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ウーマンラッシュアワー村本大輔さんと振り返る自公政権8年|朝鮮学校の無償化を強く求めます

※トップ画は『おれは無関心なあなたを傷つけたい』(村本大輔さん著、ダイヤモンド社)より。

☆2012年~2016年 戦後80年はあるのか

私の記憶と感覚では、安倍政権は発足当時(2012年12月26日~)から全然ダメだった。

民主党政権であれば一発退場となるであろう不祥事が続発しても、しかし自公政権は存続し続け8年となる。

集団的自衛権、共謀罪、教育勅語の礼賛…と気持ち悪い話題が相次いだ。

かつて、私は実名・顔出しでSNSやYouTubeなどをしていたが、政権批判的なことを言うと多くの方に止められた。その方々は、私のことを想って忠告してくれているのだろうとは理解できたが、そういう「モノを申せない」空気が気持ち悪かった。民主党時代には、マスコミも国民もみんなで寄ってたかって今にして思えば大したことでもないことを執拗に叩いていたではないか。民主党政権時代の2010年に世界11位であった「報道の自由度ランキング」は、2013年安倍政権下で一気に53位に下降した。現在は66位である。

2016年8月、戦後71年めとなる年に、集英社新書で『「戦後80年」はあるのか』という衝撃的なタイトルの本が出た。あるのか、という問いは「ないこと」を想定しないと発せられない問いである。そして「戦後80年がない」とは、つまり10年以内に戦争になることを意味するのだ。

冬の金沢な女の子

☆2017年 お前たちのことだ

2017年、ちょっとした事件が起きる。恒例演芸番組『THE MANZAI 2017』で、ウーマンラッシュアワーがなんと政治をネタに漫才を披露したのである。

モノを言えなくなった日本において画期的な事件であった。…これが画期的な事件となってしまうところが日本のオワコンなところなのだが😝

地上波ではほとんどタブーとなっている原発ネタ沖縄問題(米軍基地の辺野古移設問題、高江のヘリパッド問題)等をマシンガントークで次々と風刺していった。

2016年4月14日には熊本地震があり、2017年放送当時においても仮設住宅に暮らしている人が熊本で4万7000人、東北では8万2000人もいること、一方で新国立競技場の建設費が1500億円もかかることを引き合いに出し、

村本「国民はオリンピックが見たいんじゃなくて」

中川「自分の家で安心してオリンピックが見たいだけ」

村本「だから豪華な競技場建てる前に」

中川「被災地に家を建てろ!」

この掛け合いに被災地の方は泣いて喜んだという。

そして私は今でも、その最後の捨て台詞をよく覚えている。

被災地の復興問題、原発問題、沖縄の基地問題などなど多くの問題を日本は抱えているのに、ニュースになるのは議員や芸能人の不倫ばかりであることを指摘した後で、

村本「それ(不倫)は本当に大事なニュースか?」
中川「いや表面的な問題」
村本「でもなぜそれがニュースになる?」
中川「数字が取れるから」
村本「なぜ数字が取れる?」
中川「それを見たい人がたくさんいるから」
村本「だから本当に危機を感じないといけないのは?」
中川「被災地の問題よりも」
村本「原発問題よりも」
中川「基地の問題よりも」
村本「北朝鮮問題よりも」
中川「国民の意識の低さ!」

そして村本大輔氏は観客席に向けて「お前たちのことだ!」と言い放ってステージを去っていった。

当時の空気感を思い出すにつけ、よくコレ放送できたなあと思う。今でこそ『THE MANZAI』におけるウーマンラッシュアワーの政治ネタは定番となっているが、初回である当時はとにかく画期的なできごとだったのである。

冬の手繋ぎ女の子

☆2018年 朝鮮学校だけが無償化されていない

翌2018年の『THE MANZAI』では、政治ネタにより磨きがかかる。もはや漫才という形式すら度外視し、村本大輔氏の独演会に近くなる。詳述はしないが私はこれもネタ(風刺)の一環だと思っている。相方との不平等、という漫才における定番ネタである「コンビ間格差」の問題に落とし込むようでいて、その実は生産性だとか新自由主義的な価値観への痛烈な風刺になっていた(と私は受けとめた)。

ちなみに2018年の捨て台詞は「漫才師だから最後は笑いにしましたけど、笑って誤魔化すなよ!」

個人的には2018年のネタで特筆すべきは朝鮮学校だけが無償化されていない問題を取り上げたことだと思う。

著書『おれは無関心なあなたを傷つけたい』によれば、オンエア後に信じられないくらいのメッセージが届いたという。ゴールデンタイムの地上波お笑い番組において「朝鮮学校の無償化」という言葉が入っていたことが当事者には衝撃だったのだ。メッセージの一つを引用する。

🍎「家族でテレビを観ていたら、急におじいさんが泣いた。それを見てお父さんが泣いて、私が泣いた」

高校授業料無償化は、民主党政権だった2010年4月から導入され、当初は朝鮮学校もその対象となっていた。しかし自公政権に交代後の2012年12月、当時の下村博文文部科学大臣は朝鮮学校を無償化の対象としない方針を表明。それを受けて翌年に文科省が省令を改正し、朝鮮学校は対象から除外されることになった。

高校授業料無償化そのものの動きは広がっており、現在は国公立だけではなく、私立高校や、さらには学校教育基本法の第1条で定められた学校に相当しない、「各種学校」「団体」扱いの高校でも就学支援金が支給されるようになっている。詳しくはこちらのサイトに載っているが、例えばブラジル、韓国、フランスなどの外国人学校などはほぼすべて無償化されている。

しかしほかの学校と違い、朝鮮学校だけが無償化されていない。だから朝鮮学校に通う子たちの親は昼夜働き、授業料を支払っている。少しでもそんな親を楽にさせたくて、生徒たちは村本大輔氏が漫才で言及していたように、「無償化を求めて一生懸命、寒いときにビラ配りとかやってるわけ」である。

法の下の平等(憲法14条)や、教育の機会均等を確保する高校無償化法の趣旨に反することは明らかであるように思えるが、しかし今年10月16日、広島高裁は無償化の除外を違法ではないとする判断を下した。日本の司法は政治に介入することに消極的なので、政治の被害者を救済するには政治そのものを替えるしかない。

かわいいチマチョゴリ

朝鮮学校はもともと、第二次世界大戦後、朝鮮語を話せない在日朝鮮人子弟に言葉を教えるための「国語講習所」として設けられた民族教育の場が、学校の形に発展したものである。

その人たちはなぜ朝鮮語を話せないのか。それは、朝鮮半島が日本の植民地となり、親や祖父母が日本にやってきて定住してから生まれ、日本で育った子どもたちだからだ。植民地ではなくなった後も、さまざまな事情で祖国に戻れない在日朝鮮人が、「日本での暮らしを続けながらも、自分たちの言葉や文化についても忘れたくない、学びたい」と願って生まれたのが朝鮮学校なのだ。

朝鮮学校の中には「いつでも授業参観に来てください」と門戸を開いているところがいくつもある。一見すれば、自公政権やネトウヨが喧伝するような「金正日(キム・ジョンイル)総書記(当時)の礼賛」「主体(チュチェ)思想を教え込んでいる」「日本語はいっさい禁止」などの異様な教育など行われていないことは明らかである。

基本的人権である「子どもたちが教育を受ける権利」を政治の外交カードに利用するべきではない(効果的なカードになり得ないし、そもそもこの8年間で拉致問題はまったく進展しておらず、優れた外交ができているとは到底思えない)。一刻も早い朝鮮学校の無償化を強く求める。

本書『おれは無関心なあなたを傷つけたい』の最初の章「手作りキンパに想うこと」がとても泣けるので、機会があればぜひ読んでみてほしい。キンパとは海苔で米飯を巻いて作る韓国料理である。

キンパ

☆2019年~現在 

長くなってきたので一気にまとめに入る。

2019年2月27日深夜に放送された『ナカイの窓』(日本テレビ)という番組で、指原莉乃が「最近なぜか政治を語りたがるタレントとか…」とそれがまるで悪いことであるかのように発言した後、嘲笑気味に「ウーマンラッシュアワー村本」と実名を挙げた。元々嫌いだったが、この一件で私は指原莉乃を決定的に大嫌いになった。

しかしそんなことを気にする村本大輔氏ではない。『THE MANZAI』においては、2019年には「透明人間」という言葉を使って、マジョリティに踏み潰されている社会的弱者は「いる」のだとお茶の間に直視させ、そうした人たちは自分たちのネタを「泣きながら笑う」のだと突きつけた。

この主張は2020年の

🍎「日本が平和だと言う人は、問題があるのに問題を見ていないだけ」

🍎「麻生太郎は政治に無関心なのは悪いことではない、アフガニスタンで地雷を踏んだら政治に関心を持つが日本で地雷を踏むことはない、という趣旨のことを言ったが、地雷は踏まなくたって被災地の人や朝鮮学校の生徒保護者や沖縄の人や福島・東北の人は今も必死で闘っている」

という主張とベースは同じだと思う。村本大輔氏が著書『おれは無関心なあなたを傷つけたい』で言いたいことは、2017年以来の漫才からずっと一貫している。関心を持つこと、沈黙しないこと、現実をちゃんと見ること。


最後に、私の好きな小説『晴れ、時々くらげを呼ぶ』(鯨井あめさん著、講談社)の一節をご紹介して本記事の結びとする。

🍎「無関心であることは、人に優しくできないということだ。自分勝手であることは、感情の矛先を間違えるということだ。優しさの本質は他者への興味だ。」

くらげ2


🎄<参考文献>

🎄<併せて読みたい>

【やさしさの方程式】やさしさ=想像力×創造力×他者への関心

キムチとクジラとコペルニクス

【晴れ時々くらげを呼ぶ】世界で最も優しい青春小説

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