虚構の真実【後編】 貝澤駿一
前回の記事(虚構の真実-前編)では、文学的〈虚構〉をテクストがそれ自体〈虚構〉的にふるまうものであると考えるテリー・イーグルトンの理論をふまえ、逆説的に〈虚構〉を〈真実〉であるかのように見せる作家の権力性にまで話が及ぶことになった。こと短歌作品においては、テクストは〈真実〉としてふるまうべきだという一種の信仰のようなものも認められ、その信仰によって〈虚構〉的であると価値づけられた作品に対する論争もしばし巻き起こっている。しかし、テクストの〈虚構〉性をあくまで文学的に解釈するの