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12の基本スキル「考える」:論理的思考力(2/2)

本ブログ記事は『ビジネススキル 完全攻略 -基本編-』からの抜粋になります。全部まとめて読みたい方は、是非、電子書籍をご購入ください。

「考える」スキルの前編は、こちらになります。


その他の思考法(論点思考/デザイン思考/MECE)

その他の思考法として、よく耳にするものを3つご紹介したいと思います。

論点思考

論点思考とは、問題解決や議論の際に、核心となる論点や問題点を明らかにして、それを中心に思考を進める方法です。

このアプローチでは、関連する情報や意見を整理し、重要な点に焦点を当てて議論を深めたり、解決策を導き出したりします。
論点思考を効果的に行うには、以下のステップが含まれます。

  • 論点の特定:
    問題や議論の核心となる論点を明らかにします。
    これは、問題の本質を理解し、何が重要で議論や解決を必要とするのかを整理するプロセスです(これがとても難しい・・・)。

  • 情報の整理と分析:
    論点に関連する情報やデータを集め、それらを整理・分析します。これには、事実(ファクト)、証拠(エビデンス)、前提、仮定などが含まれます。

  • 論点に基づく思考:
    特定された論点を中心に、論理的かつ批判的に思考を進めます。
    このステップでは、論点に対する異なる視点や解釈を検討し、有効な論拠を構築します。

  • 結論の導出または解決策の提案:
    論点に基づいて、論理的な結論を導いたり、問題解決のための具体的な解決策を提案します。

図表.論点をフレームワークにマッピング

こちらの図表では、カスタマージャーニーマップのフレームワークに論点をマッピングし、どのプロセスでどういったことが論点になっているのか、ビジュアル的に表現した事例です。

仮説思考と論点思考の違いに関して、目的とプロセスの2つの観点から補足説明しておきます。

  • 目的の違い:
    仮説思考は未知の現象を理解しようとする時に、一連の推測を立ててそれを検証するのに焦点を当てています。
    一方で、論点思考は問題や議論の中核となるポイントを特定し、それに基づいて思考や議論を展開することに重点を置いています。

  • プロセスの違い:
    仮説思考は仮説の立案と検証のサイクルを通じて進むのに対し、論点思考は問題の本質を捉えるための論点の特定とそれに基づく分析や議論が中心です。

仕事をしていると、論点が定まっていないため、議論が永遠に収束していかないという場面に出くわすことがあります。

論点を特定するのはなかなか難しいのです。論点を特定するためには、業界や市場の論点、企業内の論点などを常日ごろアップデートしておくことが大事です。

これによって、思考プロセスを大幅に短くさせることができます。
特に毎年12月にシンクタンクやコンサルティングファームが出版する「経営の論点」などの書籍は、重要な論点を分かりやすくまとめているので、チェックしてみてください。

デザイン思考

デザイン思考(Design Thinking)は、ユーザー中心のアプローチを通じて複雑な問題を解決するためのプロセスやマインドセットです。

このアプローチは、元々デザインの領域で活用されていましたが、現在では、ビジネス、教育、社会問題など幅広い分野で応用されています。

デザイン思考は、創造性、共感、実験的な学習を重視し、革新的な解決策を生み出すことを目指します。
デザイン思考のプロセスは一般的に以下の5つのフェーズで構成されます。

図表.デザイン思考の考えるステップ
  • 観察・共感(Empathize):
    ユーザーのニーズ、経験、挑戦を深く理解するために共感を育みます。観察、インタビュー、体験を通じてユーザーの視点を得ることが重視されます。

  • 問題の定義(Define):
    共感のフェーズで得た洞察を基に、解決すべき具体的な問題を明確に定義します。このステップでは、問題をユーザー中心の視点から捉え直すことが求められます。

  • アイデアの発想(Ideate):
    問題に対する解決策を広く考え出すためのブレストやアイデア生成のセッションを行います。このフェーズでは、量より質を重視し、さまざまな可能性を模索します。

  • プロトタイプ(Prototype):
    選択したアイデアを具体的な形にして、解像度がそれほど高くなく、かつ小規模なモデルやプロトタイプを作成します。このステップは、アイデアを早期に視覚化し、迅速に検証することを目的としています。

  • テスト(Test):
    プロトタイプを実際のユーザーに使用してもらい、フィードバックを集めます。このフェーズでは、解決策の効果を評価し、必要に応じてアイデアを練り直し、改善します。

デザイン思考は、直線的なプロセスというよりは、反復的かつ柔軟な探求のプロセスと捉えられます。

問題の理解が深まるにつれて、プロセスの早い段階に戻って問題の再定義や新たなアイデアの発想を行うことがあります。
このアプローチは、ユーザーのニーズを深く理解し、それに基づいて革新的で実用的な解決策を生み出すことを目指します。

MECE

MECE(「ミーシー」と読みます。Mutually Exclusive, Collectively Exhaustiveの略)は、問題解析や情報整理の際に用いられるフレームワークのひとつで、総合的に網羅的(Collectively Exhaustive/モレなし)かつ相互に排他的(Mutually Exclusive/ダブなし)な構造を意味します。

この原則は、特にコンサルティング業界で広く用いられ、複雑な問題を明確かつ効率的に解析するための強力なツールとされています。

図表.MECEのイメージ
  • 総合的に網羅的(Collectively Exhaustive/モレなし):
    この部分は、取り扱う情報やデータが問題の全体を網羅していることを意味します。
    すべての関連情報がカバーされ、漏れがないようにすることで、分析の完全性を保証します。このアプローチにより、問題のあらゆる側面が考慮され、見落としがないようにします。

  • 相互に排他的(Mutually Exclusive/ダブりなし):
    この部分は、各カテゴリーまたはセグメントが重複しないことを指します。
    つまり、ある情報やデータは一つのカテゴリーにのみ属し、複数のカテゴリーにまたがって存在することがないように構造化されます。
    これにより、情報の重複を避け、分析の明確さを保証します。

MECEの利点は3つあります。

  • 明確な問題の構造化:
    問題を小さな、扱いやすい部分に分解することで、より具体的かつ効率的に解決策を導き出せます。

  • 分析の完全性の保証:
    すべての要素が網羅されるため、重要な点を見落とすリスクを減らします。

  • コミュニケーションの改善:
    情報が整理されているため、チームメンバーやステークホルダーとのコミュニケーションが容易になります。

MECEを用いることで、ビジネスの意思決定、戦略立案、プロジェクト管理など、さまざまな状況での問題解決プロセスが効率化され、より効果的な結果が期待できます。

全体 vs 部分

論理的思考では、「全体」と「部分」の関わりがとても大切です。
これは問題を解く時や考えをまとめる時の基本的な考え方を教えてくれます。

この関わりは、特に問題を整理したり、情報を整頓したり、複雑なシステムやプロセスを理解するのに役立ちます。

図表.全体と部分のビジュアルイメージ

全体と部分の関わり
全体の視点では、問題やシステム全体を広く見て、全てがどう関連しているか、どんなパターンがあるかを理解します。

ここでは、「全体は部分の単なる集まり以上」という考え方が使われます。部分の視点では、システムを構成する個々の要素や部品(コンポーネント)に注目し、それぞれを細かく分析します。

これにより、全体をより深く理解し、問題の特定の側面に対する解決策を見つけ出せます。

重要性と使い方
問題解決:
問題を大きな視点から見て全体像をつかみ、その後で細かい部分に分けて、各部分が全体にどう影響しているかを調べます。

これで、問題の根本原因と効果的な解決策を見つけることができます。

システム思考:
複雑なシステムを理解する時には、システム全体とその部品(コンポーネント)の相互作用を考えます。

部分だけを見ても全体の動きを完全には把握できません。
この考え方は、全体と部分の関わりを重視し、全体の中で各部分がどう振る舞うかを理解するのに役立ちます。

情報の整理:
情報を整理する時にも、「全体と部分」の視点が役立ちます。
情報をカテゴリーに分けることで、情報を理解しやすくし、各カテゴリーが全体の中でどんな役割を果たすかを把握できます。

結論
「全体と部分」の関わりを理解し、上手に使うことは、論理的思考を鍛える上で欠かせません。

この方法を使うことで、深い洞察を得て、複雑な問題を効果的に解決できるようになります。

この考え方は問題解決、システムの設計、情報の整理など、さまざまな場面で使えます。

抽象 vs 具体

論理的思考を向上させるには、「抽象」と「具体」という2つの考え方も重要です。
これらは思考を深め、幅広くし、柔軟にするのに役立ちます。

図表.抽象的 vs 具体的

抽象(Abstract)
定義:
抽象とは、個別の詳細や具体例を超えて、アイデアや概念を一般化することです。
これにより、さまざまな状況や文脈で使える広範囲の理論やアプローチを作り出せます。

重要性:
抽象化することで、異なる情報や現象の共通点や基本原則を見つけることができます。
これは、複雑な問題をシンプルに理解したり、新しい問題に既存の解決策を適用するのに役立ちます。

具体(Concrete)
定義:
具体とは、実際の事例、詳細、データを指し、抽象化された概念を実際の状況や対象に適用することです。
これにより、理論や概念を現実の行動や理解に変えることができます。

重要性:
具体的な情報や例は、抽象的な概念を理解しやすくし、その概念が実際にどのように機能するかを示します。
これは、新しい知識を学ぶ、アイデアを試す、または新しい技術を実践する際に不可欠です。

抽象と具体の相互作用
相互補完:
抽象と具体は互いに補完し合います。抽象化によって形作られた一般的な原則や概念を具体的な状況に適用することで、それらの有効性を評価し、理解を深めることができます。

思考プロセスの強化:
 論理的思考を発展させるには、抽象的思考と具体的思考のバランスが必要です。抽象的思考は広い視野で物事を見る能力を、具体的思考は実際の問題解決やアイデア実装に役立ちます。

応用
問題解析:
抽象的な枠組みで問題を理解することで、根本的な原因を特定しやすくなります。
一方で、具体的なデータや例を使うことで、解決策を明らかにし、実行計画を立てることができます。

創造的思考:
新しいアイデアや概念を生み出す際には、既存の情報を抽象化してから、それを新しい文脈で具体化することで、革新的な解決策や手法が誕生します。

論理的思考では、「抽象」と「具体」のバランスと適切な使い方が、問題の理解、効果的な解決策の開発、新しいアイデアの創出に欠かせません。

これらの要素を上手く組み合わせることで、より複雑な問題に対応し、柔軟で創造的な思考が促されます。

■ 事例:持続可能性
抽象:「持続可能性」

説明
「持続可能性」という概念は、環境、経済、社会の健全性を長期にわたって保持するという抽象的な目標を示しています。この概念を広範囲にわたる活動や方針に適用されますが、その具体的な実施方法は多岐にわたります。
具体:「リサイクル可能な材料で作られた製品を購入する」
説明
この具体的な行動は、「持続可能性」を実現するためのひとつの方法です。リサイクル可能は材料から作られた製品を選ぶことは、資源の有効活用と廃棄物の削減に直接貢献し、持続可能な消費の具体的な例を示しています。

「全体と部分」の考え方は、話し始める時の全体像の提示や、全体を包括的に捉えるフレームワークの活用や作成において重要になってきます。

また、「抽象と具体」の活用に関しては、具体的な事象を抽象的に概念化してメッセージ性を持たせて伝えたり、反対に、きわめて具体的に話をする時に有用な考え方です。

こういう細かいテクニックもマスターできるようになると、資料作成や提案書作成のレベルをもう一段階上げていくことができます。

次は、「書く」スキルに関して学んでいきます。



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