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『介護現場でのアルコール関連問題Q&A』(関西アルコール関連問題学界編/筒井書房)を読む

久里浜医療センターの調査によれば、
65歳以上のアルコール依存症患者は
過去20年以上にわたって増加傾向にあり、
アルコール依存症患者の全体に占める高齢者の割合は、
1990年代は10%未満だが、
2011年には20%以上というデータがある。

そこで、介護現場ではアルコール問題にどう対応しているか知りたくなり、2009年発行と少し古いが、この本を読む。
介護職に役立つよう実践的なQ&A方式で、
アルコール問題への対応のポイントや
アルコール専門医療機関での治療について解説。
アルコール依存症の基礎知識や手記等 も収録。

【介護現場においては、アルコール関連の問題は必ず遭遇する問題の一つ】「居宅介護現場」に限定したアンケート調査から。
<回答者の約8割が、何らかの飲酒問題に遭遇した経験を有していることが解りました。その問題とは、「朝、夕から酒を飲んでいる」「酒が原因で体を悪くしている」「飲んでばかりで食事を摂らない」など、“静かなアルコール問題”が多く、大声出したり暴れたりといった派手な問題は少ない傾向にありました>。
“静かなアルコール問題”ですが、
そのために、問題が表面化しなかったり、
強く介入できないために、
依存症が急速に進行してしまうことがあるんですよね。
 
【飲酒問題への対応についての問題点】
<筋腫や節酒を執拗に働きかけると、迷惑がられたり、時には「もう来なくても良い」とまで言われたり、利用者からの抵抗が生じるため、「踏み込んだ対応」を取りにくい介護職特有の立場も浮かび上がってきました。(中略)飲酒の問題に関する研修の機会があったのは、回答者の約2割でしかありませんでした。実際のアルコール関連問題の大きさから考えると不十分と言わざるを得ません。まずは、基礎的な知識の習得が望まれています。また、地域の介護現場で起こったアルコール関連問題をサポートするシステム、有機的なネットワークの構築が必要であると考えられました>。
その通りですよね。
 
【高齢者のアルコール依存症】
<退職後アルコール依存症になる人が非常に増えています。二つのパターンに分かれます。一つは中年期にすでにアルコール依存症であったが、仕事はなんとかできていて、仕事が飲む時間を制限していたため表面化しなかっただけで、退職後に表面化したパターン。高度経済成長期を支えた典型的なサラリーマンで生き甲斐は仕事であり、趣味といっても仕事上の付き合いの麻雀かゴルフという人が、生き甲斐であった仕事がなくなり、これという趣味もなく、好きな酒を飲むだけの生活を送ってアルコール依存症になってしまったというのがもう一つのパターンです。この高齢者群は、高齢者故に心身ともに脆弱性が高くなっており、アルコール依存症は急速に進行し、短期間でアルコール性の認知症へと移行するため専門機関にたどり着いた時点で、すでに治療プログラムに乗れないケースがほとんどです。
このようなことから、高齢者のアルコール依存症は、疑わしい時にはすぐの介入が必要です>。
その通りですね。
 
【高齢者と自助グループの相性】
<高齢者アルコール依存症は、(中略)非常に症状の進行が速く、加齢と相まって認知症や器質性精神障害に発展することが少なくないため、そうなってしまうと回復に欠かせないと自助グループへの参加ができなくなり回復への道は険しくなります。しかしながら、早期に介入できて病気を理解してもらえた場合は、若い世代より回復率が高くなる傾向にあります。その理由として、自助グループへの参加への拒絶が少ない点があります。高齢者は時代の背景から大人数で一体になって何かをすることに抵抗が少ないため、自助グループは個人主義を好む若者と違って、高齢者にとっての違和感が少ないようです。また、自助グループへの参加は独居の高齢者にとっては新しい人間交流を生み出し、生活に活気を取り戻すという役割も持っているのだと考えます>。
その通りですが、その結果――。
自助グループ。とりわけ断酒会は、“老人会”になってしまっていて……
 
【Q&Aから】①
Q:<ヘルパーです。訪問先の利用者は57歳。脳梗塞の後遺症で体が不自由です。「何も面白いことがないから、せめて酒飲んで楽しくしたい」と言って毎日飲酒し、酔うと暴言があるので嫌な思いをすることが度々あります。事業所の方針で、1日のお酒の本数を決めていますが、買い物の際、「(もっと)酒を買ってこい」と言われて困っています。どうしたらいいでしょうか?>。
A:<アルコール専門病院のソーシャルワーカーです。お酒をコントロールして飲むことができなくなっているようですね。まず、地域の精神保健福祉相談員などと連携してアルコール専門機関を受診できるよう介入していきましょう。(中略)酔っている時には、①その言動に関わらないこと、②素面になってから問題について冷静に話し合うこと、③回復の方法があることを伝えて下さい。また援助者が一人で抱え込まないことも大切です。利用者さんの周囲の人たちが方針を一致して、役割分担をして関わっていきましょう。援助する者自身が、利用者さんのアルコール問題で辛くなる気持ちを援助者同士で分かち合うことも大切です。なお、酒は嗜好品ですので、タバコと同様、原則としてヘルパーによる買い物支援の対象になりません。他の買い物のついでに頼まれても「お医者さんから飲酒してはいけないと言われているので買いません」と伝えて下さい>。
援助者が一人で抱え込まないことも大切。これですね。
 
【Q&Aから】②
Q:<ケアマネージャーです。アルコール依存症と診断されたことがある一人暮らしの66歳の男性は、専門病院を退院後、どこにも通院していません。毎日飲酒しており、酒屋に自分で電話して酒を購入しているので、飲酒を止められません。ヘルパーが用意した食事も食べないことが多く、栄養失調状態です。「自分で助けを求めるまでは手を出してはいけない」と言われますが、このままでいいのでしょうか?>。
A:<専門機関のソーシャルワーカーです。いわゆる『底つき』を待って本人がSOSを出した時に病院へ行くというのが従来の一般的な介入ですが、高齢者の場合、認知障害を伴っていることがあり、その場合『底をつく』ことを待っては、命の危険や更なる障害の悪化を招く場合があります。いつも利用している酒屋には「医者から飲酒を禁止されている人である」ことを伝え、協力を求めてみましょう>。
まったく、同感です。
 

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