コロナウイルス連作短編その188「近くに立って、ウルトラチョップ」
そう歌いながら、彼女の娘である真海佳英が、床に屈みこんでいた阿連川瑠々の首にチョップをする。骨が軋むような重苦しい音が響いた。佳英はそれに対し特に反応することもなく、無邪気に笑っている。“骨の関節が軋むような重苦しい音が響いたと、少なくとも瑠々は思った”と認識を改めた方がいいのかもしれない。
不思議と冷静に現状を把握していたが、同時に瑠々は苦痛も感じていた。手刀のように伸びた佳英の右手が彼女の首に衝突し、肉へとめり込んだ後、その内部へと衝撃波が広がっていく。波は濁った痛み