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転勤や単身赴任は日本だけの慣習 〜 自分が人生を決めるのか?会社が人生を決めるのか? N153

 リモートワークで働く場所の自由や権利が認められようとしたところで出てきたのが転勤問題。どこで働いても良いのであれば転勤は必要ないのではないか? 

 そもそも転勤があるのは日本国だけである。メンバーシップ型の弊害なのだが、本社(多くは東京)を中心としつつ若い間に地方拠点を数年単位で経験しつつビジネスの全容を理解して最後に本社に戻ってきて管理職や役員になるというキャリアパスを取っている伝統的な日本企業は多い。  

 会社によっては地元の人と癒着を回避するために2年単位のローテーションにするか色々な仕組みやルールが会社によってあるが、正社員はこのルールに従わないといけない。嫌な人には地域社員とかエリア限定社員という名称でいわゆる出世街道には乗らないが同じ場所で働き続けることができる形で雇用している。この雇用形態こそ日本だけだろう。外国人にとっては不思議でならないだろう。  

 基本的に日本企業は終身雇用が前提で会社が社員のキャリア(人生と呼ぶ人もいる)を決める。もちろん希望を出すが、会社の都合もあるのでなかなか希望通りにはならない。10年15年異動願いを出してやっと叶ったという話をよく聞く。そして最後まで叶わなかったという話も。  

 では海外ではどうか?というとジョブ型雇用だとポスト単位で募集をかけ、会社が社内の人材を強制的に異動させる権限がないので転勤という概念がない。大阪であるポストが開いた場合に社内への公募や社外への採用をかけて九州に勤務する社員が応募して採用に至った場合、転勤的ではあるが、あくまで本人の意思であり会社が決めるわけではない。採用の是非も大阪の採用を出した部門の責任者が行う。人事部は事務的にジョブポスティングをするだけだ。  

 グローバル企業ではこれをまさにグローバルで行なっているので東京で働いていてシンガポールの拠点に移る、アメリカの拠点に移るというのはしばしばある話だ。逆にいうと日本人以外の人たちはこれを当たり前のように行なっている。  

 私の知り合いでも奥さんがミラノの学校に行くことになったから、会社のポストを探してミラノ事務所の異動を申し出た。しかしポストがなかったから競合の同じポストを見つけてそちらに転職したというのをごく普通に行なっていた。彼らは原則夫婦で死ぬまで部屋もベッドも同じだから単身赴任という概念はなく、どちらかの都合で引越しをする時は相手が仕事も変える。ごく稀にキャリア志向の強いもの同士が結婚する場合は、別々に暮らすことがあるが、どちらかというと例外的だ。  

 とそんな中で日本も転勤に寛容になる風土が生まれてきたのか?と思ったが、idekunさんの鋭い指摘で我に返った。日本の会社はよーく考えていて、何か前向きなことをやる時は色々な舞台裏があるのだろうなと少し悲しさを感じた金曜の夕方だった。 


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