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【第2回】これからのビジネスは「インスピレーション」で切り開く ~心を整え感覚を研ぎすます9つの方法~

前回の記事では、なぜ今「インスピレーション」が必要なのか、そしてインスピレーションとはそもそも何なのかについて書きました。

今回は
①ビジネスパーソンこそインスピレーションを活用しよう
②インスピレーションを呼び起こす9つの方法
についてお伝えしていきましょう。

ビジネスパーソンこそインスピレーションを活用しよう

リーダーこそインスピレーションを

新商品の開発や新規出店をする際には必ず情報収集を行なうはずです。論理的かつ分析的に判断をするためには十分な情報が必要不可欠だからです。しかし冒頭にも述べたように、現代社会は変化が早くかつ複雑な要因が絡み合っています。そうした状況で論理的であろうとすればするほど決断できない状況に陥ってしまいます。また企業経営と地球環境問題の両立など、論理的に答えを出せない問題もあります。

しかしリーダーたるもの方向性を示さなければなりません。それも単なる指針としての方向性ではなく、部下やパートナー企業、取引先の従業員たちの心も掴むような方向性を打ち出したいもの。「この会社で働くことが誇りである」や「一緒に仕事ができることが楽しい」と思わせるようなビジョンを掲げるべきです。

そんな時こそ「ビジョンのインスピレーション」の出番です。リーダーの心の中から沸き起こる気持ちを、熱意を、情熱をビジョンとして掲げましょう。理屈ではなく感覚でいいのです。心の中からわきでてくるインスピレーションに耳を傾けて言葉にしてみましょう。真っ直ぐで実直な思いのこもった言葉にこそ、人は共感し巻き込まれていくのですから。

マネージャーに必要なインスピレーション

企業活動を評価する指針は数字です。売上げ額や利益率や顧客獲得数などが一般的で、数字で計測が可能なものに限定されます。しかし企業活動は数字で計測できないことも多くあるもの。そもそも企業というのは人が集まってできているものであり、ビジネスとは人と人とのコミュニケーションによって成立しています。

「測定できないものは管理できない」として、部下の行動を数字のみで判断していませんか。マネジメントのためにはすべてを数値化して管理すべきであるという一種の幻想に捕われていないですか。人である部下を数字だけでマネジメントすることは無理なのです。とはいえ、個人的な感情だけで評価をするのも適切ではありません。

その際に必要なのが「バランスのインスピレーション」です。数字にこだわりすぎるのではなく、人柄だけを評価するのではなく、全体を俯瞰してマネジメントをするのです。このバランスが肝となります。いい按配で部下をマネジメントするためにはインスピレーションを有効に活用しましょう。

ビジネスパーソンのインスピレーション活用法

現場の最前線に立って活動する現場のビジネスパーソンは、もっとも顧客に近く、顧客のニーズを直に感じる立場にあります。顧客のニーズに気づき、ヒアリングするためには共感力が必要であり、その共感力の源泉となるのがインスピレーションなのです。

ただ、前提として、「やらされ仕事にはインスピレーションは生まれない」ということはお伝えしておきます。会社から与えられている目標を軽くとらえ、適当にこなしているようでは成長がありません。成長がないということは意欲がないということ。自らの意志と覚悟がなければインスピレーションが起こる源泉がないのです。仕事をすることで「ありたい自分」を目標設定することが効果的です。

それを踏まえた上で、「表現的インスピレーション」も大いに期待できます。商品を顧客に説明するときの言葉やしぐさや態度は顧客の特性によって変えるもの。その表現方法もインスピレーションに従って変えていくことで、今まで以上の成果を出すことができるでしょう。

やりたいことを見つけたい人のインスピレーション

「好きを仕事に」や「自分にあった天職を見つけよう」。最近はこうした言葉があふれています。好きなことや、やりたいことが明確に定まっている人ならばいいのですが、それがわからないから困っている若手社会人もいるはず。逆にそうした言葉に惑わされて、自分の人生を歩んでいない感覚に陥っている人もいるかもしれません。

「好き」や「やりたい」の気持ちはどこから生まれるのでしょうか。1ついえることは、「答えはあなた自身の中にある」ということ。ただそれに気がついていないだけです。これまでの生活環境ですり込まれてきた常識によって、自分の感情や感覚が鈍くなっているのです。自分の感情に寄り添いましょう。感覚に身を委ねるのです。考えるのではなく感じるのです。

注意すべきこととして、最短でゴールにはたどり着けないことを知っておきましょう。やりたいことを見つけるには時間がかかります。焦りすぎることなく、でもあきらめるのではなく、時間をかけて自分の気持ちと向き合っていくのです。インスピレーションが気づかせてくれるまで身を任せるのです。

今の自分を変えたい願望を叶える方法

「今の自分を変えたい」という願望は少なからず誰にもあるものです。内気である、他人の意見に流されてしまう、自分に自信が持てない、すぐにネガティブな発言をしてしまう、などなど。でもそこから1歩踏み出し、具体的な行動に移れる人は少ないもの。変化を起こすということは、慣れないことやできないことに取り組むということであり、それは痛みや苦痛を伴うからです。

そのため多く人は変わりたい願望があっても、具体的な行動を取りません。それは願望を単なる「夢物語としての願望」としかとらえていないからです。その願望を心の奥底から沸き起こる情熱の塊にすることで、具体的な行動を起こすことができます。そうした強い願望を生むためには、その願望がどうしても叶えたいものにまで練りあげていく必要があります。それは自分の感情に正直になるということであり、自分の感覚をインスピレーションとして受け入れるということでもあります。

家庭生活でも活躍するインスピレーション

今の時代、共働きが多く、家事の分担を夫婦で分けている家庭も多いかもしれません。しかしどこかで、「仕事で疲れているから家庭ではゆっくりしたい」や「家事はパートナーに任せたい」、そうした思いがあるビジネスパーソンもいることでしょう。

パートナーの性格によっては受け入れてもらえるかもしれませんが、それに完全に甘んじてしまっては、夫婦関係は円滑にいかなくなることも多いでしょう。遠慮して口に出せずに心にため込んで、ある日突然爆発して破綻してしまっては手遅れです。

そうならないためにもパートナーの求めていることを感じ取る努力を忘れてはいけません。家事や育児の大変さを共有・共感することが大事です。話を聞いて相手の言葉の奥にあるものを感じ取り、表情から感情を理解し、喜びや悲しみを共有して共感するのです。その共感をより深めるためにはインスピレーションを研ぎすます必要があります。

インスピレーションを呼び起こす9つの方法

あえて不自由な状況に身を置く

これまでの人間社会は「不便である」や「物足りない」があったからこそ発展してきました。すべてが満たされている状況であったならば、さらなる向上を目指そうという気持ちはわいてこないでしょう。あえて不自由な状況で、制限を設けることで、インスピレーションを生み出しやすい環境へと身を置くのです。会社で仕事を

していても、人、物、資金のすべてがそろった状況などないはずです。時間や資金や資源には何かしらの制限があるもの。その制限を言い訳にするのではなく、制限があるからこそ、どうすればその状況で新たなものを生み出せるかと、視点を変えてみましょう。不自由な状況はインスピレーションを刺激するチャンスです。何かが足りないからこそ新しいアイデアが浮かんでくるのです。

たとえば、ネットがない環境で考え事をしてみたり、使える資金を半分にして企画を考えてみたり、冷暖房がない環境に身を置いてみたりと、意図的に不自由な状況で取り組んでみてもよいでしょう。

完成された世界観に浸る

絵画、音楽、映画、小説、詩などは作者のインスピレーションによって完成した芸術作品です。その作品にはとてつもない労力が込められています。作者のインスピレーションが具体化した世界観に触れ熱量を感じることで、我々のインスピレーションも刺激されることでしょう。

また思想、哲学、宗教の世界観を学ぶことも重要です。内容を学ぶことも大事ですが、その内容を生み出すに至った気づきや思考の過程を追体験することも大事なのです。当時の世界情勢や社会への向き合い方、姿勢から学べることもあるもの。知識はインスピレーションの質に大きな影響を与えます。

日本の伝統芸能には、「守破離」という師弟関係があります。型を「守る」ところから修行が始まり、その後は自分に合ったよりよいと思われる型をつくることで既存の型を「破る」。最終的には師匠の型、そして自分自身が造り出した型から自由になり、型から「離れ」て自在になることができる。そうした型にはまることも参考になるでしょう。

妄想の世界で遊ぶ

人間のもっとも強力な武器は「想像力」であるといっても過言はないでしょう。事実、想像力によって新しい商品やサービスが生み出されてきています。人間の想像力で社会は発展してきたのです。スペースXのCEOであるイーロン・マスク氏は仮想サミットで、「2050年までに火星に自立都市を建設する」という壮大な野心を語っています。

最初は「こんなことができたらいいなぁ」という夢物語から始まります。大事なのはそうした妄想ができる世界を持つこと。誰にも邪魔されない、自分だけの妄想を楽しむ空間を頭の中に置いておくのです。妄想世界で遊ぶ中で、想像力は大きくなり、そして創造へとつながっていくでしょう。

妄想はインスピレーションにとって大事な栄養です。妄想というワクワク感はインスピレーションをより力強いものへと導いてくれます。遊びはユーモアや笑いを生み、面白いことは創造において非常に役立つものとなるでしょう。

質問の力を活用する

「質問の質が人生の質を決める」、といわれるほど質問には大きな影響力があります。事実、私たちは日常生活で無意識的に何度も自分に質問をしています。「今日は何を食べようか」「今日は何を着ていこうか」「仕事が終わったら何をしようかな」など。そうした自分に投げかける質問の方向性を意図的に変えてみるのです。

「より充実した毎日を過ごすためには何をすればよいだろうか」「どうすれば新しい顧客を獲得できるだろうか」「今よりも売上げを増やすためにはどうすればいいだろうか」などと、自分に向かって質問してみましょう。人間の脳はとても優秀です。問われれば、その問いに答えようと活動的な動きをとるようになります。インスピレーションのはたらきを活発にさせます。

効果的な質問は、漠然としていた考えをより具体的なものにすることに役立ちます。視点を変えて新たな可能性を見出す助けにもなります。さらに、ゴール達成のための具体的手順を明らかにして行動を促すことにもつながるでしょう。

書き出して「見える化」する

頭の中にあるものを書き出して、目で見える状態にしてみましょう。目で見ることでインスピレーションが刺激され新たな言葉が浮かんでくることもあります。それをさらに書き出すことで連想ゲームのように次々とインスピレーションが連鎖します。ビジュアライゼーションの力です。実際に目の前には現れていないけれども、その状況をあたかも現実のように頭の中で鮮明にイメージする力のことです。スポーツ選手は自分が成功したところを繰り返し鮮明にイメージするイメージトレーニングを行なっています。

ビジュアライゼーションの力をより高めるために、ビジョンボードをつくってみてもようでしょう。ビジョンボードとは、叶えたい理想や夢を可視化するためにコルクボードにイラストや写真を貼りつけて作成するものです。日常生活で目に入る場所に設置することで、常日頃から自身の理想や夢について意識するようになります。その結果、新たなインスピレーションがわいたり、高いモチベーションの維持ができるようになります。

他にも、書き出すことで頭の中に空白を生むことにもなります。空白があるから新しい情報が入ってきて、その情報が混ざり合ってまた新たなインスピレーションがわきあがってくるのです。

身体を動かす

「机に向かってアイデアを出そうとするも、煮詰まって何も思い浮かばない」や「ちょっと外に出て散歩をすると新たな発見があった」、そんな体験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。運動が与える精神的な恩恵は、科学的にも検証が進んでいます。

米スタンフォード大による研究論文「Give Your Ideas Some Legs:The Positive Effect of Walking on Creative Thinking」では「ウォーキングがアイデアの自由な流れを切り開くほか、創造性を高め身体の活動を向上させるためのシンプルでかつ簡単な解決策である」と結論付けています。

外に出るのが難しければ、椅子から立ってみてもよいし、首や腕を回してみるのもよいでしょう。最近では「スタンディングミーティング(立って行なう会議)」を取り入れる会社が増えているそうです。身体が動けばつながっている感覚にも変化が起こります。

インスピレーションは何か1つに集中して凝り固まった意識よりも、意識を分散させていろいろな情報を脳に取り入れ、新たなつながりを生むことで起こりやすくなるものです。

信頼できる他者と対話を重ねる

あなたは信頼して自分の本音を話せる相手はいるでしょうか。会社の同僚だと何かしらの利害関係があるかもしれませんし、夫婦だといつのまにか日常生活の話や相手の至らない点にすり替わっていくかもしません。あなたの話だけを聞いてもらえる信頼できる第3者がいると、思考の深まりはかなり大きくなります。

対話とは言葉のキャッチボールです。質問をして返答をし、また質問をする。その繰り返しによってひとりでは気がつかない発見が生まれます。自分で話していて、自分で答えに気がつくというのもよくあることです。考えているアイデアをまるっと相手に渡してみるのもよいでしょう。「あなたならどうする?」と。

またプロジェクトを組んでみることもオススメです。それも業界や職種が違う人同士が集まってみるのです。今はオンラインでそういうサービスも提供されています。他者の力を借りて、また他者の力になることはインスピレーションの循環でもあります。

天地大自然と共鳴する

我々人間はどこで生きているのか。天地大自然の中に生きています。太陽の光をあび、植物が発する空気を吸い、自然が形つくる大地の上を歩き生活しています。人間が作り出すことができない水を飲み、土から育つ作物を、海で獲れる魚を食して生きています。自然と共存して生きているのです。

科学技術が発展した今では、人間の力だけで生きているような錯覚を持つかもしれません。しかし経済の発展を求めるがばかりに、地球環境問題を引き起こしてしまっています。どこかで自分の力で生きている感覚から、天地大自然に生かされて生きている感覚への転換が必要かもしれません。自然に対して「謙虚」であることが、生かされて生きている側のもつ心の在り方ではないでしょうか。

生かされて生きている感覚に目覚めると、天地大自然とつながる感覚が大きくなります。共感・共鳴する感覚が呼び起こされます。その感覚を大きく育てながら、より深く育てることで自分の奥底にある力に、インスピレーションにつながっていくのです。

祈る

「祈り」と聞くと何か願い事を叶えるための行為を思い浮かべるかもしれません。または神社や仏閣に参拝したときの作法としてのお祈りをイメージするかもしれません。しかし祈りとは単なる作法としての行為だけではないのです。

どうしようもない絶望や困難に直面したとき、人は祈らずにいられません。大きな災害や地震に見舞われたとき、人間にできることはたいしてありません。人間の力ではどうしようもない状況に陥ったとき、祈る以外の方法をとれないのです。祈りとは理由なく人間が無意識的に、本来的にもつ崇高なものなのです。

祈りをささげる対象は人によって違います。神様に祈る人もいれば、お釈迦様に祈る人もいれば、キリストに祈る人もいるでしょう。それは各々の信条によって決めればいいことです。大事なのは、人智を越えた存在とつながる感覚を持つことです。さらには「畏敬の念」を持つことです。その感覚が強くなればなるほどインスピレーションも起きやすくなるはずです。

次回に続く

著者プロフィール

神田道雄

取次師/国家資格キャリアコンサルタント
法学部法律学科を卒業後、大手居酒屋チェーン店に新卒で入社。その後は、大学生の就職支援→イベント運営業→採用代行業務→転職希望者の支援→Webディレクター→コンテンツマーケシングディレクター→キャリアコンサルタントと分野や職種がバラバラな仕事に興味の赴くままに従事。その後、家業を継ぎ宗教法人金光教竹原教会の教師となる。神信仰を体得することで、これまでの経歴が単なる興味で選んだのではなく、インスピレーションに導かれてのものであることに気づき、新たな視点での物事の見方を体得。
これまでも1000人以上の方とキャリアコンサルティングを実施するなか、インスピレーションに気づいてからの面談や対話は、相談者との関わり方の度合いや成果に雲泥の差がでている。実際に相談者自身の気づき力、満足度も向上している。心を整え感性を磨く「心磨き隊」増加中。

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