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ビジョン経営と理念経営について

今回は経営のスタイルについての考えていきます。

経営のスタイルとしての、ビジョン経営と理念経営について記載をしていきたいと思います。

非常に簡単に表現をすると、ビジョン経営と理念経営は以下の通りといえます。

「ビジョン経営」は、ざっくり言えば将来の具体的な姿をビジョンとして示し推進していく経営のことをいいます。

「理念経営」とは、ざっくり言えば会社の存在目的を強く意識しその実現のために事業を推進していくスタイルの経営をいいます。

当たり前かもしれませんが、このビジョン経営と理念経営についてはいずれか1つではなく両立をすることがとても大切です。

どの会社も、どちらか100%!!ということではなく、ビジョン経営型であったり、理念経営型だったり、どちらかの要素が大きいというグラデーションのようなものだと思います。

以前の記事で記載させていただいたように、人間の関心には縦の軸と横の軸があります。
これは定義次第ではありますが、縦の軸は関心の幅、自分事化力と言うように定義をさせていただきました。そして横軸は時間軸であり、この部分にビジョン具体化が影響します。

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これを会社経営に置き換えた場合には、

・横の軸(時間軸)のビジョン具体化力を中心に、ビジョンの構成要素として縦軸(貢献・関心範囲)を捉えたものがビジョン経営

・縦の軸(貢献・関心範囲)への志を中心に、横の軸(時間軸)への希望を示したものが理念経営

というイメージです。

以下それぞれ簡単に見ていきたいと思います。


ビジョン経営について

今回の記事ではビジョン経営について簡単に触れたいと思います。

先ほども触れましたが、ビジョン経営とは将来のビジョン、つまり具体的な将来像を描きそこに向かって進んでいく経営スタイルです。

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ビジョン経営を行うために必要な要素は以下の3つであると考えます。

①会社の提供価値(商品・サービス)の具体的な仮説

②将来の外部環境に関する情報収集と洞察

③将来の内部環境に関する意思

この①、②、③を相互に比較検討しながら、具体的な将来像を描き、そしてそれを示し組織を引っ張っていくというスタイルです。

例えば以下に示すようなビジョンマトリクスと言うものに、具体的な将来像を示し進めていくやり方が有効です。

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関連記事は以下にあります。ご参考くださいませ。

具体的なビジョンを実現するためには、会社がどのような姿で、どのような商品サービスによってお客様に選ばれているかだけではなく、それを実現するために人・モノ・金がどのような姿であるべきかということも併せて考えていく必要があるのです。

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そこまで具体化されて初めて、真の意味でのビジョン経営と言えるでしょう。

もちろん具体的な将来像を描いたからといって、100%それが実現するわけではありません。

ただ、将来像が具体的であるという事は仮説の立て方も具体的であるということです。具体的な仮説を立てる事は、外部環境や、内部環境に対しての分析をより精緻なものにします

将来像と仮説を具体的に落とし込んでいるため時間の経過とともに精緻な軌道修正ができるということです。

精緻な分析とPDCAをしながら組織を前に進めていき、時間の経過とともに、そしてアクションの実行とともに出てくる現実を踏まえながら軌道修正をしていくスタイル、これがビジョン経営の効果です。

また別の記事で、ビジョン経営については深めていきたいと思います。


理念経営について

理念経営とは、経営理念、ミッション、つまり組織の存在目的を強く持ちその理念で組織を引っ張っていく経営スタイルです。

理念経営には、強い思い・志があります。そして理念経営には社員を含めた強い団結力と方向性があります。

志がとても高い組織であり、自分の会社の利益のためだけの経営ではなく世の中人のための経営を行う志があるため、思いが熱く一体感がある経営ができます。

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松下幸之助さんも、あらゆる書籍などで経営理念の大切さを訴えています。企業の存在目的、何のために事業を行っているのかと言う存在目的を示し、その価値観を共有した中で経営を推進していくと言う事は、特に苦境に陥った状況で組織を一体感を持ってまとめていく上では非常に重要になっていきます。

自分のためや、自分の会社のためだけではなくそれを超えた貢献をエネルギーとした組織は力が湧くのです。これは私たち個人においても同じことだと思います。今の時代、そこそこ給料をもらっていれば野垂れ死ぬことはないのでそれ以上のことを望むかどうかは個人の価値観にかかっています。ただ、少なくとも自分以外に貢献が必要な人達や状況がある、それに対して貢献をしたいと思うことは、自分の小さな枠を超えたエネルギーをくれるのだと思います。そして、理念経営は、一人ひとりの人生の価値観を他者への貢献に広げてエネルギーをくれる、それが理念経営の根源的な強さなのではないかと思います。

また別の記事でも記載したいと思いますが、志がある組織は、そこに構成する人たちが相互にコミニケーションをとることによってお互いの志を高めていくことができます。


どちらか1つだけだとどうなるのか

それでは、ビジョン経営や理念経営がどちらか1つだけになってしまう場合にどのような事態に陥るのかということについて考えていきたいと思います。これは私の実体験をもとに記載をしていますが、もちろん会社の経営には様々なスタイルがあるため一概には言えないと思います。
そのような前提のもとに私からお伝えできることを伝えていきたいと思います。

ビジョン経営だけの場合

もともと私のコンサルティングスタイルは、理念といったものがあまり考慮されないビジョン中心のものでした。
おそらく一般的なコンサルティング会社が経営コンサルティングをする場合には、理念の部分についてはあまり立ち入らないケースが多いのではないでしょうか。

そうすると必然的に、具体性や精緻な仮説をベースにしたビジョン経営が中心になるケースが多いと考えられます。

この場合に見られる傾向としては、経営者も含めて、マネジメントチーム、社員さん達が息切れをすると言うことです。具体性を持ってアクションプランを推進していくのですが、根源が何なのかというのがわからなくなりエネルギーが湧いて来なくなると言うことです。

それを補うために、人事評価制度等で成果報酬的な要素などをベースにしながら仕組みで補っていくケースがあります。
ただ仕組みを運営するのは人間であるため、100%皆さんが納得する仕組みを導入することが難しくなります。そうしたときに必然的に生まれる不公平感も、先ほどの息切れとともに組織のエネルギーを蝕んでいくケースが多いです。

要は、WHYの部分が足りないのです。
なぜそのような将来像を目指す必要があるのか、その部分を正面から答えられないために、ただ売り上げや利益を増大させるために組織を発展させるようにしか見えないということです。

このWHYのコミニケーションは非常に重要です。これを埋める要素が理念経営にはあるのです。


理念経営だけの場合にはどうなるのか

理念経営だけの場合には、なぜそれをやる必要があるのかという気持ちについての一体感は持てるのですが、エネルギーだけあって具体的に何をすれば良いのかがわからずに一生懸命現状の業務を行うということが行われるケースが多いです。

もちろん稲盛和夫さんも、今の仕事に精進することが唯一の成功の秘訣であると教えられております。今の仕事をド真剣にやらなければ経営の成功が覚束ない事は間違いありません。

一方で、具体的な方向性を示してあげなければ、従業員さんはどのように動いたらいいのかわかりません。

それをリーダーが背中で見せながら引っ張っていくというやり方もあるでしょう。ただそのように強い思いと、思考の具体性が両方揃った経営者は多くありません。

この理念経営で進んでいく場合には、WHYの部分は充分なのですが、具体性に乏しい、そして何をベースにしてPDCAを進めて良いのかがわからないという状況に陥ります。

PDCAとは、P:プランがあって初めて成り立つものです。プランすなわち仮説がないものについてはD:実行も、C:チェックもA:アクションもやりようがないということです。


両立と適したバランスの見極めが大切

このように考えていくと、ビジョン経営と理念経営の両立が大切であるということですね。つまり、ミッション・ビジョンがともに大切であるということがわかります。

大切なことは、今の自社がどちらに偏っているか、ということを把握することです。会社によっては、ビジョン寄りの方がうまくいくケースや、理念寄りの方がうまくいくケースがあります。

経営の現状や、いままでの組織の歴史をひも解いて、ビジョン経営と理念経営のどのようなバランスが自社にとって良いのかという見極めをしていくことで経営のレベルが一段上がっていくのではないでしょうか。


まとめ

・結局はビジョン経営・理念経営の両立(ミッション・ビジョンの両立)が大切。

・ビジョン経営は、将来像と仮説に具体性を与え、経営の推進を具体化しやすいがエネルギーが枯渇しやすい

・理念経営は、貢献をエネルギーとして一体感を持ちやすいが、具体化がしづらい

・自社がビジョン経営、理念経営、どちらに偏っているかの自覚が必要


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