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コロナウイルス連作短編

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#新型コロナウイルス

コロナウイルス連作短編その201「よしよし、いい子いい子」

 映画サークルの飲み会の席,見木才田の視線は自然と水戸部彌生の方へと向いてしまう.長い黒…

コロナウイルス連作短編その200「今年で30歳になった」

 相川周防は曇天の道を歩いていたが,その途中で,背の高い少女と中年女性,おそらく少女の母…

コロナウイルス連作短編その199「僕たちはそう馬鹿じゃない」

 布野久遠はスーパーマーケットの野菜売り場でパート店員の松土みち子と商品の鮮度管理につい…

コロナウイルス連作短編その198「強い帯気音で発音する」

 大型ショッピングモールから歩いて5分ほど,何の変哲もない道と小型の駐車場とを隔てる色褪…

コロナウイルス連作短編その197「とってもしあわせな1日」

 高速道路をまたぐ歩道橋の上のほう、友子はそこから、妻の春香が階段を下っていくすがたをな…

コロナウイルス連作短編その196「俺にはハーフがちょうどいい」

 西口怜衣は買い物のため近くのショッピングモールへ赴く.階段を上った先には小ぶりな屋外広…

コロナウイルス連作短編その195「よりマシな白人」

 前で重量級の肉ピザを食べるメルヴィン・パワーズがそんなことを言うので,三芳一色は少し戸惑う. 「はは,日本人が“白人”……なんですか?」  一色とメルヴィンは同じ町に住む友人だ.メルヴィンがこの町に引っ越してきた頃,居酒屋で偶然出会い,酩酊の勢いで友人となったのだ.焼酎の飲みっぷりが素晴らしかった.  メルヴィンは黒人だ。彼らは日本ではそう簡単に出会えない人々と一般には思われている。だが一色は大学や勤務先で何度も彼らに会っており,友情を結ぶのにも特に躊躇いはなかった.黒人文

コロナウイルス連作短編その194「誕生」

 安倍晋三元首相の国葬,そのデモへの参加者の写真を曽根山幹弥はTwitterで眺めている.掲げ…

コロナウイルス連作短編その193「自分にちゃんと誇り持たなきゃ」

 休み時間,田村堅碁は隠し持っているポテトチップスを味わいながら食べる.セブンイレブンで…

コロナウイルス連作短編その192「トイレ行きたいなら行けよ」

 図書館.提橋木羽は弟の提橋穂希が本を立ち読みしているのを眺めている.落ちつかなげに足踏…

コロナウイルス連作短編その191「不純男として」

 田山比呂は友人であるファビアン犀潟とカフェで寛いでいる。スマートフォンを眺めていると、…

コロナウイルス連作短編その190「これが男のやり方だ」

「お前、何か最近、ニキビよくできてないか?」  鮪の刺身を食べながら同僚の相川周防がそう…

コロナウイルス連作短編その189「サル、リス、そして人間」

 結城真沙美は職場近くの公園で昼食を取ろうとしている。  今週、彼女は職場の科学館ではな…

コロナウイルス連作短編その188「近くに立って、ウルトラチョップ」

 そう歌いながら、彼女の娘である真海佳英が、床に屈みこんでいた阿連川瑠々の首にチョップをする。骨が軋むような重苦しい音が響いた。佳英はそれに対し特に反応することもなく、無邪気に笑っている。“骨の関節が軋むような重苦しい音が響いたと、少なくとも瑠々は思った”と認識を改めた方がいいのかもしれない。  不思議と冷静に現状を把握していたが、同時に瑠々は苦痛も感じていた。手刀のように伸びた佳英の右手が彼女の首に衝突し、肉へとめり込んだ後、その内部へと衝撃波が広がっていく。波は濁った痛み