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1099_白髪

「あれ、久しぶり」
「おー、先輩、どうしたんすか」
「ちょっとここら辺で用事あったんでね。あーなんか、白髪増えたね」
「ああ、そうっすね。まあ、いろいろあるんすよ」

なんてことない会話だが、久しぶりに会った人から白髪が増えたことを指摘されることが増えた。5年前の写真をふと眺めた時に確かに黒々しているが、今はずいぶんと白い毛が混じるようになっている。

目に見える形で容姿の衰えといったとものを突きつけられているのを感じる。見た目の変化だけではない。最近は人の名前や固有名詞が会話の中で出てこないことも多くなった。着実に老いは自分の存在を蝕んでいることは間違いなかった。

昔は早く大人になりたかったから、歳を取ることが待ち遠しくてたまらなかった。まあだがそれも20歳までの話であって、そこから先は「これから決して自分の体が上向くことはない」という状況が続いていくことになる。

そして、気付いてみれば中年を超えて初老を迎える歳となり、自分が昔の自分でないことを思い知って愕然となる。

だが何よりショックなのは、見た目の変化だとかわかりやすいものに心をとらわれていて、自分が歳をとっていくことに真に腹落ちしていない事実だ。心の底から自らの老いをきちんと受け入れるまでには、まだずいぶんと時間がかかりそうである。

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