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VERBE〜動詞的な日常

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「動詞としての文化」とは何かの考察
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2022年3月の記事一覧

病院で身体性について思いを馳せながら

ちょっとした手術を控えているので、病院に検査に行った。問題なく進行し、手術も日帰り、二日もすれば職場に復帰できる。検査も終わったので明日から少しだけ休みを入れ、家族サービスでもしてこようと思う。

病院の待合室で『モノノメ』2号を読んでいた。

乙武氏の義足プロジェクトを巡る対談が非常に興味深い。

先日も書いたように、僕は身体を「共通の基盤」と見なしていた。これは文化が身体において再現されるゆえ

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古代と神話をめぐる考察のメモ書き

昨日までのフランス語教育関係の話とはあまり関係がないのだが、古代・神話をキーワードとした企画ができないかと妄想している。

僕のフィールドの一つが飛鳥であり、定期的に通っている。飛鳥文化への気づきは飛鳥に詳しい友人を介してのものであったが、度重なる訪問が思わぬところで自分の専門と繋がった。

数年ほど、堀辰雄とプルーストの関係を探るアプローチをしている。堀の『大和路・信濃路』における奈良の探究が、

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発音における身体的疎外感

RPK2022の最中なので簡単に。

朝イチでラウンドテーブルとして発音の議論を行った。

僕らは文学研究からフランスにアプローチしたため、当然ながらフランス語習得も文字ベースとなる。文章の読解のために文法を覚え、適切な解釈を行うために文字を読み進める。

発音は文字媒体からすり抜ける。英語表現に慣れた状態でフランス語を読むと、au, euといった綴りに惑わされていく。文字は情報を伝達するが、その

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年次大会、そしてオンラインとオンサイトの狭間

大会中なので簡単に。

RPK2022が始まり、僕の所属する近畿大学を「オンラインの発進基地」として提供することにした。運営委員の何名かが近大にやってきて、学内のWi-Fiを利用してオンライン大会を運営する。これでトラブルがあっても連絡がすぐ取れるし、通信量の問題も免れる。

この大会も2年連続でオンラインとなり、名物である懇親会のケータリングやワインを楽しむことから遠ざかっている。

オンライン

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RPK2022前夜に勝敗の妙について考える

日曜は簡単に。

サッカーワールドカップ予選では、プレイオフで北マケドニアがイタリアに勝利した。昨年のユーロの優勝国がワールドカップ本戦出場を逃すことになった。

F1のサウジアラビアグランプリでは、予選のQ1でルイス・ハミルトンが16位となり、決勝のスタートはかなり後方となる。今年はフェラーリが躍進し、レッドブルも調子がよく、メルセデスは苦しんでいる。

新日本プロレスのニュージャパンカップ準決

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あえて個から国際関係を考える

国際文化学を「国際関係を文化で見る試み」と定義したときに、考察対象は当たり前ながら「国」と「国」になる。「国」というタームを使う時、僕らはそれを構成する様々な要素を簡略化し、あたかも「国」を擬人的に捉える。また、一億人からなる国民の多様性を喪失し、「日本人は」という大きな主語を用いてしまう。

だが当たり前のように「国」は単一のイメージで語り得ない。「日本人は」という語り口はどれだけの要素を取りこ

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サードプレイスを成り立たせる磁場

RPK(関西フランス語研究会)の年次大会が近づいてきた。

https://rpkansai.com/

今回はメインのラウンドテーブル(発音について)と、科研費のプロジェクト「フランス語大学」の活動報告の二本に登壇する。どちらもチーム戦であり、僕はメインで発表をする役割ではないのだが、フランス語大学の方は自分で総括をしたかったこともあり、朝からスライドを作成してこれまでの活動をまとめていた。

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気管支にリアリズムを感じる

咳喘息という持病を抱えているため、つねに咳き込んでいるが、この春の気温差により気管支がやられた。咳き込まないように活動を抑えねばならないのだが、こんなときに限って多忙となる。

僕は障害者手帳をもらっているわけではないので、いわゆるカギ括弧つきの「健常者」のポジションにいる。そして社会は健常者を一つのカテゴリに詰めて構成・展開していく。季節が変わり、喘息が厳しくなっても、仕事の保障はない。

「健

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「仲介」を通してキーワードを考える

祝日は簡単に。

ある学会の仕事で、文化についてのキーワードを集めている。自分の興味が文化と文化の「あいだ」なので、そこに関連付けた作業が必要となる。

「文化」と一口に言っても、その内容は様々だ。日本人は日本文化を生きているが、では日本文化とは何か?このような答えのない問いを発する教員もずるいという自覚はあるが。

文化はしばしば具体例によって説明される。日本文化は和食であり、箸を使う、といった

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生と死の境目について考える

墓にまつわる研究会に少しだけ関わらせてもらっているが、僕の視点はつねに「境界線」「意味の多重性」に向かう。

墓とは第一に「死者」の象徴となる。当然ながら死者はこの世には存在しない。死者は「不在」だが、それが墓石などによって示されることは、いわば「不在」の「在」という撞着を孕む。

死者が灰になる。灰は消滅を意味する。しかし灰は痕跡として残る。灰は「消滅」か「残存」か。かつてジャック・デリダが『火

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抽象思考を個人的経験に落とし込むことで

昨日届いた研究誌を読みながら今後のための考察を練り上げている。去年のシンポジウムの報告書を読みながら、研究仲間がアメリカの思想に基づいて指摘した「個別」と「普遍」の関係性に目がとまった。

言うまでもなくアメリカ合衆国は複数の州(≒国)の連合体であり、その性質は過去の13州時代には特に際立っていた。個々に違う州が連合し、統一体である「連邦」が存在するが、そこで様々な問題が生じる。「自分」たちを一つ

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文学研究として可能なことを一つずつ積み上げる

日本国際文化学会の年報が完成した。これから順次会員へと発送され、書店で注文できるようになる。

7月に近畿大学で全国大会を開催した。ここですべてをかけるつもりで「個別」と「普遍」を議論するシンポジウムを企画した。本誌には巻頭特集として、その議論の内容がすべて収められている。

そもそも国際文化学への接近は、2010年代の国際情勢が後押しとなった。リベラルが善とされ、グローバリゼーションによる開かれ

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日常がトラブル無く過ぎていくということは幻想に他ならない

新しいMBAを持って大学のWi-Fiにつなぐと、ソフトが立ち上がらない。情報処理関連の部署にヘルプを依頼し、担当者が三名よってたかって調べてくれた。まったく原因が突き止められずに1時間ほど経過し、どうやらネットワークのセキュリティ対策が邪魔をしていたことが判明する。チェックボックスを一つ外しただけで元通りになった。その間に僕は事務員の方に「ほぼ日手帳」を見つけられ、自分もユーザーだと言われて手帳の

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スポーツに触れられる地域について考える

朝から晩まで忙しい一日だったが、息を抜く時間がないわけではない。

少しずつ読み進めている。日本サッカーの下部リーグを取材したノンフィクションで、J3やJFLのチームの歴史が語られている。

昨日も述べたようにJFLを観戦できる環境は贅沢だ。サッカーのリーグはプロであるJリーグ(J1〜J3)と、アマチュアリーグから構成される。JFLはアマチュアの最高峰であり、リーグ終了時の成績と一定の条件を満たす

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