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本多平直議員の発言を機に考える性交同意年齢とジェンダーと理想の社会

本多平直・衆議院議員(56、立憲民主党・比例北海道ブロック)の発言と立憲民主党の対応が物議を醸しています。

この記事では、そもそも「性交同意年齢」とは?というキホンからおさらいして、この件の受けとめ等についてお話ししていきます。約7000字のちょっと長い記事ですが、とても大切なお話しです。

☆女性の婚姻年齢が18歳に引き上げ

現行民法では男性は18歳から、女性は16歳から婚姻できますが、未成年者が婚姻するには父母の同意が必要、というルールになっています(民法731条、同737条)。

しかし民法は改正され来春2022年4月1日から、男女ともに婚姻は18歳からに統一されます。併せて成人年齢も現行の20歳から18歳に引き下げられます。よって、「未成年者が婚姻する」ということ自体がなくなります。

以下この記事においては、「女性の婚姻可能年齢は18歳である」ことを前提にして論を進めます。また、性犯罪の被害者の多くが女性である現状に鑑み、基本的には大人の男性から10代女性を守る、という観点に限定して論を進めます。もちろん男性に対する性犯罪も許されないことは言うまでもありません。

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☆性交同意年齢とは?

次の条文をご覧ください。

✅刑法第177条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛こう門性交又は口腔くう性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

後半がポイントです。日本の刑法は、13歳未満の子と性交等をすれば、仮に本人の同意を得ていても「強制性交等罪」で処罰するという規定になっているのです。

このことは逆から見れば、13歳未満の子がたとえ本心から誰かと性交等をしたいと望んでもその同意は法的に有効にならない、つまり日本の刑法は13歳未満の者には性交同意能力を与えていない、ということになります。簡単に言えば、「13歳未満はまだお子様だから性行為しちゃダメよ」ということですね。

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☆現在の日本における性交同意年齢の意義

逆に言えば、現在の日本は国民に対し「13歳になったら性行為してもいいよ」というメッセージを発していることにもなるわけです。はたしてそれは妥当なメッセージなのでしょうか。私は家庭教師などで多くの中学生と接してきましたが、彼ら・彼女らに性行為の自由が認められるということには大きな違和感を覚えます。

次に、性交同意年齢の意義についてちょっと異なる観点から考えてみます。

今、本人の望まない性行為が行われたとします。本人が12歳であれば、問答無用で加害男性を牢にぶち込むことができるわけですが、本人が13歳であれば、「本人の抵抗を著しく困難にするほどの、かなり強度の暴行または脅迫があったこと」などを立証できなければ牢にぶち込むことができなくなります。

現在の日本においては、強制性交等罪に問うための立証ハードルが諸外国と比べてかなり高いです。そのため実際には性暴力が横行しているにもかかわらず、そのほとんどが性犯罪として刑罰を受けることがないというとても理不尽な状況が長らく続いています。声を上げられない性暴力被害者、声を上げても実現されないケースが多数存在するのです。

性犯罪が相次いで不起訴処分や無罪となるケースが出てしまう一因には立証ハードルの高さや要件の厳格さもあると考えられます。加えて、国家や司法の世界が女性の権利を軽視しているという看過し難い事情も深刻です。

もちろんこの問題は本来は、性交同意年齢の問題とは切り離して別個に解決されるべきものです。暴行・脅迫を要件とせず広く「同意のない性交等」を性犯罪として処罰できるようにしたり、刑罰自体をもっと厳罰にしたり、10年という時効をもっと長くしたりなど、性犯罪の分野における「被害者中心主義」の立場に立った法改正や法運用、教育・文化の醸成がまだまだ必要です。

しかし、これらを一気に実現することは難しいので、そんなことを言っていたらいつまでも状況が改善されず多くの女性が苦しみ続けることになります。とりあえず性交同意年齢だけ先に引き上げてしまえば、少なくとも幼い女性を性暴力から救済しやすくなることは間違いありません。

性交同意年齢を引き上げるべきことは、国連からも勧告されています。

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☆日本はロリコン変態大国?

「性交同意年齢を引き上げよう」と言うと、多くの男性からこのような反論が返ってきます。

✅好きな人と性行為したいという10代少女本人の自由、人権を尊重するべきだ。
✅中学生から成人を口説いて恋愛関係になり、性行為に至る場合もある。これに刑罰を科すのは不当では?

これらに対する私見を述べておきます。

今の日本は、

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✅まともな性教育が学校で一切なされない。
✅緊急避妊薬の入手もとても困難。
✅中絶手術にも多額のお金が必要。手術の方式も日本では多くの国が認めている薬剤使用が認められず、外科手術を伴う身体的負担がとても大きいものである。
✅出産を決意するとなぜか学校に退学を迫られる(民法には16歳で婚姻できると書いてあるのに)。
✅望まない妊娠における遺棄事件などでは女性だけが罪に問われ男性の刑事責任が問われることはない。
✅性犯罪・セクハラの被害者を救済する法制度も運用も意識も希薄すぎる。
✅いまだに刑法に「堕胎罪」の規定があるなど、女性差別的な法とその運用全般。

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これだけ女性を過酷な状況に追い込んで虐げ、日本も批准している「児童の権利条約」に謳われた「意見表明権」もまったく認めていないような国家において性行為する自由だけが尊重されるなんて、控えめに言ってロリコン変態大国ではないでしょうか?💢成人と中学生との間に「真摯でロマンチックな恋愛」があり得るだなんてのは、権力側にいる男性に都合の良すぎる論理だと思います。

2兆歩譲って「プラトニックな恋愛」であれば個人の価値観の問題とも思う余地はありますが、「性行為」はその後の妊娠・出産に繋がるものです。しかも、ダメージは女性にのみ存在するのです。それを13歳からOKというのはどう考えてもおかしいと思います。

「中学生の側から成人を口説く」ケースが仮にあったとしても、それを大人の免罪符とするべきではありません。大人は理性で子どもからの性行為の誘いを断るべきです。

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☆いわゆる「淫行条例」の問題点

現在、日本ではすべての都道府県に「青少年健全育成条例」、いわゆる「淫行条例」があり、18歳未満の青少年との「淫行」は処罰されます。

しかし、「淫行」と「真摯な恋愛に基づく性行為」を峻別することはとても難しく、また「恋愛が真摯であるかどうか」という内心に属する問題について、警察・検察という国家権力が捜査し司法が判断を下すということには青少年の保護という観点とは別の大きな問題が生じます。

それに、条例ですから都道府県によって要件や刑罰に差が生じてしまいます。青少年の保護という国家としての重要課題については、国会での丁寧で慎重な議論や議決を通した法律できちんと決めるべきでしょう。

ですから私は、刑法の性交同意年齢を適切に引き上げた上で、淫行を処罰する条例の規定は廃止することを提案します。

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☆適切な性交同意年齢とは何歳なのか?

これは完全に個人の価値観になりますが、普通は婚姻の前に恋愛という過程を経るものであり、恋愛においては心だけでなく体ごと愛したいと思っても別に変なことではなく、その自由は尊重されて然るべきだと思います。ですから性交同意年齢は婚姻可能年齢よりは低く、例えば義務教育段階が終わっている16歳とか、その辺りで設定するのが妥当かなあと思います。日本共産党や、物議を醸している立憲民主党も現状は「16歳への引き上げ」を目標に掲げています(私の理解です)。

ちなみに主な国の性交同意年齢はこんな感じです。(ハフポストより)

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性交同意年齢を18歳にしてしまうと、高校生カップルが性行為したら強制性交等罪となってしまいます。5年以上の有期懲役というかなり重い罪に問われます。それはちょっと規制のし過ぎかなあと個人的には思います。

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☆「ロミオとジュリエット条項」とは?

ここまでの私の説明を読んで、このようにお感じになる方もいるかもしれません。

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🍏性交同意年齢を単純に16歳に上げると、例えば15歳同士のカップルが真摯な恋愛の上で性交等をするのも刑法で罰せられる、ということになってしまうけど、「子どもの権利」という観点からそれは妥当なの?

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この問題に対してフランスでは、いわゆる「ロミオとジュリエット条項」(歳の差条項)を設定することで解決を図っています。「成人と15歳未満の未成年の間の年齢差が、少なくとも5歳離れていない限り、罰則は適用されない」とする内容です。(※フランスの成人年齢は18歳、性交同意年齢は15歳です)

これによれば、例えば18歳と14歳のカップルや、あるいは15歳未満の者同士のカップルが性行為をしても罰せられないということになります。(※おそらく。私もあまり詳しくないので間違っていたらご指摘ください🙇‍♀️)

この記事は、具体的に「性交同意年齢」を何歳に設定するべきかを論じることが主題ではないのでこれ以上は掘り下げません。こういう方法もあるというご紹介をしました。

少しだけ私見を述べるなら、私は年少者に対して「歳が近ければ性交等をしてもよいけど年上の人との性交等はダメ」と国家が決めるのもおかしな話である気がするので、「ロミオとジュリエット条項」には同意しかねる気持ちがあります。お酒やたばこは20歳までダメなのですから、性交等も16歳までダメ、でいいのではないかと思います。18歳になるまで結婚できないわけですからね。

まあ、政権交代を果たしてからゆっくり議論を深めていきたいと思います。私もまだ勉強不足な部分が大いにありますので…。

スマホでラブラブな男女

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☆立憲民主党と本多平直議員の問題点

「政権交代」というキーワードが登場したところで、ようやくここからが本題です💦

刑法で性行為が一律禁止される男女の年齢を現行の「13歳未満」から引き上げることを議論する立憲民主党の「性犯罪刑法改正に関するワーキングチーム(WT)」で、出席していた本多平直議員が、

「例えば50歳近くの自分が14歳の子と性交したら、たとえ同意があっても捕まることになる。それはおかしい」「12歳と20歳代でも真剣な恋愛がある」「日本の『性交同意年齢』は他国と比べて低くない」

との趣旨の意見を複数回のWTで繰り返し述べたということです。

もちろんこれらの発言自体、とても残念です。日本は世界120位のジェンダー不平等国家で、本人たちも気づいていない無意識の差別や偏見が蔓延しており、権力関係がいろんなところに潜んでいます。ですから、例えば成人と中学生の場合にはそれは単なる性的搾取にあたり、真摯な恋愛関係は成立していないのだという姿勢、国家としてのメッセージを刑法で規制することで示すことが重要なのです。

同様のことは職場内の関係や教師・生徒間の関係など、地位を利用した性犯罪・セクハラ全般にも言えることですので、将来的には議論を深め、特別な罰則規定を設けるなど適切な法規制をしていく必要があると考えます。

加えて、今回の件における立憲民主党の問題点を2つ挙げておきます。

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✅産経新聞が第一報を報じたときにすぐに対応せず、事実認定や本人による謝罪と党としての処分の発表がその日(7日)の夜まで持ち越されたこと

✅WT出席者の反対意見により、党として「成人と中学生以下との性行為の禁止を求める報告書」をまとめる予定を完遂できず、見送らざるを得なくなったこと

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個人的には本多平直議員の発言そのものよりも、上記2点、特に2点めの「党としての姿勢」が問題ではないかと思います。野党第一党のジェンダー感覚がこのレベルなのか…という絶望です。この大事な時期に…。野党各党もこの点についてはあまり庇い立てすることなく、健全に批判してほしいとは思います。

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☆「自民党と同じ」は暴論です

ただ、酌量すべき情状もあります。

🍏党として「厳重注意処分」を下したこと
🍏本人による撤回と謝罪があること
🍏翌8日には本人が国会内で記者団の取材に応じていること


特に謝罪については、政権与党の大臣などにありがちな「誤解を与えたなら申し訳ない」式のものではなく、真摯なものと言えると思います。以下、朝日新聞の記事などの報道をもとにまとめてみます。

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「今回、党内での会議の一部の発言が報道されるに至りましたが、趣旨において私の理解が足りていない、また報道によって傷つく方がいるとのご批判は当然と考えます。真摯に反省をし、認識を深めていきます。性犯罪に関する刑法改正に関して、私は、一方当事者が少なくとも中学生までの低年齢で、他方当事者が成人である場合、両者の間に対等性はなく性搾取となっている実態を踏まえ、低年齢当事者を保護するために成人を処罰対象とすることの必要性を認識しています。刑事処罰の議論では、限界事例についての検討や、特異な例外事例の存在など緻密な検討が必要だと考えました。しかしながら、私の発言は、例外事例としても不適切であり、お詫びして撤回いたします。誠に申し訳ありませんでした。

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ですから、今回の立憲民主党に対して「自民党と同じ」だとするのは私は暴論だと思います。悪質性の質も量も全然違います。

もちろん「厳重注意」では甘すぎるから議員辞職を求めるべきだ、という意見もあることは私も一定程度は理解しますが、一般論としては議員の資質は有権者が選挙で審判するべきものだと思います。また、自民党には多くの問題議員がゴロゴロ存続していることとの均衡も考慮されるべきとも思います。

ですから私としては、立憲民主党には自民党と異なり自浄作用がはたらくと期待して、今後さらに議員個人としても党としても学びを深めてほしいと希望します。

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☆おわりに どういう日本にしたいのか

そもそもとして「何のために『性交同意年齢の引き上げ』について議論するのか」という部分に考えを巡らせてみましょう。もう一度、性犯罪やジェンダーに関する日本の問題点を列挙してみます。

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✅まともな性教育が学校で一切なされない。
✅緊急避妊薬の入手もとても困難。
✅中絶手術にも多額のお金が必要。手術の方式も日本では多くの国が認めている薬剤使用が認められず、外科手術を伴う身体的負担がとても大きいものである。
✅出産を決意するとなぜか学校に退学を迫られる(民法には16歳で婚姻できると書いてあるのに)。
✅望まない妊娠における遺棄事件などでは女性だけが罪に問われ男性の刑事責任が問われることはない。
✅性犯罪・セクハラの被害者を救済する法制度も運用も意識も希薄すぎる。
✅いまだに刑法に「堕胎罪」の規定があるなど、女性差別的な法とその運用全般。

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上記は一部に過ぎません。これらの諸問題を解消すること、一言で言えば「ジェンダー平等を達成すること」が目的であって、その手段の一つといいますか、ほんの入口において「性交同意年齢の引き上げ」という課題に取り組んでいるわけです。

ジェンダー平等を実現するためには、私は「人権教育の一環としての、幼稚園・保育園からの発達段階に応じた系統立った性教育」が不可欠だと考えています。(以下「真の性教育」と表記します。)

そして、自公政権が「真の性教育」を実施してくれることは未来永劫ないと考えます。私のnoteでは何度も書いていますが、自民党議員は「真の性教育」に挑もうとする教諭、学校、教育委員会に圧力をかけて潰した前科があります。自民党の所属議員や党としての言動の全趣旨からも、それは明らかです。

つまり、真の性教育その他の施策を伴う「性交同意年齢の引き上げ」、ひいてはジェンダー平等を実現するための唯一の方法は「政権交代を実現すること」です。必要条件と言い換えてもいいでしょう。

ですから、健全な批判はもちろんなされるべきと思いますが、そのことだけは忘れずに、日々の発信や投票行動をどうするべきか各自で熟考していただければと考えます。立憲民主党に意見を送りたい方はこちらからどうぞ。


本多平直議員や立憲民主党だけでなく、私を含む国民全体がことジェンダーに関しておしなべて「勉強不足」だと思います。無意識の差別・偏見を認識するためには尋常でない努力と学びの継続が必要です。これを機に勉強や議論を深めて、より良い日本にするために自分には何ができるのか、お互い真剣に考えていければと願っております🙇‍♀️

最後までお読みいただき真にありがとうございました🙇‍♀️今後もがんばりますので励ましのスキ・コメント・フォロー・サポート・おススメ・記事の拡散などしていただけますとめっちゃ嬉しいです。フォローは100%返します。またねー!💕


🐣<おススメ書籍>🐣

※絵本ですが、「真の性教育」を考えるヒントがここにあります。まずはこのレベルを日本の「常識」にしていきましょう。


※あまり「ジェンダー」そのものへの言及はありませんが、「日本をどうしたいか」を考える上で必読の1冊。立憲民主党をあまり好きでない方、支持政党が別にある方こそむしろ読んでほしいです。


🌹お互い学びを深めて良い日本に変えていきましょう。

🌸🍃この記事の執筆者、Gender Partnerは、コペル&アヤでした🐣


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Living is choosing!
生きるとは選択すること。自分で決断する勇気を持とう!

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※選挙に行けば日本は良くなる!都議選は6/25告示、7/4投開票!


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※「野党は批判するだけ」「野党はワーワー喚いてばかり」はファクトではありません。


政権交代

※「政権交代」は、日本が良くなるための必要条件です。


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