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音楽、哲学から湧き出る内なる物語を綴る、心の旅です。

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035_パソコン音楽クラブ「Night flow」

僕は誰もいない朝の公園でひとり佇んでいる。 こんな朝早くに公園にいる人間などちらほらしかいない。ベビーカーで子供連れの若い母親、ベンチで頭をうなだれているホームレスっぽい身なりの年配の男性。車通りのないところにある公園だから、幾分静かなもんだ。 僕の住んでいるマンションは5階で、目の前には、巨大な高速道路が横たわっている。どうしても、朝は通勤やら流通やらで車が高速で行き交いひどい騒音で否応なく起こされてしまう。排気ガスも立ち込めるので、爽やかな朝とは対極にあるようなものだ。

    • 1080_マレーシア①

      「あなた、NEX乗るの初めてなの?」 「そうだな、そもそも成田に用事はないし」 「じゃあ、初成田、初NEXってことね」 いや、実は成田ははじめてではないんだ。札幌に発つ昔の恋人を成田空港から、見送ったことがある。でも、それも18年も前の話だし。 その時、どうやって成田空港まで辿り着いたのかってことは、正直、あまり覚えがないのであった。 「今日は晴れててよかったね。今日は東京も暑くなるんだってね」 「しっかし、それ以上にマレーシアは暑いんだろうね」 「クアラルンプールは3

      • 1079_西加奈子「サラバ!」②

        「サラバ!」とは。 タイトルから、本の内容が容易に推察できない。それは都合のいい時もあるし、悪い時もある。読んでみたら、あ、このタイトルしかありえないなっていうものもあるし、なんでこれなん?っていうのもある。 でも、読み出したらすぐだった。タイトルの先入観とか関係なしに、すぐに物語の中に深く没入させてくれる。そう、これはあれだ。読んでてドライブがかかる本だ。クイっと生で飲むように、読み出したら止まらない、ある種のそういう類の本。 文庫本で上中下で3冊あっても、上巻の途中

        • 1078_西加奈子「サラバ!」①

          妻から、これ面白いよ。と手渡されたのが、西加奈子「サラバ!」だった。 妻は、よく本を買ってくる。子供の頃から読書家だったらしく、妻のお母さんからも「この子はいっつも本ばっかり読んでた」と言われていたらしい。 小学校のときに、いかにも本ばかり読んでいた本の虫的な女の子は確かにいたが、その娘と妻のイメージはまるで合致しない。 それに、大人になった妻本人は、そもそもそこまで読書に頓着している様子はない。「まあ、暇なら読むかなくらい」っといったスタンスで、根っから活字中毒である

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        035_パソコン音楽クラブ「Night flow」

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        • フジロックの配信を見た人々
          8本
        • 星新一と鱒寿司
          5本

        記事

          1077_朝ドラ

          「はーい、そろそろ出るわよ」 「あー、ちょっと待って、今7時58分でしょ」 「なに、会社行かないの?」 「いや、ほんのちょっとだけ5分くらい待ってくれないか」 「やることでもあんの。洗濯物はもう干したわよ。お昼のおにぎりも握ったし」 「いや。実は8時からNHKの朝ドラのオープニングが見たくて」 「朝ドラ〜??あの猫に小判的な名前の?」 「虎に翼ね」 「伊藤沙莉目当てで?演技派だから」 「残念ながら、外れだ。伊藤沙莉目当てではないのだよ。そもそも、そこまであの子は格別可愛くはな

          1077_朝ドラ

          1076_バッテリー

          「もしもし、三ノ瀬か?」 「ああ。実は今、3高前のグラウンドの前で1人で飲んでんだよね」 「この時間に?」 「来れる?」 「ああ、わかったよ、ちょっと待ってな、10分くらいでいくから」 そそくさと上着を取りにリビングを出ていく様子を見て、妻が呆れた顔をした。 「ちょっと行ってくるわ」 「こんな時間に?わかった、三ノ瀬さんでしょ」 「そうだよ」 「あなた、あの人の誘いだったら、ホイホイついていくのよね。まったく都合のいい女みたい」 「ハハ」 妻のご機嫌を取りつつ、苦笑した。

          1076_バッテリー

          1075_ご両親への挨拶

          週末、海外への友人へのお土産を用意する目的で買い物に出かけていた。コロナになる前に、昔よく来ていた表参道のカフェに通りかかったので、久しぶりに入ろうかという話になった。 そのカフェは、店の中庭部分にあるテラス席の周りには水が張ってあって、優雅な雰囲気だ。外国人受けするのか、その日もデザイナー然したようなオシャレな白人のゲイのカップルが座っていた。 その向かいの席が空いていたが、テーブルの上に「Reseved」の札が掲げられている。誰かがやってくるのだろうか。仕方ないので、

          1075_ご両親への挨拶

          1074_罠

          長期的に害悪になるものは、自分の意志で離れた方が良い。だいたいそういうものほど、最初の参入障壁が低かったり、依存しがちなものだったりするので、余計である。 だが、それができれば苦労はしないのであって、できることは、まずその対象が何なのかを知るのが重要である。 伝統的にアルコール、タバコ、薬物、砂糖など高カロリーな食品、パチンコなどのギャンブル。最近では、インターネットポルノ、課金ゲーム、SNSのいいね、などさまざまである。 時代の変遷により、生まれては消えていくが、往々

          1074_罠

          1073_死んだ魚の目

          無用に上司に詰められた場合には、明らかにやる気をなくして死んだ魚の目をするようにしている。 そうすると、上司は「不必要な仕事をさせて、部下のやる気を削いでいるんじゃないか」という気になって、途端に態度を軟化してくる。 だがこれは、普段から死んだ魚の目をしていると効果はない。ただ単に覇気がない奴だと思われる。 普段は良いリアクションをしておいて、フットワークが軽い感じを出しているのに、ここぞという時に、明らかに態度を変えて、死んだ魚の目をして、ため息をつく。 そうなると

          1073_死んだ魚の目

          1072_受け取り方次第

          「そんなことやっちゃダメなんじゃないですか」 「いや、そんな、やれとは言ってないですよ。だけど、みなさんちゃんとやられてて、真面目だなあと」 「真面目ってなんですか」 「ああ、はい、わかりました。わかりました。私の言葉が理解できない人はこれまで通りのやり方をされていてもらえればいいです。」 「なんなんですか、あなたの言葉通りにすれば良いってことだったんじゃないんですか」 「いや、だからですね、今の私の言葉の裏というか、意図を汲めないようであれば、それであればこれまで通りやっ

          1072_受け取り方次第

          1071

          「本当にアイツは頭がキレるなあ」 「いつも、キレッキレだよな」 そう言われていた同期のAの姿を本社で見なくなって、久しかった。どうやら、長期で休んでいるらしい話は聞いていたが、その理由は知れなかった。 「人事部付」 同期の名簿が更新されて、現配置名がそういう記載なのであれば、必然的に察するしかなかった。やっぱり、メンタルダウンでもしたか。しょうがないのかな、あんなに優秀な奴だっていうのに。 もともと積極的に人付き合いがするたちではなかったが、Aとどこか気があっていたBとい

          1070_本当に大事なこと

          みんながみんな、政治家、芸能人や著名人の炎上を騒ぎ立て、毎日のネットニュースの話題提供にことかけない。しかし、なぜここまで、ネット炎上が巷に溢れているのか。 それは、メディア全体で炎上を騒ぎ立てることで、「本当に大事なこと」から目を逸らさせているからじゃないかと思う。 じゃあ、この「本当に大事なこと」ってなんだ、ってことになるのだが、ここで僕は別に陰謀論の片棒を担ごうとしているわけではない。 「本当に大事なこと」は文字通りの意味であって、何かを比喩的に表現したものではな

          1070_本当に大事なこと

          1069_ファミコンカセット

          いつもどおり週末の朝のランニングのあと、公園の朝のフリマをブラついていると、大量のファミコンカセットとファミレーター(任天堂の正規品ではないファミコン互換機)が売りに出されているのが目についた。 5,000円と書いてあったので、てっきりファミレーターの値段かと思ったが、なんと数十本あるファミコンカセットも含めての価格だという。昔、夢中になってやってたドラクエ3にロックマン、忍者ハットリくんやゲゲゲの鬼太郎もある。これには思わず、心が動いた。 「安いなあ。買っちゃうかあ。あ

          1069_ファミコンカセット

          1068_米津玄師「さよーならまたいつか!」

          朝の連続ドラマ小説が、日本初の女性弁護士をモデルにしたものらしい。米津玄師の主題歌も気に入っている。春の朝、早足に桜の木々の通りを通って、出勤してきた職場で聴く彼の歌声に心が踊る。 さて、私は4月に親族のツテで法律事務所に事務職に転職することになった。 おかげで、仕事柄、弁護士だとか、法曹関係者と話す機会が増えた。言うまでもなく、法律にめちゃくちゃ詳しい人たちである。 私は経済学部卒で法学部でもないし、法律や条文と聞くと、「堅苦しいなあ」と思って、ナンチャラ法第マルマル

          1068_米津玄師「さよーならまたいつか!」

          1068_目的と手段

          事実上の無職(事実上も建前上もない。会社から要らないものされていることについていえば変わりはない)になってから、毎日、家の近くの図書館に通い続けている。 やることもないので、きちんと毎日のルーティンに組み込まないと、途端にダラけた生活になってしまう。これまでには、仕事という抗えない「自分ではどうしようもできない、仕方のないもの」が自分のなかで存在していて。それによってある程度、律されていた部分があったのだと思う。 そこで、自分に対しての何かしらの強制力のようなものがあった

          1068_目的と手段

          1067_道半ばで

          あと、もう少しだから、と達すべきゴールを明確にしてしまうと、途端にやる気がなくなってきてしまう。まだ、こんなにあるのか、とため息が出てしまう。 目隠しをされて、全力疾走をしていた時のほうが、何も考えなくていい分、楽だったのかもしれないな。人は選択肢があると、逆に幸福度が下がってしまうこともあるらしい。あまりにもジャムの種類が多すぎると困ってしまう主婦のようだ。これも、悲しき人間の性というのか。 ここまで頑張ろう、とか思っていたのに。ふとした瞬間、やっぱりやる気が削がれてし

          1067_道半ばで