創作:シンポジウム(1100字)
司会者:それでは只今よりシンポジウムを開催致します。私は本日の進行を務めます、咲楽井 白です。白と書いてあかりです。よろしくお願い申し上げます。
(拍手)
司会者:では本日の登壇者をご紹介致します。
まず、若者のカルチャーとコミュニケーション論がご専門の大醍醐文化大学、総合文化学類の若沼 柔客員教授です。
若沼:こんにちは。今朝はタピオカドリンクを頂いてきました。よろしくどうぞ。
(拍手)
司会者:続きまして、魚のうろこ研究の第一人者でいらっしゃいます、水生生物総合研究調査機構、特任准教授、抜魚 玉先生です。
抜魚:こんにちは。最近、和太鼓にハマっています。トトント トントン カッカッ トトトトト カッカッ トトトン カッ カッ トトトン トトントトン カカッ。よろしくお願い致します。
(拍手)
司会者:はい。三人目の登壇者をご紹介します。品性研究の第一人者、浦前学術大学院大学の愛 華代名誉教授です。
愛:愛でございます。今日はマリアナ海溝を完全に埋める勢いでお話いたします。どうぞよろしく。
(拍手)
司会者:はい。個性あふれるお三方でお送りしていくわけですけれども ……
抜魚:えーと。このシンポジウムは何のシンポジウムなんでしょうか? 私たちはなぜここに集められたのでしょう? 何を話し、そして、何を伝えればよいのでしょうか?
若沼:それは自明ですよね。自分の「持ち物」を公開するだけですよね。なぜならそれくらいしかできないのですから。
愛:そして、おそらく、私たちの「持ち物」の間にある何かにこそ価値があるんじゃないかしら? ご専門とご専門の間にこそ品性が見えてくるのだと信じます。
抜魚:僕、和太鼓叩いてもいいですよね。魚のうろこの話、みんなそんなに興味ないでしょ?
愛:抜魚先生、それもよろしいんじゃなくって。ウフフ。
若沼:愛先生……
いやいや、魚のうろこの話。聴きたいですよ。それがご専門でしょうし。抜魚先生が和太鼓好きなのってみんな知らないでしょ?
抜魚:若沼先生、それがですね。私の私設アカウント「和太鼓の抜ちゃん」が大バズりでして。
あれ〜、若沼先生の若者文化研究はショート動画系SNSの動向にリーチしていないのですか〜?
若沼: ……(嫌味な奴)
愛:抜魚先生がご専門外の和太鼓を披露する。それも新しい品性のカタチじゃないかしら?
わたくしは和太鼓聴きたいわ。
若沼: ……(あ、愛先生まで)
司会者:はい、ということで……
では……抜魚先生、和太鼓の、準備のほう、えー、
お願いしてもよろしいでしょうか?
いつもどうもありがとうございます。