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音楽、哲学から湧き出る内なる物語を綴る、心の旅です。

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035_パソコン音楽クラブ「Night flow」

僕は誰もいない朝の公園でひとり佇んでいる。 こんな朝早くに公園にいる人間などちらほらしかいない。ベビーカーで子供連れの若い母親、ベンチで頭をうなだれているホームレスっぽい身なりの年配の男性。車通りのないところにある公園だから、幾分静かなもんだ。 僕の住んでいるマンションは5階で、目の前には、巨大な高速道路が横たわっている。どうしても、朝は通勤やら流通やらで車が高速で行き交いひどい騒音で否応なく起こされてしまう。排気ガスも立ち込めるので、爽やかな朝とは対極にあるようなものだ。

    • 1105_朝の小道

      おそらく、今日は徐々に天候は悪化する。 母親から予想外のメールが届く。 相変わらずスマホのバッテリーはイカれちまっている。 奥歯の具合があまり良くない。もしかしたら、歯周病かもしれない。 朝、3駅ほど前に降りてからの、通勤路を歩きながらとりとめなくいろんなことを考える。 木々はざわめき、電車や車は街に噛みつくように、大きなノイズを立てながら高速で行き交う。人々は相も変わらぬ様相で無関心を装う。 その一瞬一瞬、周囲の状況や周波数のようなは刻一刻と変化して、情報の粒子が自分の周

      • 1104_iPhone

        iphoneのバッテリーがついにイカれてしまった。 100%の充電完了したのに、少しいじっていると電源が落ちてしまって、次に起動した時には強制的に10%になっている。おかげでmobile Suicaで駅に入場したあと、電車に乗って出るときに反応してくれなくて現金を払わざるをえない状況に陥ってしまった。当然、移動中は音楽も動画も楽しめない。 おいおい、どんな罰ゲームなんだ。 確か購入したのが3年半前の2022年の11月。妻が入院してどうにも時間を持て余していたので、ヒビの

        • 1103_羊飼い

          「羊の赤ちゃんってかわいいよなー」 「生まれたばかりの動物はなんでも可愛いのよ」 「次、生まれ変わったら、羊飼いにでもなりたい。草原とかで羊を放牧してるとこをずっと眺めてるの」 「たぶん、あなたの想像する羊飼いとその実際の生活はものすごいギャップがあるわよ」 「そうかな」 「羊飼いって、アルプスの少女ハイジのペーターみたいな、なんかのんびり羊の面倒見てるだけとかそう思ってるでしょ」 「いやまあ、いろいろあるだろうけど」 「そもそも動物相手にする仕事なんて、超大変なんだからね。

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        035_パソコン音楽クラブ「Night flow」

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          1102_ DARK SIDE OF DONUTS

          「あそこ行ってみようよ、公園の横の」 「なに?なんかあったっけ」 「ドーナツ屋さん、すごい並んでるの」 「へえ、そんな流行ってたんだ。知らんかったわ」 「すごい可愛いドーナツ売ってるの。並んでみる価値はありそうよ」 「ほいほい」 「あ、ここ。こんなところにドーナツ屋さんあったのね」 「すごいお客さんね」 「ええっと、このお店、DARK SIDE OF DONUTS? 」 「何?」 「ええっと?ダークサイドのドーナツなの」 「ダークサイド?」 「いや、そう店名に書いてあるから

          1102_ DARK SIDE OF DONUTS

          1101_成長

          「いや、もうなんか自分の下に部下いるんですけど」 「え、マジ?もうおまえ、部下いんの。結構同期の中でも早くない?」 「どうなんですかね。わかんないですけど。しかも、中途採用の年上の人と新人の子2人で」 「じゃあ、おまえがその中間なんだ。上司なのに。大変だね」 「そうなんすよね。んで、年上の部下の人、結構、昭和なんですよ、割と」 「ああ、それは大変だね」 「それで、年下の子は、マジZ世代で令和なんですよね」 「となると」 「真ん中の自分が挟まるんですよ。いろいろ、年上の人にこれ

          1101_成長

          1100_真偽

          「この動画、見てくれよ」 「あーなんすか、どっかのYouTuberですか」 「これ、全部AIで作ったらしいんだよ、本物にしか見えなくね」 「ええ、マジすか?こんなん見せられたらもう誰だって本物だって信じますよ」 「こうなると、もう映像で本物のYouTuberを見た!って言っても、本当かどうかわからんよね。それ、AIが作った偽物じゃないかって」 「えーっと、それって今までは本物だったけど、もしかしたら、これからは偽物が出てるかもしれないってことですよね」 「そうだけど?なんか

          1100_真偽

          1099_白髪

          「あれ、久しぶり」 「おー、先輩、どうしたんすか」 「ちょっとここら辺で用事あったんでね。あーなんか、白髪増えたね」 「ああ、そうっすね。まあ、いろいろあるんすよ」 なんてことない会話だが、久しぶりに会った人から白髪が増えたことを指摘されることが増えた。5年前の写真をふと眺めた時に確かに黒々しているが、今はずいぶんと白い毛が混じるようになっている。 目に見える形で容姿の衰えといったとものを突きつけられているのを感じる。見た目の変化だけではない。最近は人の名前や固有名詞が会

          1099_白髪

          1098_味噌汁

          「はー、おいしい」 「味噌汁って、本当美味しいわよね。なんでこんなに美味しいんだろ」 「海外行った後に日本帰ってきて飲む味噌汁の美味しさったらないわ。ほんとジンワリ沁みるなあ」 「マレーシアにはアサリの味噌汁なんかないからね。ぶっちゃけ、ご飯に味噌汁あればもうそれでよくない?」 「和食はそれでほとんど成立してるからね。あとは、焼き魚と漬物と」 「単純にお腹を満たすためのご飯だったら、毎日食べるわけだから、私はご飯に味噌汁にあればいいんじゃないかな」 「そうそう。家で食べる分に

          1098_味噌汁

          1097_未来の世代

          「この時代、いったい何を信じたらいいんですすかね」 最近、2人目の子供が生まれたばかりの後輩が戦争の状況を伝えるテレビのニュースを見ながら、こうため息を漏らす。 「なに?家族が増えて、急に不安になった感じ?」 「そうかもしれないっすね」 「子供さんの関係?」 「そうなんです、期待より不安の方が大きいですよね、正直」 人生の節目節目で、僕たちは今後の人生の目処をつけるために、これからの世界を予想するものだ。 そうなった時に果たして、今後、この不透明で混乱した世界が、これ

          1097_未来の世代

          1096_良心に従う

          「この花、綺麗だね」 「でしょ。芍薬の花。すごく綺麗ない花よね」 「花がある暮らしって、丁寧な暮らしって感じ」 「丁寧な暮らしねえ。何が丁寧なのか、よくわからないけど。日本人の憧れてる丁寧な暮らしって、また違うわよね。ヨーロッパの田舎暮らしみたいなのかしら」 「ヨーロッパだと、丁寧な暮らしって、英語でなんていうんだろう」 「丁寧な暮らしはね、ええっと、今ググったら、polite lifeとか、mindful lifestyleとか…」 「mindful?まあ、確かにそれもある

          1096_良心に従う

          1095_物差し

          はて。飛行機が音を立てて飛んでいく先の空を眺めて、立ち止まって考える。 なぜなんだろう、いまだに腹落ちしていない。なぜ、自分の人生に納得できていないのだろう。 その答えは単純だ。他人と比較するからだ。自分じゃなくて、他人から見て自分をどう測っているのかを考えているのではないか。 他人と比較するのに、他人と自分とを比べるのに、それぞれの物差しを用いる。物差しの長さはまちまちだし、いろんな方向を向いている。 むしろ、世の中のみんながみんな共通の物差しなんかそもそも持ってい

          1095_物差し

          1094

          余裕がない。 ニュースを見ていて、どこかの市議員が不適切発言をしたり、インフルエンサーがSNSである特定の層を蔑視する投稿をしたりして、批判が展開される。 毎日、枚挙にいとまがないほどの数の炎上ニュースを見ているわけで。あれ、世の中ってこんな感じだったっけなあ、という気がして、隔世の感さえある。 帰省するたびに、姉夫婦は生気がまったく見られない顔をしてグッタリしている。その横で子供ら2人がゲームの奪い合いやらで、散々ぱら騒ぎまくっている。 親は注意しようとする気力も起

          1093

          人生は選択の連続だ。あれもこれも、では、どちらも手に入らない。あれか、これかを考えて、どちらかを選択するのかをきちんと決めなければいけない。 今まで生きてきて、それらを決めるにあたって、どうやら優先順位というものを見誤っていたらしい。 目の前のものだけ、近視眼的に物事を捉えるのではなく、自分にとって長期的にトータルでプラスとなるかの視点で捉える必要があるということに気付く。 そして、その自分の中の優先順位は、自分の価値観と照らし合わせて決めていくものだということも。

          1092

          今まで、仕事やお金が人生で大切だと思ってきたが、どうやらそれらは「生きていくうえで」大切なのであって、自分がどう生きるのかの指針や判断基準として、「信じて」はいけないのだと思う。 よく考えてみれば、自分の信じるものは仕事やお金である、という状態はどちらかといえばそれはさすがにちょっと不健全であるように思う。 「すべては仕事をするために生きている」という人はおそらく、会社への貢献や出世に心をとらわれ、自分の健康や家族との時間を蔑ろにしているのかもしれない。 「すべてはお金

          1091_負債

          「ふー、疲れた、ただいま…」 GWは妻と僕は別々にそれぞれの実家に帰っていた。僕の乗った高速バスは渋滞にはまっていたので、定刻より3時間ほど遅れて到着した。 妻からは、「買い物に行ってきます」というメッセージが入っていたので、今家には誰にいないだろうという前提に、独り言をつぶやきつつ、家のドアを開けた。 リビングの床に自分の荷物を置くて、一息をついたあとに部屋の中に目をやると、ふとテーブルの上にある物が置いてあることに気付く。 掌のうちにおさまるほどの、小石ほどある、