イルカとクジラ 海に戻ることを選んだ哺乳類 受験生向け「動物の分類」講義つき!
皆さん、イルカやクジラは哺乳類だ、ということはご存じですね?
海に棲んでいる哺乳類。これは考えてみると、とても不思議なことなのです。
今日は、イルカやクジラを中心に「動物の進化」について勉強しましょう。
大人も子どもも、受験生も。
☆脊椎動物と無脊椎動物
まず動物は、大雑把に脊椎(セキツイ)動物と無脊椎動物の2つに分けることができます。セキツイとは、簡単に言えば背骨のことですね。
重要!
脊椎動物…背骨をもつ動物。
無脊椎動物…背骨をもたない動物。
☆無脊椎動物について(簡易版)
昔は中学理科では無脊椎動物についてはあまり深くやりませんでしたが、現在の高校入試では割と無脊椎動物についてもしっかり出題されます。
ですが、本記事でそれを詳しく説明しだすとイルカやクジラまでたどり着かなくなるので笑💦華麗にスルーさせてください🙇♀️
ここでは、以下は無脊椎動物である、ということだけ覚えておきましょう。
✅昆虫類などの節足動物
✅イカ・タコ・貝類などの軟体動物
✅その他…クラゲ、ウニ、ヒトデ、ゾウリムシなど
☆脊椎動物の分類の覚え方
まず、脊椎動物の5種類を、今から言う順番ですべて覚えてください。
順番がめっちゃ重要なので、この順は必ず守ってくださいね。では言います。
魚類 → 両生類 → 爬虫類 → 鳥類
→ 哺乳類
なぜこの順番が重要かというと、この順番で動物は進化していったからです。
上に示した通り、爬虫類から鳥類と哺乳類に分かれるように進化していきました。覚え方としては、爬虫類、鳥類、哺乳類、と横並びに覚えてしまって差し支えないのですが、この進化の過程は重要なので必ず押さえてください。
☆要注意の動物
分類を間違えやすい動物を挙げておきます。
✅イルカとクジラは海に棲んでいますが哺乳類です。
✅サメは魚類です。シャチはクジラの仲間なので、哺乳類です。
✅両生類は、カエル、サンショウウオ、イモリを覚えておいてください。
(余談ですが、1985年頃に流行したウーパールーパーはメキシコサンショウウオの仲間です。現役受験生はご存じないでしょうが…😝)
✅カメは爬虫類です!水陸両用のイメージから両生類としてしまう誤答がとても多いので気をつけましょう!
✅カメ以外に有名な爬虫類としては、ワニ、トカゲ、ヘビ、ヤモリを押さえておいてください。
✅イモリは漢字で井守、つまり井戸(水辺)にいるから両生類、と覚えておくとよいです。イモリとヤモリは間違えやすいです。ちなみにタモリは哺乳類です笑😝
✅ペンギンは飛べませんが鳥類です。だから卵を産みます。
☆進化の方向性(基本)
今から言うことはあまり学校で教えてくれないみたいなので、よく聴いてください。
動物の進化とは、「乾燥に耐えられるようになること」です。
最初は、水中でしか生きられない魚類でした。水中で酸素を取り入れるにはエラ呼吸が必要です。
やがて、進化により少しなら陸に出られるようになった者がいます。それが両生類です。でも基本的には、水辺でないと生きられません。
やがて、進化によりほぼ完全に乾燥に耐えられる者が現れます。爬虫類です。
☆爬虫類はなぜ乾燥に耐えられるのか?
爬虫類が乾燥に耐えられるようになった秘訣として、以下の2点が重要です。
✅爬虫類は、からだの表面(皮膚)がかたい鱗(うろこ)や甲羅(こうら)で覆われている。
これに対し、両生類の表面はぶよぶよしていて、常に湿ってないと生きられないのです。カエル、イモリ、サンショウウオを実物や動画で見て納得しておいてください。
✅爬虫類(と鳥類)の卵には殻がある
殻の中に水分を保つことで、乾燥した場所でも孵化(ふか。卵からかえること)ができるようになったわけです。
これに対し魚類や両生類の卵は、基本的に水中にあることが必要ですね。カエルの卵は見たことありますか?あまり気持ちの良いものでもないので画像は貼りませんが😝一度は自分の目で見て納得しておいてくださいね。
☆進化の方向性(補足)
以上見てきたとおり、同じ卵生でも、「魚類・両生類」のグループと、「爬虫類・鳥類」のグループとでは大きな差異があることに留意してください。
「爬虫類・鳥類」の卵には殻があるので乾燥に耐えることができる
このことをしっかり押さえておいてください。
ついでに言うと、この意味で最強なのが哺乳類です。
哺乳類は胎生です。体の中には十分な水分がありますから(人間の体重の6割は水分だそうです)、爬虫類や鳥類以上に乾燥に耐えることが可能になったわけですね。
ですから、脊椎動物は進化の順に覚えることが重要だったのです。
ついでに言っておくと、「魚類・両生類・爬虫類」までが変温動物で、「鳥類・哺乳類」だけが恒温(こうおん)動物です。
「恒」は音読みはコウですが、訓読みは「つね」と読みます。意味的には「常」と同じです。「一定の」とか「変わらない」という意味ですね。2つ同時に使って、恒常性とか恒常的のような言葉もあります。
太陽や星座の星を「恒星」と言います。恒星は動かないので、位置が「一定である」「変わらない」ので恒星というのです。
☆進化の方向性(植物への応用)
以上の話は、中1で学習した植物にも全く同じように当てはめることができます。
水中でないと生きられないのが、ワカメやコンブなどの藻類です。
やがて進化して陸地には出たものの湿った水辺でないと生きられないのがコケ植物。
ある程度なら乾燥に耐えられるようになったシダ植物。
ほぼ完全に乾燥に耐えられる裸子植物や被子植物、という順に進化していったわけです。
もう察しがつくと思いますが、乾燥に耐えられる秘訣は「種子」を作るようになったことです。種子は殻のようにかたいから乾燥に耐えられるのです。それに対し、胞子はぶよぶよしていて常に湿っていないとダメなのです。だからシダ植物はあまり乾燥したところでは生育できないわけですね。
いかがですか。
進化=乾燥に耐えること
このように理解しておけば、イチイチすべてを暗記しなくても考えればわかるようになりますね。こういうのが本当の勉強です。
☆なぜ最初の生物は水中でないと生きられないのか(高校レベル)
この部分は高校入試の範囲を超えますので、まあ軽い読み物程度でよいです。
地球は46億年前くらいにできたとされています。その46億年の歴史で、特に重要なできごとを起きた順に書いてみます。
1 海ができる
2 最初の生物が海中に誕生
3 地球の大気に酸素が増加(それまでの主成分は二酸化炭素でした)
4 オゾン層ができる
5 生物が進化して海中から陸地に進出
以上は、この順序でないと起こり得ないのです。今からそのことを説明します。
まずオゾン層というのは、太陽からの紫外線を防いでくれています。
紫外線は日焼けの原因(紫外線は英語でultraviolet rays、略してUV raysと言います。UVカットの化粧品は紫外線を防いでくれるというわけです)ですが、日焼け程度で済んでいるのはオゾン層があるおかげなのです。紫外線は生物にとって非常に有害です。
オゾン層がなければ、地球上の生物は紫外線をもろに浴びて死んでしまいます。
紫外線が届かないところは、地球上では深海だけです。
ですから、最初の生物の誕生には、その前に海が必須です。
そして、酸素は生物の光合成によって生産されます。
オゾンの化学式はO3です。(数字は右下に小さく。以下同じ)
酸素O2に紫外線が当たってできます。つまりオゾン層は酸素がないとできません。
そして、オゾン層ができて、地表に届く紫外線量が大幅に減少したことで、生物は初めて海中から陸地に進出できるようになったのです。
よって、以上の順番しか起こり得ないということになります。
…高校レベルですから、少々難しかったでしょうか。
とにかく、オゾン層は何十億年もかけて作られてきたわけです。
そんなオゾン層を私たち人類は、フロンガスによって数十年くらいの短期間で大いに減少させてしまいました。オゾンホールと呼ばれます。
悠久の時間をかけて作られたものを、ごく短い期間で破壊してしまう。
これが環境問題の本質です。オゾン層破壊以外にも当てはまります。環境問題は、あらゆる教科で出題可能性がある最重要テーマですから、早めにしっかり学習して知識を整理するとともに、自分なりの考えや対策も言えるくらいに準備しておいてください。日本語と英語、両方準備しておくと安心です。最近では、SDGsに関連づけての出題が増えています。
…少々話が膨らみ過ぎてしまったので、動物の話に戻りましょう。
☆海に戻った哺乳類
かつて陸上を歩いていたにもかかわらず、海に戻ることを選んだ哺乳類はイルカとクジラしかいません。
イルカやクジラはもちろん、哺乳類ですから赤ちゃんのときはおっぱいをのみます。
長らくクジラの授乳シーンを撮影することは困難でしたが、今ではネット上で貴重な写真を見ることができます。
(貴重なザトウクジラの授乳シーンを激写!より引用)
もちろん哺乳類ですから、肺呼吸です。有名な「クジラの潮吹き」は、クジラが海面に出てすぐに空気を吐き出すために、まだ体についている海水や、鼻の穴の窪みにたまっている海水が、霧のようにふき飛ばされて白く見えている現象です。
ちなみに寒いときは、まわりの気温より息が温かいので、よけいに白く見えます。…このことも受験生は「飽和水蒸気量」の概念をつかってちゃんと説明できないとダメですよ。
クジラの祖先はカバを含む偶蹄類(ぐうているい)の祖先から分化したと考えられています。太古の昔には陸上を 4 本の足で歩いていたのです。海への適応とともに尾が発達して体が流線型になる一方、後足は退化してしまいました。その証拠に、クジラの腹部内部をCTスキャンで見てみると、後足を支えていた骨盤のなごり ( 骨盤痕跡骨 ) を観察することができます。
近年、各地で野生のイルカやクジラを観察するドルフィンウォッチングやホエールウォッチングが人気です。沖縄では 1 月から 3 月の間、座間味島近海や那覇周辺、伊江島近海でザトウクジラの観察を主としたホエールウォッチングツアーが盛んに行われています。
コロナが落ち着いたら、ぜひ行ってみてください。
☆まとめ 進むも自由、戻るも自由
以上見てきたとおり、最初は海の中でしか生存できなかった生物は、やがて地球環境の変化や、自らの進化によって、陸地に進出していきました。
進化とは乾燥に耐えること。
…こう考えてみると改めて不思議に思うことがあります。
乾燥に耐えられるように進化した、最も高等な動物たる哺乳類であるイルカやクジラは、どうして海に戻ったのでしょうね。
その答えは、もはやイルカやクジラ本人たちも知らないのかもしれませんが、きっと海に棲むことが、彼らにとっては快適だったのでしょう。
この世界には、敢えて海に戻ることを選んだ哺乳類がいます。
私たちは、その気にさえなればどこにでも行くことができますし、それだけでなく元いた場所に戻る自由もあるのです。覚えておいてください。
最後までお読みいただきありがとうございました🧡
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