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散文の仲間

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ジブラルタル峻が綴る、理性や科学の外側のテクスト。
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#掌編

創作:シンポジウム(1100字)

創作:シンポジウム(1100字)

司会者:それでは只今よりシンポジウムを開催致します。私は本日の進行を務めます、咲楽井 白です。白と書いてあかりです。よろしくお願い申し上げます。

(拍手)

司会者:では本日の登壇者をご紹介致します。
まず、若者のカルチャーとコミュニケーション論がご専門の大醍醐文化大学、総合文化学類の若沼 柔客員教授です。

若沼:こんにちは。今朝はタピオカドリンクを頂いてきました。よろしくどうぞ。

(拍手)

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SANAGARAロックフェスレポ(創作:1261文字)

SANAGARAロックフェスレポ(創作:1261文字)

スポーツライターのカムチャツカ朱海です。最近はなぜか音楽ライブ関連のお仕事をよく頂きます。駆け出しのスポーツライターになぜこのようなオファーが来るのか分かりませんが、私としてはありがたい限りです。

さて『SANAGARAロックフェスティバル2024』行ってきましたよ。仕事を忘れて楽しんできちゃいました!

オープニングアクトは昨年12月に『月餅’s(ゲッペイズ)』から改名した『隙間タイル』です。

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小説:普通日記 #3

小説:普通日記 #3

 高校時代の友人、暮内くんに誘われて、カヌレ観戦に行ってきました。

 カヌレ観戦については後ほどにして、まず、暮内くんについて語らせてください。
 彼は会うたびに名前が変わります。わたしたちが彼に名前を与えるからです。それはあだ名や呼び名ではなく本質的な意味での名前です。XとYが織り成す座標ではなく、染色体レベルのゲノム編集です。もう少し補足すると、絹豆腐に見せかけた木綿豆腐であり、ポテトチップ

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ゴルゴンゾーラは装備できません

ゴルゴンゾーラは装備できません

虹猫学園高校ラクロス部のマネージャー、ミヤノクルミは図書館である本を手に取り、気になるところに目を走らせていた。

持つ、という言葉に意識が及んだ。フィンランド人留学生へルミの言葉を思い出す。

所有の概念そのものが日本人と違うのかなあ。

それにしても【黄色いユニコーン】って何だろう? そういう料理のメニュー名?
主人公のお兄さん、亡くなったみたいだけど、何があったんだろう?

それにこの『ゴル

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旅から戻らないドラゴンの赤ちゃん、または「待つ」こと

旅から戻らないドラゴンの赤ちゃん、または「待つ」こと

 旅から戻らないドラゴンの赤ちゃん。間違って世界のエントランスを出入りする消されることのない消しゴムは、唐揚げではないと知りながら待ちます。

 今大切なのは「待つ」ことです。この動詞についてやや細やかに考えます。「待つ」とは一般に何かを待つことになります。それは受動的な動作でしょうか? あるいは具体的行為を持たない精神的営為でしょうか?

 いいえ。それは違います。待つとは、予め手を打つことであ

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創作:ある甘味研究者の手記

創作:ある甘味研究者の手記

シュークリームは世界を辞めていたので、ティラミスの前頭葉は常にホワイトユーモアに支配されていました。

ピーチメルバは氷の気化熱を利用してゼリー状の恋愛感情を押し込めます。夢の天然水は資本主義の人工水であり、それはハムカツがハムでありカツであることの位相差に似ています。

モンブランは目的の無い螺旋階段カテゴリーに属するとの報告には承服しかねます。モンブランが常にそして既に無極性なのは立証済みです

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小説:普通日記

小説:普通日記

 先日の日記を転記しておくことにします。

 新宿東口のご存じ、シアターバゲットにて、映画『アボカドの決意』を観覧してきました。
 天気予報では、夕方からチゴイネルワイゼンになるとのことなので、僕はミジンコに変身するのと同じ要領で、ブルドッグになれるよう調整しておきました。
 朝食はもちろん春巻きです。遅刻しないように中身だけを食べました。しかしながら、モナド論的には御法度らしいのです。何せ窓がな

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