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コロナウイルス連作短編

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記事一覧

コロナウイルス連作短編その216「どこか、より安心できる場所」

とうとうですよ 湖東優 とうとう 妻の湖東釈 妹の騎子 彼女のパートナー富士見野わかば 彼らに…

コロナウイルス連作短編その215「Uatași ua Cristian desu」

 そうして梅時クリスがボールをシュートしようとする瞬間,やはり現れるのは松崎セイドゥだっ…

コロナウイルス連作短編その213「きみはひとり」

改札で きみは彼の右手を握る その指は意外なまでにほそいんだけども 力はとにかくえげつなく…

コロナウイルス連作短編その214「彼女は男が好きだから」

 それから三島新後は母である三島安乃から新しくできた恋人を紹介されるのだが、それが男性で…

コロナウイルス連作短編その212「狐の嫁入り」

 晴れたのだが,雨は未だに降り続けている.  狐の嫁入りだな,政銅一木はこう思う.今年,8…

コロナウイルス連作短編その211「Solarisの由来」

 舞花あさぎはLINEで友人の芳山笹と話している。外からは豪雨の音が聞こえてくる、鼓膜を無数…

コロナウイルス連作短編その210「明日もまた生きていく」

 真南茶織は自宅のトイレに籠り、ただ壁を見つめている。  数年この部屋に住んでいるが、この黄ばんだ壁を真剣に見据えるたび、シミでできた不気味な顔面が新しく見つかる。今日は両目と口を構成する3つの茶色いシミが、過剰なまでに縦に伸びている。  気味が悪い。そして誰かに似ている。だが分からない。  今日は厭な1日だ。あのLGBT法案が国会で可決されてしまった。修正前の法案ならまだしも現法案が通ってしまった今、予想通りLGBT当事者がこの流れに怒り、より密接な団結が行われようとしてい

コロナウイルス連作短編その209「日本人男性、白人男性、日本人女性」

 塩野義星野が道を歩いていると,向こう側からカップルがやってくるのに気づいた.そしてその…

コロナウイルス連作短編その208「無償の愛」

 植木口津は居酒屋で会ったばかりの男に自分の考えを話し続けていた. 「僕の恋人が選挙行け…

コロナウイルス連作短編その207「桃色、黒色、黄色」

「今日もまっピンクの服着てんな!」  待ち合わせ場所にやってきた川田神牙公のド派手に過ぎ…

コロナウイルス連作短編その206「寛容 読み方:かんよう」

 犬束尾高は息子の竜興,そして彼の同性の恋人である青井幹生と出前の寿司を食している.尾高…

コロナウイルス連作短編その205「da da dă dă dada」

「“いえいえ,私の日本語はそれほど上手くないですよ”」  クラウディア・ドゥミトルに対し…

コロナウイルス連作短編その204「日本人離れしてる」

 箱柳彩果は駅で友人を待っていた.地上階の改札,その傍らに立ちながらSpotifyで音楽を聴い…

コロナウイルス連作短編その203「玉出紫朗は山崎一子という少女が好きだった」

 であるからしてあるときに、廊下ですれちがった男子生徒たちが「4組の長髪デブス、キモいよな」と言ったのを聞いて、瞬間湯沸し器のように機械的かつ猛烈なかたちで、彼らにブチギれることになった。 「お前らさ、影でデブスだなんだグチグチ言ってて、男として恥ずかしくねえのかよ、なあ?」  わざとマスクをずらしたうえで彼らに睨みを効かせてみせる。生徒たちは、足の裏に錆びた釘でも突き刺さったかのような、あわれもあわれな表情をあらわにし、そして早歩きで逃げさった。  よりいっそうムカついたん