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パン職人の修造 1〜55話 江川と修造シリーズ

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パン職人の修造 江川と修造シリーズです。 口数は少ないがパンにかける情熱は人一倍の田所修造と、明るくてみんなに好かれるが実は人一倍頑固者の江川卓也がパン作りに挑戦していきます。各… もっと読む
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パン職人の修造 江川と修造 初めに

パン職人の修造 江川と修造 初めに

パン職人の修造は、口数の少ない主人公の田所修造(たどころしゅうぞう)がパンにまつわる色々な出来事に出会うお話です。元は2021年3月に「パン屋のグロワール」のホームページのブログで始まりました。

九州から関東に出てきてパンロンドというパン屋に就職した田所修造は、妻の律子(りつこ)と緑(みどり)を日本に残してドイツにパンの修業に行き、26歳で日本に戻って2人と再会。またパンロンドの店主柚木(通称親

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パン職人の修造42 江川と修造シリーズ ジャストクリスマス

パン職人の修造42 江川と修造シリーズ ジャストクリスマス

「風花」

「なんですか修造さん」

普段話しかけてくることのない修造が店にパンを盛ったカゴを持ってきて来て声をかけてきたので風花は驚いた。

緊張して背中がピリッとする。

「あいつ、フワフワしてるいい加減な奴に見えて頑張るときは頑張るんだよ、こないだも犯人の自転車を1日探して突き止めた。あれって風花を思っての事だよ」

「わかってるんですけど、、、」

風花はパン棚の方を向いて持っていた
トレ

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パン職人の修造41 江川と修造シリーズ ジャストクリスマス

パン職人の修造41 江川と修造シリーズ ジャストクリスマス

クリスマス前は心がウキウキする。。

職場と学校から別々に家に帰って来た修造と緑は、一緒に手作りのアドベントカレンダーの袋を紐から外して中身を見た。

「今日はチョコレートクッキー!」

緑は中に入っていたキャンディ包みになったカフェーシュタンゲを2つ出した。ほろりとした食感の搾りだしクッキーでヌガーをサンドして両端にクーベルチュールチョコが付けてある。

修造の作ったアドベントカレンダーは小さな

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パン職人の修造33 江川と修造シリーズ六本の紐  braided practice 江川

パン職人の修造33 江川と修造シリーズ六本の紐  braided practice 江川

そのうちに大木シェフが奥の事務所らしい所から現れ、皆素早く元の持ち場に戻って行った。

「2人ともよく来たな」

「さあ、じゃあ早速練習場と言うかパンの学び小屋と言うか、別室があるから行こうか」大木はその別室を指さした。

「更衣室を案内するから着替えたら来てくれよ」

「はい」

その別室は工場の奥の廊下から繋がっていてガラス戸や窓からから中の様子が見える。

白い壁の小さな建物の下半分がアルミ

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パン職人の修造32 江川と修造シリーズ六本の紐  braided practice 江川

パン職人の修造32 江川と修造シリーズ六本の紐  braided practice 江川

よう!

俺は関東にあるパン屋のパンロンドのオーナー柚木阿具利(ゆずきあぐり)だ。俺は25の時に夫婦でパンロンドを開店した、その5年後、全国の高校に求人募集を出して色んな場所から来た学生を面接したんだ。

その中の一人に九州出身の田所修造(たどころしゅうぞう)がいた。

あいつは一言でいうと「熱い男」だ。

口数は少ないがいつも真剣にパンと向き合ってる。
修造は19の時、結婚して子供が生まれた後ド

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パン職人の修造31 江川と修造シリーズ フォーチュンクッキーラブ 杉本Heart thief

パン職人の修造31 江川と修造シリーズ フォーチュンクッキーラブ 杉本Heart thief

「待てーーっ!」

商店街を駅と反対の方向に走っていく男を追いかけて行くと、30m程離れた所に停めてあった自転車に急いで乗って逃げ出した。

「準備してたのか?」

自転車はグレーともグリーンとも言えないくすんだ色合いで、荷台は黒い。

荷台はサドルの後ろに取り付けられた薄い板の様な形で、1番後ろに赤いライトが付いている。

杉本はその荷台の赤い丸を目掛けて商店街の中を倍の速さで走り出した。

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パン職人の修造26 江川と修造シリーズ 背の高い挑戦者 江川Flapping to the future

パン職人の修造26 江川と修造シリーズ 背の高い挑戦者 江川Flapping to the future

「さあ!次は?」マウンテンはカンペを見た。

「ふんふん!はい!パン職人さんの日常!次はお二人で生地を分割して並べて頂きましょう!」

杉本がカッコつけてスケッパーで生地を分割している。

「普段と違いすぎるだろ」と言いながら藤岡が丸めて箱の中に並べていく。

「なるほど~こうやって生地が丸まっていくんですね、もっと早く出来るんですか?」
「はいできますよ」

「凄い!お願いします」

杉本は出来

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パン職人の修造24 江川と修造シリーズ 背の高い挑戦者 江川Flapping to the future

パン職人の修造24 江川と修造シリーズ 背の高い挑戦者 江川Flapping to the future

会場の1番奥ではコンテストが行われている最中だった。

パン職人選抜選考会と看板に大きく書いてあり、かなり大きなコンテストの様だ。

「あれは?」

「今は25歳以上のシェフが世界大会に出る為の選考会が行われているんだよ。その横では若手コンテストと言って21歳以下の若い職人が競い合ってるんだ」

見ると、4メートル毎に四つに仕切られたブースの中にはパン作りに必要なミキサー、オーブン、ドウコン、パイ

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パン職人の修造21 江川と修造シリーズ 催事だよ!全員集合! 江川Small progress

パン職人の修造21 江川と修造シリーズ 催事だよ!全員集合! 江川Small progress

「あの〜、おじさんはここのオーナーの人ですか?」

「あー隣の子だね?そうだよ」

「このあんぱん、すごく美味しかったです。どんな所に拘ってるんですか?」

「これはね十勝産の小豆から作ってる極上餡(あん)なんだよ。うちのあんパンはね、豆本来の甘味を存分に堪能できる餡が包んであるんだ。豆の選別は重要だし、渋きりで渋をよく取ったり、味がさっぱりとしてキレがいい様にザラメを使ったり。生地は国産小麦に米

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パン職人の修造20 江川と修造シリーズ 催事だよ!全員集合! 江川Small progress

パン職人の修造20 江川と修造シリーズ 催事だよ!全員集合! 江川Small progress

2台の車は開始時間に遅れて催事場に着いた。

蒲浦が慌てて来て修造に「いや〜無事で良かったですね!準備お願いします」と言った。

「蒲浦さん、すみません遅れて」

荷物を運びながら他の店を見ると結構沢山の人が並んでパンを買っている。

「出遅れたな。とりあえず持ってきた生地をなんとかしないと。失敗するとカレーが破裂するからな」

公園には合計30軒ほどのパン屋がいて、各ブースに設置されたテーブルに

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パン職人の修造19 江川と修造シリーズ 催事だよ!全員集合! 江川Small progress

パン職人の修造19 江川と修造シリーズ 催事だよ!全員集合! 江川Small progress

「藤岡恭介(ふじおかきょうすけ)です。よろしくお願いします。僕レストランで働いていました」

藤岡はシュッとしたイケメンで、手先が器用ですぐに仕込みの手順を覚えた。なんならもう杉本より早い。

親方はうちには個性的な面々が多いが藤岡って色々とスマートな奴だな〜と思っていた。

修造は藤岡に色々教えながら

「藤岡君って仕事覚えるの早いよね」と言った。

「ありがとうございます」藤岡はキリッとした表

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パン職人の修造18 江川と修造シリーズ催事だよ!全員集合!江川Small progress

パン職人の修造18 江川と修造シリーズ催事だよ!全員集合!江川Small progress

NNテレビのパン王座決定戦で優勝したパンロンドは新商品の牛すじカレーパン「カレーパンロンド」が爆売れして連日大忙しの日々を送っていた。

店の奥の工場では田所修造がカレーをどんどん仕込み続けていた。

「杉本、玉ねぎ追加ね」

「はい」

杉本龍樹(たつき)は慣れない手つきで玉ねぎをカットしてフードプロセッサーに入れ続けていた。涙が滲み出る。

玉ねぎの後は分割丸め、その後はカレーを包む。

液を

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パン職人の修造16 江川と修造シリーズ 進め!パン王座決定戦!

パン職人の修造16 江川と修造シリーズ 進め!パン王座決定戦!

「修造さん!大変です!あの機械がありません!」

「えっ!ちゃんと用意できるように紙を渡したろ?」

「確かに用意して車に積んだのを覚えています!」

2人は自分達のテーブルの周りをよく探した。

「無い」江川が半泣きになってきた。

「どうしましょう修造さん」

その時安藤が叫んだ。

「お次はもう3品目ですね!何が出てくるのか楽しみです!それでは作って頂きましょう!」

画面に修造と佐久間が交

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パン職人の修造15  江川と修造シリーズ 進め!パン王座決定戦!

パン職人の修造15  江川と修造シリーズ 進め!パン王座決定戦!

観客席ではどんどん人が増えてやがて満員になった。

ざわざわする中、審査員5人が着席して、司会の安藤良昌も出てきた。緊張が込み上げてくる。

安藤がカメラに向かって話し始めた。

「さあ!始まりました!パン王座決定戦。いよいよ決勝戦になりました。ここで審査員席の皆さんの紹介をしたいと思います。まず1番右が赤いドレスの印象的な女優の桐田美月(きりたみつき)さん、お隣が文化人の有田川ジョージさん、原料

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