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読書メーターからやってきました。当初は、そちらと連動した書き込みになると思います。 慣…

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読書メーターからやってきました。当初は、そちらと連動した書き込みになると思います。 慣れてくると、自分語りを始める予定で、これが本来の目的です。 正直な話、ここの仕組みもよくわかっていませんが、どうぞよろしくお願い致します。

記事一覧

『特養あずみの里裁判を考える』(日本看護協会出版会)を、じっくり味わう……

【暮らしの中に求められる、ケアの姿】 2013年に長野県の特養「あずみの里」で、准看護師が女性入所者をドーナツの誤飲で窒息死させたとして、刑事事件に。業務上過失致死…

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6か月前
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凛として灯る

【動機を知るには、歩んだ人生を知る必要がある】 「モナ・リザ」にスプレーを噴射した、米津知子。女として、障害者として、差別の被害と加害の狭間を彷徨った、ウーマン…

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8か月前
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『ヘンリー・ナーウェン』(酒井陽介著/ドン・ボスコ社)を読んで――

ナーウェン神父の生涯とその霊性や著作を執筆した背景を、サレジオ会司祭が紹介する。 人と関わるなかでの失敗や孤独から逃げることなく、傷つきながらも、むしろ痛みと向…

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1年前
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『天使の食べものを求めて―拒食症へのラカン的アプローチ』(GINETTE RAIMBAULT CAROLINE ELIACHEFF著/三輪書店)を読んで

【拒食女性たちを、病的なほどに痩せなければならないという衝動に駆りたてる力とは何なのだろうか?】 伝説的な4人の人物(オーストリア皇妃シシィ、ソフォクレスが描いた…

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1年前
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『躁鬱大学―気分の波で悩んでいるのは』(坂口恭平/新潮社)を読んで

主要テキストは、 【神田橋語録】 知る人ぞ知る、精神療法の達人・神田橋條治先生。 著者は、この方の躁鬱病に関する文章を読むことで、 <励まされ、そして長かった鬱か…

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1年前
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『神田橋條治 精神科講義(林道彦・かしまえりこ編/創元社)』を読んで

【やっぱり、先生は凄い!】 1986年から26年間の精神科病院での講演録。現場の臨床の真っ只中で、より良い治療に向けての工夫を重ねてきた著者の、新しい技法発想の萌芽と…

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1年前
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『民主主義を直観するために』(國分功一郎/晶文社) を読んで

6年前の評論集。なのですが、読み応えあり。 「まえがき」に、 <政治に対してはずっと強い関心を抱いていたけれども、民主主義を自分なりに直観しなければならないと考え…

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1年前
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『不干斎ハビアン(釈 徹宗/新潮選書)』を、じっくり読み直しました。

10数年ぶりの再読でした。 【宗教というヌエのような存在を把握できた(と感じた)ときは、ある種の宗教体験のような状態になる】  ハビアンは400年前、元・禅僧であった…

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1年前
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『手の倫理』(伊藤亜紗/講談社選書メチエ )を読む

【一方向的な「さわる」から、共鳴・信頼の通路となる「ふれる」へ】 「touth」の日本語訳は、「さわる」と「ふれる」だが、微妙にニュアンスが異なる。「逆鱗にふれる」…

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1年前
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『当事者は嘘をつく』(小松原織香 著/筑摩書房)を読んで――

【私は、痛む傷を抱えながら生きているサバイバー】  本書冒頭で、性暴力被害者にして修復的司法の研究者である著者は、 <私はずっと本当のことを語ることが怖かった>と…

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1年前
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『当事者研究 等身大の〈わたし〉の発見と回復』(熊谷 晋一郎/岩波書店)を読んで

自閉スペクトラム症研究を例に、ユニークな“自分助け”の技法である「当事者研究」の最新動向と、多分野の研究者との協働によって、知識や支援法の共同創造が始まりつつあ…

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1年前
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『介護現場でのアルコール関連問題Q&A』(関西アルコール関連問題学界編/筒井書房)を読む

久里浜医療センターの調査によれば、 65歳以上のアルコール依存症患者は 過去20年以上にわたって増加傾向にあり、 アルコール依存症患者の全体に占める高齢者の割合は、 19…

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1年前
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『いじめ加害者にどう対応するか』( 斎藤 環 、内田 良 著/岩波ブックレット 1065)を読む

【被害者に「学校にいかなくてもいいんだよ」という“一見優しい言葉”に問題提起!】 いじめ加害者が学校に居続け、被害者が立ち去るという歪んだ現状をどう変えるべきか…

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1年前
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『〈責任〉の生成――中動態と当事者研究』(國分功一郎VS熊谷晋一郎/新曜社)を読み込む

互いの研究への深い共鳴の中で、 複数の思考を感受し合いながらの共同研究は、 「責任」の概念を抜本的に問い直す――。 この時代そのものに向けられた、「対談」形態で書…

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1年前
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シリーズ・ケアをひらく『カウンセラーは何を見ているのか』(信田さよ子著/医学書院)を読んで

【ガチンコ舞台で「カウンセラー」を演じる】  『母が重くてたまらない』など、多数の著作がある信田さよ子氏による、 「シリーズ・ケアをひらく」本。 若き日の精神科病…

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1年前
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『薬物依存症(松本俊彦著/ちくま新書)』を読む。

薬物依存症治療の第一人者が、 「意志が弱い」「快楽主義者」「反社会的組織の人」など 世に蔓延する誤解をとき、医療や社会のあるべき姿をも考察する。 薬物問題は「ダメ…

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1年前
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『特養あずみの里裁判を考える』(日本看護協会出版会)を、じっくり味わう……

【暮らしの中に求められる、ケアの姿】
2013年に長野県の特養「あずみの里」で、准看護師が女性入所者をドーナツの誤飲で窒息死させたとして、刑事事件に。業務上過失致死罪で一審有罪。この判決は、介護や医療の現場を萎縮させるものとして大きな波紋を呼んだが、高裁は一審判決を破棄し無罪に。検察は上告を断念し、無罪が確定。
裁判を振り返り、ケアの現場におけるリスクとコミュニケーションのあり方、科学的根拠と法の

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凛として灯る

凛として灯る

【動機を知るには、歩んだ人生を知る必要がある】
「モナ・リザ」にスプレーを噴射した、米津知子。女として、障害者として、差別の被害と加害の狭間を彷徨った、ウーマン・リブ活動家の足跡。著者は書く。
<冷静かつ淡々と、しかし揺るぎない信念のこもった語り口に、私は凛として灯るような情念を感じました。(中略)人には、人生を語ることでしか語り得ない動機や理由があるはずです。ならば、その生の足跡を分析したり解釈

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『ヘンリー・ナーウェン』(酒井陽介著/ドン・ボスコ社)を読んで――

『ヘンリー・ナーウェン』(酒井陽介著/ドン・ボスコ社)を読んで――

ナーウェン神父の生涯とその霊性や著作を執筆した背景を、サレジオ会司祭が紹介する。
人と関わるなかでの失敗や孤独から逃げることなく、傷つきながらも、むしろ痛みと向き合うことで、癒しの源である神に人々を導くナーウェンの姿を明らかにしています。
巻末に、註と年譜と著作一覧。

<カトリック教会の伝統の重みと狭い枠組みに囚われることなく、非常にエキュメニカルな立場をとり、思想や宗教に関係なく、人間が何より

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『天使の食べものを求めて―拒食症へのラカン的アプローチ』(GINETTE RAIMBAULT CAROLINE ELIACHEFF著/三輪書店)を読んで

『天使の食べものを求めて―拒食症へのラカン的アプローチ』(GINETTE RAIMBAULT CAROLINE ELIACHEFF著/三輪書店)を読んで

【拒食女性たちを、病的なほどに痩せなければならないという衝動に駆りたてる力とは何なのだろうか?】
伝説的な4人の人物(オーストリア皇妃シシィ、ソフォクレスが描いたアンティゴネー、哲学者シモーヌ・ヴェイユ、シエナの聖カテリーナ)を語りながら、拒食症とは何かの糸口を探った書。
実に、長きにわたって摂食障害関連の本を読み続けてきた者であるが、
このような視点でこのテーマを取り上げていただけるのは、嬉しか

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『躁鬱大学―気分の波で悩んでいるのは』(坂口恭平/新潮社)を読んで

『躁鬱大学―気分の波で悩んでいるのは』(坂口恭平/新潮社)を読んで

主要テキストは、
【神田橋語録】 知る人ぞ知る、精神療法の達人・神田橋條治先生。
著者は、この方の躁鬱病に関する文章を読むことで、
<励まされ、そして長かった鬱から抜け出し、しかも躁状態に入るのではなく、なんだかポカポカと体が暖かくなった>と。
そこで、
<本当は神田橋さんに躁鬱病についての軽いエッセイを書いてほしい>くらいだが、
<勝手に神田橋さんを躁鬱病についてのソクラテスを見立てて、彼の言葉

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『神田橋條治 精神科講義(林道彦・かしまえりこ編/創元社)』を読んで

『神田橋條治 精神科講義(林道彦・かしまえりこ編/創元社)』を読んで

【やっぱり、先生は凄い!】
1986年から26年間の精神科病院での講演録。現場の臨床の真っ只中で、より良い治療に向けての工夫を重ねてきた著者の、新しい技法発想の萌芽と展開が一望できる。
「誤診と誤治療」「精神療法におけるセントラルドグマの効用」「問題点の指摘の仕方」「臨床力を育てる方策」「フラッシュバックの治療」「治療者の偏見」などを収録。特に「双方向性の視点」が、先生の面目躍如。

<九大の先生

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『民主主義を直観するために』(國分功一郎/晶文社) を読んで

『民主主義を直観するために』(國分功一郎/晶文社) を読んで

6年前の評論集。なのですが、読み応えあり。
「まえがき」に、
<政治に対してはずっと強い関心を抱いていたけれども、民主主義を自分なりに直観しなければならないと考えたことはほとんどなかった。だが、様々な理由から私は民主主義を直観する必要に迫られた。必要に迫られながら書いたり語ったりしたことがこの中に収められている。だから、もしかしたらそうした素材が他の方々にも役立つかもしれない>と。
2010~20

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『不干斎ハビアン(釈 徹宗/新潮選書)』を、じっくり読み直しました。

『不干斎ハビアン(釈 徹宗/新潮選書)』を、じっくり読み直しました。

10数年ぶりの再読でした。
【宗教というヌエのような存在を把握できた(と感じた)ときは、ある種の宗教体験のような状態になる】 
ハビアンは400年前、元・禅僧であったがクリスチャンへと改宗し、『妙貞問答』で仏教・儒教・道教・神道を細密に研究した上で批判した。だが晩年、キリシタン批判書『破提宇子』を発表。日本人キリシタンの中心的存在として活躍していたのに、なぜ突如キリシタンを棄教したのか。『破提宇子

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『手の倫理』(伊藤亜紗/講談社選書メチエ )を読む

『手の倫理』(伊藤亜紗/講談社選書メチエ )を読む

【一方向的な「さわる」から、共鳴・信頼の通路となる「ふれる」へ】 「touth」の日本語訳は、「さわる」と「ふれる」だが、微妙にニュアンスが異なる。「逆鱗にふれる」とか「神経にさわる」とかいう表現。触覚の最大のポイントは、それが親密さにも、暴力にも通じているということ。触感は触り方次第なのか――。
<触覚を担うのは手だけではありませんが、人間関係という意味で主要な役割を果たすのはやはり手です。さま

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『当事者は嘘をつく』(小松原織香 著/筑摩書房)を読んで――

『当事者は嘘をつく』(小松原織香 著/筑摩書房)を読んで――

【私は、痛む傷を抱えながら生きているサバイバー】 
本書冒頭で、性暴力被害者にして修復的司法の研究者である著者は、
<私はずっと本当のことを語ることが怖かった>と書く。
<私が修復的司法の研究を始めたことは、自分の被害体験と深く繋がっている。私は被害者だから加害者との対話に興味を持った。その、とても自然で当たり前のことが、私には言えなかった。「加害者と対話することを望む被害者」。私は、そのようなラ

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『当事者研究 等身大の〈わたし〉の発見と回復』(熊谷 晋一郎/岩波書店)を読んで

『当事者研究 等身大の〈わたし〉の発見と回復』(熊谷 晋一郎/岩波書店)を読んで

自閉スペクトラム症研究を例に、ユニークな“自分助け”の技法である「当事者研究」の最新動向と、多分野の研究者との協働によって、知識や支援法の共同創造が始まりつつある現状を報告。
注と参考文献に、索引。
<当事者研究は、自分と似た仲間との共同研究を通じて、等身大の〈わたし〉を発見すること、そして、そんな自分を受け容れるものへと社会を変化させることを通じて、回復へと導く実践。
(中略)世界にたった一人の

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『介護現場でのアルコール関連問題Q&A』(関西アルコール関連問題学界編/筒井書房)を読む

『介護現場でのアルコール関連問題Q&A』(関西アルコール関連問題学界編/筒井書房)を読む

久里浜医療センターの調査によれば、
65歳以上のアルコール依存症患者は
過去20年以上にわたって増加傾向にあり、
アルコール依存症患者の全体に占める高齢者の割合は、
1990年代は10%未満だが、
2011年には20%以上というデータがある。

そこで、介護現場ではアルコール問題にどう対応しているか知りたくなり、2009年発行と少し古いが、この本を読む。
介護職に役立つよう実践的なQ&A方式で、

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『いじめ加害者にどう対応するか』(	斎藤 環 、内田 良 著/岩波ブックレット 1065)を読む

『いじめ加害者にどう対応するか』( 斎藤 環 、内田 良 著/岩波ブックレット 1065)を読む

【被害者に「学校にいかなくてもいいんだよ」という“一見優しい言葉”に問題提起!】
いじめ加害者が学校に居続け、被害者が立ち去るという歪んだ現状をどう変えるべきか。精神科医と社会学者が、人々の意識データなどを取り上げつつ、被害者優先のケアのあり方を論じる。
副題が、「処罰と被害者優先のケア」。
<本書は、わたしたち大人がつくりあげてきたいじめ被害者に対する今日的なケアを批判的に検討しています。被害者

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『〈責任〉の生成――中動態と当事者研究』(國分功一郎VS熊谷晋一郎/新曜社)を読み込む

『〈責任〉の生成――中動態と当事者研究』(國分功一郎VS熊谷晋一郎/新曜社)を読み込む

互いの研究への深い共鳴の中で、
複数の思考を感受し合いながらの共同研究は、
「責任」の概念を抜本的に問い直す――。

この時代そのものに向けられた、「対談」形態で書かれた「研究の記録」。「まえがき(國分)」に、
<研究は、ただし、明確な出発点を持っていた。それは熊谷晋一郎さんがこれまで行なってきた当事者研究についての研究であり、私が著書『中動態の世界』で公表した中動態についての研究である。われわれ

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シリーズ・ケアをひらく『カウンセラーは何を見ているのか』(信田さよ子著/医学書院)を読んで

シリーズ・ケアをひらく『カウンセラーは何を見ているのか』(信田さよ子著/医学書院)を読んで

【ガチンコ舞台で「カウンセラー」を演じる】 
『母が重くてたまらない』など、多数の著作がある信田さよ子氏による、
「シリーズ・ケアをひらく」本。

若き日の精神科病院体験を経て、
開業カウンセラーの第一人者となった著者が身体で摑み取った、
「見て」「聞いて」「引き受けて」「踏み込む」ノウハウの、
すべてをここに開陳!

<クライエントは、ときには共演者になることもあるが、
私というカウンセラーをじ

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『薬物依存症(松本俊彦著/ちくま新書)』を読む。

『薬物依存症(松本俊彦著/ちくま新書)』を読む。

薬物依存症治療の第一人者が、
「意志が弱い」「快楽主義者」「反社会的組織の人」など
世に蔓延する誤解をとき、医療や社会のあるべき姿をも考察する。
薬物問題は「ダメ。ゼッタイ。」や自己責任論では解決にならない。
痛みを抱え孤立した「人」に向き合い、
つながる機会を提供する治療・支援こそが必要だ、と。

表紙に、
<依存症とは、単に「人に依存できない」病なのではなく、
安心して「人に依存できない」病で

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