猫を初めて看取った

猫を看取った
先日、猫が旅立った。17歳のロシアンブルー
亡くなって翌日の出棺まで見ていた姿は本当に寝ているようだった。
「起きて」と声をかけたらまだ起きるのではないかと思うほどいつもの寝姿だった。

2年ほど前から慢性腎不全と診断され、最後は尿毒症を起こし数日して亡くなった。最後の数日間は苦しみながらの最後だった。
最後はあまり意識がない状態で呼吸が徐々に止まっていったようだった。

呼吸をしてないことに気づいた家族に呼ばれていった。
脈はあった気がしたが勘違いだった。
心音が聞こえないか確かめたが何も音がしなかった。
全く食べ物を口にしていなくてもお腹の音がよくしていたけど、その音も全く聞こえなかった。瞳孔も開いて反射は見られなかった。
死後硬直はまだなく、ただ四肢がだらんと垂れていた。

通院していた病院に連絡して亡くなったことを伝えた。
気をおとされないでください。と声をかけていただいた。

このとき私は
葬儀のこともある、お金の準備もある、まだ他の猫もいるということもあり
たしかに気を落としている場合ではないと思った。
病院のスタッフの方とはちがうニュアンスではあったが、たしかに気を落としている場合ではなかった。職場には猫の状態がよくないということも伝えてあるので仕事の心配はしてなかった。それに都合がつくのが私だけだったのでしっかりしないといけなかった。
きちんと見送らないといけない。

葬儀社に連絡しないといけない。ペット専門の葬儀社を探して問い合わせをして翌日に予約が取れた。

人が亡くなった場合、出棺までに24時間は明けないといけないがペットでは特に決まりはないので実際には数時間後でも可能だったらしいが葬儀社の予約はいっぱいで、あと1時間後くらいならと案内があったが場所が遠すぎて翌日になった。そのため24時間以上はまだ猫と一緒にいることができた。


翌日までに準備しなければいけないもの

猫が生前食べていたものや花束を準備しなければいけなかった。
とりあず食べ物を探しに行く。食べ物はすぐに準備できた。

問題は花束
老猫はなかなかきれい好きで、神経質で、イケメンで、きつい臭いが好きで、香おりきつめ花が好きだった。
生前、ユリを飾っていたら涙を流しながらユリの近くでずっと香りを堪能していた。アレルギー症状が出ているのに近くでユリの香りを堪能することを決してやめなかったのでユリは買わないことになった。
※猫にユリはよくないので近づけないようにするか撤去したほうがいい

でももう亡くなったのでユリでもいいかなと思ったが残念ながら、ユリは売ってなかった。あっても花粉が付くので候補から外した。

次に思い浮かんだのはカスミソウ。
カスミソウの中でも香りの強いカスミソウが好きで顔を近づけて堪能していた。3月という時期もありカスミソウはたくさんあったのでひとつは決定した。でもカスミソウだけだとちょっと地味なので相棒になる目立つ花がいる。何かないか花屋をうろうろしていたら青い花が目に留まった。
よく見たら青いバラ(染色したバラ)だった。

ロシアンブルーなので青いバラ
これはいい。カスミソウの相棒は青いバラになった。
片手で持てる程度のミニブーケを作ってもらい帰路についた。

帰って猫の様子をうかがう
もう体が硬くなっていた。

毛がふわふわで薄毛とかもなく、綺麗な柔らかい毛のまま硬くなってしまった猫を何度も何度も触った。
自宅で亡くなったこととガーゼや綿を全然準備していなかったため体内からいろいろ出てくるかもしれないと思っていた。
亡くなる数日前からは何も口にしなくなっていたので尿や糞などは全くでなかった。前日に点滴をしたが漏れてしまい、それが亡くなった日もしばらく点滴した穴から液体が漏れていた。夜には止まったが今度は鼻から液体が出てくるようになった。

亡くなる前日の診察で体内に水がたまり始めている可能性が高いと聞いていた。肺に水がたまりだすと呼吸が難しくなることも聞いていた。
肺に水が溜まっていたのかはわからなかったけど、鼻から茶色っぽい黄色の液体が出てくるようになったため何度も顔を拭きペットシーツを取り換えた。

ペットシーツを取り換える度に猫の体を起こすのだが、毛は柔らかいのに体が硬直しているので変な感覚だった。柔らかいけど硬い
シーツを交換し、顔を拭く。
そして顔を見る。
しつこいようだが本当に寝ているようだった。


起きて

体を起こすたび「起きて」と呼びかける
目を覚ますわけないけど、あいさつがわりに呼びかけていた。

そう、起きるわけないけど何か喋った方がいいような気がしていた。
体起こすよ
顔拭くよ
毛とくよ
線こうだよ(仏間が一番寒いので翌日まで猫を仏間に預けることになった。以前飼っていた犬も仏間にいる)
おやつだよ、もう好きなだけ食べていいから。
花だよ、ロシアンブルーだけに青よく似合ってるね~
スーパーボールも置いておくよ、好きなだけ遊んで棺には入れられないから今のうちに遊んでおいてね。
首輪は一緒に燃やせないから遺品として残すね。

―ほかになにを喋っていたんだろう
生前よりしゃべっていたのかもしれない。ただの独り言だったけど、明日には骨になってしまうので何か話しておこうと思っていたのかもしれない。

午後だけ出社したが、ずっとフワフワした感覚がなくならなくて
もともと集中力はないけどさらになくなっていた気がする。


これが初めての看取り

これまでに何匹か動物を飼っていたが猫は途中で出て行ってしまって看取ったことは一度もなかった。犬のときは母が看取った。犬はフィラリアに感染しており心臓まで寄生虫が達し手術したが最後は手の施しようがないため、安楽死を選んだ。
20年たった今でも安楽死でよかったのかと母はときどき話す。

私は亡くなる数日間、危険な状態で入院してもいいけど病院でそのまま亡くなるかもしれないからご家族で看取ってあげてほしいと言われた。
言われた数日間、亡くなるんだということは頭ではわかっていたけど、よく理解していない感じだった。
言われたこともわかるし、2週間も一緒にいられないだろうこともわかっていた。でも実際言われると10割も受け止めきれてない感じだった。

猫はその間も苦しくて鳴いたり、動けないのに這って移動したり、立つこともままならないのにトイレへ行こうとしたり必死だった。
どうしてあげるのがいいのか
いつまで続くのか。亡くなるまでだけど、それでもすごく長く感じた

もうどうにもならないけど、点滴の必要があるのか
しなければ脱水になってもっと苦しむ
でも点滴しても苦しいことは変わらない
何をすればいいんだ
いつまで続くんだ

猫もいつまで苦しまないといけないのかって思っていたのかもしれない
ただ苦しいだけだったのかもしれない
わからない


葬儀当日

午後2時からの葬儀
私1人で猫を見送る
どうかスムーズに、旅立ちを汚さないように終えることができますようにとずっと考えていたため吐きそうだった。
葬儀で緊張することなんてあるのか…

祭壇に案内され
猫用の棺が準備された
持ってきた食べ物を紙皿に移し替えたり10分ほど葬儀のための準備の時間があり、お別れの言葉などかけてあげてくださいといわれた。
何を言おうか思いつかなかった、ただ寝ているみたいだったので「本当によく寝てるね。相変わらず綺麗な顔だね」と口にしていた。
時間が余ったので座って待っていた。
棺には食べ物と花束のほかメッセージカード(手紙)を入れることができた。祭壇の近くにメッセージカードの一式が設置されていたので書くことにした。
書いた内容はこんな感じだった。
17年間お疲れさま。これからは好きなものを好きなだけ食べてもいいよ。いっぱい走っても怒られないし、スーパーボールを追っかけて遊んだらいいよ。それから知り合いの人たちのお友達も待ってるから人見知りしないようにちゃんとあいさつするように。それとコロ(犬の名前)とももこ(猫の名前)は先輩だからいろいろ教えてもらいなさい。シャーと言わないように。
元気で

よし!これで書けたと思ったけど重要なこと書き忘れていた。
葬儀社のスタッフの方も来てしまった
急いで書きなぐった。字が汚いけど、まあ読めるでしょう

ありがとう感謝してる、と何とか読めるように書き加えた。
一番言わないといけなかったことをギリギリまで忘れていた。

その後、棺に猫と食べものと花束と手紙を読み忘れないようにタオルと頭の間に挟んで棺をとじ、出棺へ

火葬の前
最後に言葉をかけてくださいと言われた。
意識して泣かないようにしていたんだろうか?どうだったかな?

場の空気にのまれたのか今でもわからないけど本当にいなくなってしまうと思った瞬間、どうにも涙が止まらなかった。
ああもう消える
この柔らかい毛をさわることもできない
喧嘩することもできない
シャンプーもできない
抱っこすることもできない
首輪買う楽しみもなくなった
文句言うことも言われることもできない
エサくれ攻撃もされない
呼んでも返事をしてくれない
ボールを投げても追っかけてこない
薬を飲ませることもない
他の猫とちょっとは仲良くしなさいと口うるさくいうこともなくなる

出棺の見送るとき
私は泣きながら何を思ったのかガッツポーズをして頑張れと言って見送った。
猫が来た時も1匹だったけど、旅立つときも1匹なので頑張れ口からでたのだろうと思っている。

小さい頃、呼んでも返事はしないし
走っても何かにぶつかったりしない限りどこにいるのか居場所のわからない猫だったので、わかるようにするために鈴のついた首輪をするようになった。これまでいた猫も、まだいる猫たちも首輪は無理で、唯一最後まで首輪を全く嫌がらずにさせてくれた猫だった。それがうれしくていろんな首輪を買った。鈴つきの首輪
今はもう鈴の音はならない

火葬が終わり収骨する段階になり猫の骨を初めて見た。
猫のしっぽの骨は細かく節が連なっていた。だからあんなに動かせるんだなと納得した。立派な犬歯もあった、よく噛まれた。
噛み癖の治らない猫だったので名前をガブリエルにしたらよかったかもねと家族とよく話していたので戒名つけるならガブリエルは外せない。

粉骨をするため骨を機械に収骨した。
箸でもピンセットでも、小さいので手でもかまわないですといわれたので途中からほとんど手で骨を収めていた。骨はもろくて壊さないようにそっとつかんで収めた。
無事収めて、10秒もしないで骨は粉になった。
2.3寸の骨壺に猫の骨を納められていく。
亡くなる前日の体重は2.68kgあった。元気だったとき最大で7kgのときもあった、平均5kgくらいでロシアンブルーにしては小ぶりのオス猫だった。
顔もロシアンブルーのあの整った顔なのでよく女の子ですかと間違えられていた。
まあ、何というかかわいいイケメンだった。
若い頃は王子様、年取ってイケメンおじい様になって、旅立ってガブリエル

2.3寸の骨壺はブルーのカバーに包まれ、享年17歳と名前と命日が書かれたラベルが貼られた。
7月4日に生まれて9月4日ころに家に来た(たしか)
振り向いた姿が可愛いくて絶対美人になると思った。
母曰く、生後2カ月ほとの猫を見て干からびたトカゲじゃないかと言っていた。わからなくもないが、何と言われようと可愛かった。


名前はユキ

グレーなのに雪?とだいたい聞かれた
違う。諭吉にしたかったけど病院で記入するとき画数が多いことと諭吉と呼ばれたりするのがちょっと…私には勇気がなかったので普通の名前になった。
ユキは3月9日に亡くなった。
ユキはイケメンだ。誕生日を忘れないように毎年カレンダーのめくらなくていい端っこに猫たちの誕生日を記入している。
何より忘れっぽい自分のためにメモしていたけど、ユキは忘れにくい3月9日のサンキューで覚えやすい日に旅立った。もっといい家にもらわれていればよかったのにと猫たちを見る度に思うのだが、そんな飼い主の気持ちはどこ吹く風でとことんイケメンの風格を残したまま旅立った。
サンキューってなんだよ、こっちの方がありがとうだよ


よくわからない感情

ユキが亡くなってから、ずっとうまく言葉に出せない感覚が残っている。
ペットが亡くなって、剥製にする人がまれにいる。ユキが亡くなったときは剥製とかちょっと無理と拒否していた。あのふわっとした毛と柔らかく暖かい猫の皮膚や体温を感じるからいいのであって剥製は毛はふわふわしていたとしても硬い体と体温を感じないのがどうにも感触がよくない、と
しかし、亡くなった翌日もペットシーツを取り換えたり体を拭いたりしていたので何度も体を触るうちに剥製にしてでも残したい人の気持ちがちょっとわかる気がした。昨日まで思っていなかったのに不思議な感じがした。
冷たい体とか、呼びかけても起きないとか、硬直した四肢とか体の状態とかどうでもよくてそのままいてほしい。このまま消えないでほしいという気持ち、たったそれだけだった。

そろそろ落ち着いてきて気持ちを少し整理できるようになったのでnoteに記すことにした。
誰かに読んでほしいとかではなく、自分の気持ちを少しでも整理したいので文字にするのがいいと思った。まだほかの猫たちもいる。数年後に見送ることになるだろうからそのためにも振り返りたいと思った。
今でも硬くなったユキの感覚がしっかり残っていて、まだいる猫たちも見送ることになるだろうから、またこの感覚を体験しなければいけないのかと思うと何かうまく言葉に表せない感情が出てくる。
不安なのか、悲しいとは違う、寂しいも違う
とにかく不安寄りの何かもやっとした気持ち、語彙力があれば適切な表現があるかもしれないが、今はそれが近い表現。

生前は猫だからだいたいこれくらいで亡くなるよねと家族と話していた。まだ生きていたから特に何かもやっとする感覚はなかったけど、実際看取るとずっと整理できない言葉にできない感情が横たわる。時間が経てば少し軽くなるかもしれないけど無くなることはないと思う。それだけ存在があたりまえになっていた。何より17年は長い。生きた時間長かった分、覚悟はしていたがしっかり穴が開いてしまった。
やっぱり寂しい、会いたいなと思ってしまう。
でも、ユキがようやく苦しみから解放されたんだと思うと安心している。もう病気のことは気にしなくていい、好きなだけ遊んで食べて、腹出して寝てくれたらいい。
また猫について何か書きたくなると思うので、今回はここまでにする。


おくる言葉

ユキいてくれありがとう。ユキが存在していたことに感謝
それからお供えの食べ物は遺品箱に入れることにしたので無事です。
猫からの襲撃は今のところ1回でとどめているので安心してください。