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【ものづくり現場で管理会計9:殺風景な工場ほど儲かっている。】

*本マガジンの前回までの投稿は上のリンクに入れています。

 現場改善の手法や考え方を学び実践をした紫耀(ショウ)。早いもので入社5年目になりました。課のコストや売り上げ、収益管理にも関わるようになり、会計に興味を持ちます。そして、先輩の健に再度、会計について教えを請います。ここまでで、B/S、PLを学び、次にキャッシュフロー経営、利益構造と損益分岐点について学びました。今回は会計的にみた原価低減について学びます。(トヨタ生産方式/TOC編と重なる内容がでてきますので、併せて下記マガジンを隙間時間に読んでもらえればと思います。)なお、この投稿は会計の基本がストーリーで学べる本~餃子屋と高級レストランどちらが儲かるのか~の第八章に沿って進めます。(本のリンクは最後に貼っています。)

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🧒;おはようございます。

👱🏼‍;おはよう。今日は原価低減について解説していくよ。

🧒;原価低減ってトヨタ生産方式の時にもやりましたよね。

👱🏼‍;そうそう、正直内容が重なるところもあるんだ。でも複数の本で話されている項目だから、この本では何を言っているか知ってほしいし、復習の意味を兼ねて学んでいこうと思っている。また、会計的な目線ということもあって新たな学びもあると思うよ。

🧒;そうですね。よろしくお願いします。

◆原価低減

👱🏼‍;今回は神田のそば屋で安曇先生の講義は行われるんだ。これまでの話の中で、由紀さんは会計を学び不要な固定資産を売却し、かつブランドを絞りこむことで、なるべく在庫を溜めないように工夫してきた。結果、資金繰りが目に見えて楽になり、販売数量も伸びてきたんだ。

🧒;いいじゃないですか。

👱🏼‍;ところが売り上げ値引きも多くなったため純売上金額はあまり増えず、利益も前月と比べて微増にとどまった。販売数量を増やすために営業部長が販売価格の引き下げを検討したが、それでは損益分岐点から逆に遠ざかってしまうことがわかり、結局原価を下げるしかないという話になったんだ。

🧒;価格弾力性があまりなく、値段を下げても数量は期待できず、結果、限界利益を損益分岐点まで増やせないのですね。

👱🏼‍;詳しいことは書いてないからわからないが、そう考えるのが妥当だろう。

🧒;いずれにしろ、この場合、原価削減がキーとなっているということですね。

👱🏼‍;そうだ。そんな思いの中、由紀さんはそば屋さんに入っていく。ちなみにそのそば屋さんは安曇先生の弟子が経営しているそば屋で、一切のムダのない厨房、道具、そして材料の仕入れとなっているんだ。そんな環境で、安曇先生と由紀さんは原価削減について議論始めていく。

🧒;なんか、今回前振り長いですね。

◆3つの原価要素

👱🏼‍:すまん。。先に行こう。安曇先生は原価を下げるには、下記の要素を知らなければならないと教えてくれる。

① 工場の維持費(固定費)
② 材料費(変動費)
③ 製造スピード

🧒;でました。製造スピード、やはりリードタイムですね。

◆維持費の削減

👱🏼‍;まあ、落ち着いてくれ、まず、工場維持費の減らし方について安曇先生は教えてくれている。まず、予算管理で発生費用を抑える方法は、電気料、消耗品、残業手当などのムダを無くしていくことと言っている。が、

🧒;“が”、、なんですか?

👱🏼‍;安曇先生はこれ自体大きな影響を及ぼさないし、強引にカットしようとすると問題が起きる。解決にならないと言っている。

🧒;まさにそれっすよ。人員削減が目的になって強引にやって、うまくいくことは絶対にないですね。改善した結果、余剰がでたら、計画的に配置転換、もしくは引退した人がいても補充しないとか自然な流れでやっていかないと。だめぜったい。よくあるんすよ。本社からチームが来て人員削減だーって。背景もわからないで進めて、一時的に減らして後で問題だらけってあやるですよ。きちんと流れを作って長期的に考えないと。

👱🏼‍;そうだな。つまり、適切な活動が必要だ。安曇先生は、工場の活動を可視化することを示唆してくれる。ところで、工場は一体何をするところだと思う?

🧒;突然ですね。工場は注文を受けた製品を納期までに製造する場所ですよね。

👱🏼‍;おっと、まさに由紀さんと同じ答えだね。安曇先生は、「その考えを無くさない限り製品原価は下がらない。」という。

🧒;あらま。。すみません。

👱🏼‍;謝ることではないよ(笑)安曇先生は、工場はモノとして製品を作る場所ではなく、製品という価値を作りこむ場所だという。しかしながら、作業者や機械設備はいつも価値ある活動をしているわけではないと。材料が集まらない、機械が壊れたといった理由で従業員が手待ちになってしまう。さらに手直しの時間も発生する。これらはムダである。止まっている時間はすべてムダで、価値を生まない作業はすべてムダだという。

🧒:手直し、わかります。それも手直しして良品にすることが大事な仕事と思ってしまうのですよね。。。でも、止まっているムダというのは、ザゴールの言う、ボトルネックが止まっていたらと考えないといけないですね。

👱🏼‍:そうだね。非ボトルネックは、ボトルネック前に在庫が溜まってしまっていたら止めることが重要である場合があるね。それも踏まえての話として聞いてくれ。いずれにしろ、ボトルネックで止まっている場合は、非ボトルネックのリソースをボトルネックに供給する必要があるよね。だからその意味で、非ボトルネックメンバーも止まっていてはならない。

🧒;はい。いずれにしろ、作業員が価値を発揮していない時間を減らしてく。それが維持費の削減だと言っているのですね。納得です。安曇先生はそこをどうすると言っているのでしょうか?

◆可視化の重要性

👱🏼‍;安曇先生は、工場のムダを会計数値に置き換えて見えるようにするという。新しい会計手法を使うというんだ。

🧒;見える化、常套手段ですね。しかし新しい会計手法?

👱🏼‍;代表的な手法には、活動基準原価計算というものがある。進め方は下記だ。

 -可視化のルールを作る。最初に管理したい活動を決める。例えば、生記事を裁断する、服を縫う、服を検査する、手直しする、ミーティングするなど。

-その活動が価値あるものかないものか定義する。

-価値ある活動は青色、価値がないものは、赤色で表示(縫う作業は価値あり、手直しはなし。

-それぞれの活動に対して使った実績時間を集計

-実績時間に単価をかけて原価に置き換える

という流れだ。これで無形活動が金額に置き換わる、しかもその活動の価値の有無は色で判断ができるもしグラフで表現すれば、会社がどれだけムダなお金を使ったかが、一目でわかるようになると安曇先生はいう。

🧒;IE(インダストリアル エンジニアリング)ですね。仕事を分解、価値あるものないものにわけてそこに時間単価を掛け算していく。

👱🏼‍;そうだ。ちょっとそれるがここで話しておきたいことがある。(過去マガジンの)ザ・ゴールの中では一つ弱点があるんだ。ザゴールでは注文がある前提で話があって、注文がない状況で何をしていくかということは、特に明記されていないんだ。コスト競争等の話はなかったからね。(ザゴール2には書いてあるが・・別の機会に。。)実際に販売量を増やすために、値段を下げたく、下げてしまうと赤字になる。(限界利益が損益分岐点に届かない)この場合、原価を下げるしかない。そんな時、この見える化は活動を後押ししてくれると思っている。

🧒;なるほどです。原価低減の立ち位置がわかってきました。

◆材料費を減らす

👱🏼‍;次に材料費について考えるよ。材料費削減というと、なにを思い浮かべる?

🧒;材料の歩留まりと、価格交渉による材料費の値下げですかね。

👱🏼‍;それもあるね。でも、実はもっと大きなものがあるはずなんだ。それは、使いかけの材料在庫だ。由紀さんの工場では、倉庫も製造現場も記事や付属品が散乱しているといっていて、それは不良品だという。そして、だれも指示していないのに材料在庫が増えてしまっていて、それはたくさん買えば安くなるからであったり、不良を見込んで買ってしまうことが原因だというだ。これは材料費増えるよね。

🧒:どき、、、わかります。不良を見込むというは特に。。安全側に安全側にって思うんですよね。そうすると、現場が安全みて、私が安全みて、そして資材が安全見て、、結局本当に必要な量に対して多く買ってしまうということがあります。

👱🏼‍;そうだね。材料は必要なだけかう。ここがポイントだね。あと不良を減らすとか常に重要な活動だ。次に製造スピードに関して話していこう。

◆製造スピードを速くする

🧒;でました。リードタイム、結局トドのつまりここになってくるんですね。

👱🏼‍;そうだね。今回は会計的な面からみていこう。この話をするときに、安曇先生は、「工場の維持費は固定費だから1枚作っても1万枚作ってもかかる費用は変わらない、多く造れば製品1枚当たりの維持費は少なくなる。」というんだ。

🧒;でも、前の投稿のように話の通り、生産枚数を増やせばコストが減るというわけではないですね。

👱🏼‍;そう。でも由紀さんは、下がると言ってしまい、安曇先生に否定されるんだ。

🧒;間違えますよね。

👱🏼‍:安曇先生は、続けて、「ここが重要なんだ。裁断工程の生産能力は、縫製工程の倍だとする。原価計算上それぞれの工程で可能な限り多く生産するほど製品原価は下がる。しかしこの計算けかった経営上間違っているんだ!」と。そして、各工程の生産量を増やしても製品原価は下がらないと明言している。

🧒;でも、原価計算という意味ではどうしたらいいでしょうか?

👱🏼‍;それが、リードタイムだ。ハンナの例だと、生地を裁断してから製品として完成するまでの通過時間、つまり製造リードタイムを基準に製品原価を計算するべきなんだ。なぜなら、製造リードタイムが短いほど製品原価は少なくなり、少ない資金で製造できるからだ。コハダと同じだ。

🧒;でも、わかっているようで、わかっていないので確認したいのですが。製造スピードを上げることでなぜ製品原価が下がるのでしょうか?

👱🏼‍;いい質問だ。安曇先生は、「大雪が降ってきたとする。しかし傘がない。その場合走って帰る。雨に濡れたくないならばそれが一番。原価計算に置き換えれば、工場の中には維持費という雨が降っているとかんがえればいいい。」という。

🧒;理屈は何となくわかるのですが。。。

👱🏼‍;そうだね。ハンナの例で説明すると。裁断工程で、たくさん作れてもそれが縫製工程の手前で滞留すれば原価がどんどん追加されるような原価計算方式にするべき。そして、製品検査で異常が見つかり完成処理が遅れた場合も原価は高くしなければならない。それだけ工場の維持費を使っている理由だけでなく、経営者は製品原価の多寡をトリガーにして、工場の内部の起きている以上が察知できるようになる。

🧒;滞留時間に対して、維持費を割り当てるということか。。。

👱🏼‍;だから工場維持費は製造スピードを基準にして、製品原価に負担させる必要があるんだ。ただ、各現場には様々な種類の製品があるからこれを管理していくのは覚悟が必要だけどね。

🧒;はい。。しかし、考え方は、ザゴールやトヨタ生産方式と同じですね。結局固定費なので、配布していくことにはなりますが、中間在庫を少なくしリードタイムを短くすることで、ムダの削減、そして異常の見える化を会計的に実施する。結果、固定費の総量を削減していくということですね。それであればストーリーがあって現場でも進めやすいと思います。

👱🏼‍;そうだよね。ここまでわかればよいと思う。トヨタ生産方式やTOCの現場改善技術をいかに会計で見える化していくかということがわかったと思う。あとは、自分の工程の製品に対してこのような原価計算ができるかは、その部署しだいだな。よし。今回はここまでで終わりだ。次回は、本の11章を使って。粉飾の見破り方の例を解説するよ。(9章、10章を読みたい方はぜひ書籍購入をお願いします。)

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 今回は、原価低減をテーマに解説をしました。やはり、現場管理をしていると生産性や歩留まり、という数字を気にしてしまうかと思います。しかしながら、会計の本質を理解しそれら現場数字を経営数字と紐づけることができると、かなり原価低減と現場改善が進んでいくと思います。また、個人的には原価低減は短期的に実施すると大きなしっぺ返しを食らうことが多いです。地道に一歩ずつ見える化しながら進めていくことが重要だと思っています。さて、次回は粉飾(実際は逆粉飾)について解説します。その後に、まとめを行ってこのマガジンを終了したいと思います。ぜひフォロー、スキお願いします!!

今回は下記の本に沿って、解釈を入れながら投稿しています。

また、下記にこれまで作成した別マガジンを記載します。ぜひ覗いてみてください。

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