好んで耳の痛いことを意見してくる存在を有難いとは思わないでしょうから当然かもしれませんし、私自身もイエスマン自体が悪だとは考えていません。

ただ、厳密に言うとイエスマンにも種類がありますし、イエスマンをどう扱うかで社長の器量が知れるというお話を今回はお伝えしたいと思います。

■イエスマンとは

イエスマンを辞典で調べてみるとこんな結果でした。
「信念がなく、何を言われても「はい、はい」と人の言いなりになる人。
どんなことでも権力や目上の人の命令に全く逆らわず無批判に従う人。」

イメージ通りなのですが、少し違和感もありましたので、もう少し掘り下げてイエスマンを考えてみました。

私なりに考えるとイエスマンには4つの類型があるのではないかと思います。

①萎縮型イエスマン
社長に意見を述べて、評価が下がったり、クビにでもなったりしたら嫌なので穏便に済ませたいと考えるタイプです。

部下からの意見に耳を傾けないワンマン社長の元では意見は出しづらいものです。それはナンバー2であっても同じです。

良かれと思って意見を出したところ、社長が猛烈に怒り出したり、反論し出したりすると自分の身が危ういと感じるでしょう。

降格、左遷、クビにでもなったらたまったものではありませんから、当たり障りのないことを述べるに留まる消極的賛成の姿勢です。

このタイプを従える社長は極端な表現で言えば、恐怖政治型の権力者で自分で部下の意見を封じておきながら積極性がないとか使えない部下ばかりと吹聴する傾向にあるように思います。

社長の判断がたまたま当たった時は業績は良いでしょうけれど、現場には慢性的に不満が充満していて、一枚岩にはなれない会社を作り上げてしまいます。

②利権型イエスマン
自らのポジションや権力を維持、拡大させるために社長のご機嫌を取る太鼓持ちタイプです。

漫画やドラマに出てくるわかりやすい腰巾着で、萎縮型と同じで保身のためではありますが、さらに自分の利益を拡大させようとしている不純な動機が見え隠れする点で萎縮型とも異なります。

社長の考えが正しいか間違っているか、会社の業績が良くなるかどうかなど全く興味はありません。社長の機嫌が良ければそれで満足です。

そのうえであわよくばそれに乗じて、自分の利権を盤石にしたり、利益を拡大しようと腹の中で考えているのでタチが悪いです。獅子身中の虫という存在です。

このタイプを従える社長は典型的な裸の王様です。イエスマンは自分以外の社員の意見が届かないようにブロックしますし、社長がどんなに間違っていようと賞賛するので社長も思い上がり、会社はおかしな方向に進んでいきます。

③無関心型イエスマン
社長にも会社の発展にも関心がなく、「はあ、そうですか。分かりました」というタイプです。

自分に与えられた仕事を黙々とこなすことしか興味がなく、積極的に関わろうとも思いません。

創業メンバーなどに多いタイプかもしれません。タイミングよく創業メンバーとなり、一定の役割を担ってきたため邪険に扱うこともできず、他に適材がいないため社内では重職に就いていたりします。

本音は自分にとって居心地がいいだけで、波風を立てることもなく、自分の興味のある仕事にしか関心を示さず、社長自身や業績には無関心です。

このタイプを従える社長は裸の王様であるか、変なところで創業時の苦労を共にしたと仲間と思っている義理堅い微妙なスタンスの社長です。

周りの部下からも頼りなく映りますし、肩書からすれば本来は積極的に事業運営に関わって欲しい期待に対しても無視を決め込みます。

④忠臣型イエスマン
社長の考えに先ずは理解を示したうえで、課題やリスクを提示し、条件を満たすのであれば賛成という姿勢のタイプです。

社長を尊重している点で他のタイプとは全く性質が異なりますし、頭から否定的な意見を述べないのはコミュニケーション能力の高さが伺えます。

社長の考えを尊重しながらも、上手くいかないだろうという冷静に考え、それでもどうしたら上手くいくかを前向きに検討し、意見を述べるので能力と誠実さがあります。

社長としても否定や批判を受けたとは感じず、じゃあどうしたらいいのかと意見を求めるでしょうし、会話も建設的な内容になります。

このタイプを従える社長はワンマン社長であっても慎重な最終判断をするでしょうから、大きな失敗をしない傾向にあると言えます。

相手の機嫌を損なうことなく、自分の意見を認めさせるというのは中国古典で名宰相と呼ばれた人物のやり方に通じるものがありますし、立派な処世術でもあります。

以上、イエスマンの4類型を考察してみました。

タイトルにある「ナンバー2はイエスマンであるべきか」という問いに対しては、イエスマンであるべきと回答しておきます。

ただ、表面的には同じイエスマンであっても、動機や姿勢、能力がまるで違いますし、理想的なイエスマンは言うまでもなく忠臣型イエスマンです。

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イエスマンの対極にある諫言役についても触れておこうと思います。

ナンバー2の役割のひとつには諫言(カンゲン)(目上の人の欠点や過失を指摘して忠告すること)が挙げられます。

諫言というのは一歩間違えると、社長を大激怒させ、自分の身が危うくなる行為です。

歴史上にはこの諫言によって、幽閉されたり処刑されたナンバー2も多数います。昔も今も諫言は命懸けなのかもしれません。

過去の記事でもこの諫言について、貞観政要の主役である唐の2代皇帝太宗と忠臣の魏徴のやり取りを書かせて頂きました。

太宗はあえて諫言をする役目を公に設置し、自分は誤った判断をしてしまうこともあるし、堕落してしまうこともあるので、厳しく咎めて欲しいと願い、諫言役を置きましたがその任についた魏徴がその期待に応えたという話です。

諫言とはいわないまでも、部下から上がった意見をどう取り扱うかで社長の人間性や器量がわかってしまいます。

多くの社長が「ウチの社員やナンバー2は意見がなくてどうも消極的で困る」などとよく愚痴をこぼしますが、果たして、意見が上がってこないのは本人たちの問題なのか、社長の問題なのかを一度じっくり考えてみて頂きたいと思います。

また、社外との打ち合わせで社長とナンバー2が同席する機会などでナンバー2が社長の話にどう反応しているかでおおよそ二人の関係性、ひいては会社の状態というのが透けて見えるものです。

大袈裟に社長を持ち上げる者、終始無関心か沈黙を保つ者、必要なタイミングで的を得た質問をする者。

どんなナンバー2なのか、社長の本性は何か、わかる人にはわかってしまうので理想的でないイエスマンを引き連れている社長は外部の目をもう少し意識されるのが良いと思います。

最後までお読みいただきありがとうございます。


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