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詩「旅人」

詩「旅人」

何気なく
開いた詩
私の内界を照らして
私はかつての舞台に立ち返った

遠い遠い
故郷のようだった

私が私であると
気付くもっと前から
私の奥で
流れている何か

それは
内なる産声だったか

孤独を背負った
旅人の背中が
途端に
見えてくる

詩「靴」

詩「靴」

玄関にいる
出番のない靴は
さみしくって
歩き出したり
しない の?

詩「答え」

詩「答え」

ある程度の
理想はあるが
正しい答えは
持ち合わせていない

むしろ
正しい答えがあれば
うたは
しばられる

ひとは
勇気と共に
うたう

祈るように

詩「詩集」

詩「詩集」

詩集をひらくとき
ページは
行き当たりばったりが いい

うしろから
追われたくない

片付けるように
追いたくない

詩集をひらくとき
思いがけない ものでありたい

詩「空」

詩「空」

言葉は
私の空を覆って
横に切れて
消えていく

掴むことは
できない

空には
ひとつの詩が
うまれようとしている

うまれていながら
はなれていく
気配

ぽつんと
残ったのは

あの人の
やさしさの空

「洗濯物」

「洗濯物」

洗濯物

自分のものではない洗濯物 を 干すとき

「今 あなたは生きている」
 ということよりも

「昨日 あなたは生きていた」
 という実感ばかり 強くなって

なんとなく もの悲しい

物干し竿に、
衣類を干す そのことが

あなたを 罪なく
置き去りにしている ようで…

詩「今」

詩「今」





この手の平には
なにもない

ただ 頼りない体温のみが
私 を知らせている。

この記憶は
すでに届かない

履けなくなった靴のように
あなた を眺めている。

たったひとつ あるとしたら
それは 今

私の名と 手をつないで
ときには 手放して

今 と 約束を交わしている

「裏地」

「裏地」

言葉を着ます。

感性といった、
裸に似せた衣装を。

ときには
共感といった、
流行りに似合う言葉を。

結局のところ
顔が言葉から飛び出して
意味への勘ぐりによって窒息します。

「傘」

「傘」

傘立てには 傘が立たされている
日傘と雨傘と 両方が。

守るための傘だとしたら
ひとはいつ傘をひらくだろう
晴れでも雨でもなけりゃあ いつ…

もし守るとしたら
私自身の傘で
私のアンテナを発動させて
私の芯は辛抱強く
立たされなければならない

「仕組み」

「仕組み」

人間って不思議だなぁ

はしゃいで 騒いでも、
寂しさや虚しさも健気についてくるんだもの

そして
自分のかっこわるい姿を思い出して
クスクス笑えるんだもの

十分じゃないか と言い張るこころと
なんか違うや と訝るこころで
自分という人間をあやつる つもりが
またもや とんちんかん!

そんな日もあれば
ひっそりと こころが満ちていくときもある

注いでも 注いでも
あさっての方向を向きながら 

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「眠る犬」

「眠る犬」

その四肢は証明ではない。
かぎりなく心臓に吸いつき
私の黒目のように、余すことなく
瞬きに飲みこまれてしまいそうなのだ。

「ひと」

「ひと」

ひとはどうしてか、
横になったものを起こそうとする

自分にきちんと従って、
わたしは起こす

転がったぬいぐるみ、
倒れた自転車、
傾いた本たち、

疑いを抱くことなく、
恩とも思わず、

ひとの仕草 は
日常へのご挨拶 として

「服」

「服」

裏表逆に着ている と
このぼくは言われちまった

それでも一応
ぼくの大事なものは
隠し通せていた のか

もしや
こんなふうに

恥じらいだけ に
ぼくは袖を通していたってのか

「行列」

「行列」

言葉の行列は
ついにスーパーボールのように

はねて ぶつかって つっついて 小突かれて

やかましい
まったく やかましい

しかし それは 初歩の模倣でしかない
今にも脱げそうな靴だ

言葉よ
言葉にケンカは付きものか

踏みつけぬように
でも 
刻みつけるように
紡がれた言葉と出合うのだ