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逆噴射小説大賞2023ライナーノーツ
逆噴射小説大賞2023、二発とも二次選考を通過した。
ハイパー名誉。
いろんな方に読んでいただいてありがたい言葉もたくさんもらった。
超嬉しいので人もすなるライナーノーツというものをしてみようと思ったが、何しろライナーノーツという言葉を知ったの自体が逆噴射小説大賞に投稿するようになってからであり、今まで書いたことなどほぼない。そして脳の棚が痛んでいるので昨日の昼食を思い出すのも危うい有
一方そのころ、残りの1/2は
七階のヴィレヴァンに行くために乗ったエレベーターの操作パネルに「HELL」と書かれたボタン一つしか無いことに気づいた瞬間、榎本はすぐさま外に飛び出ようとしたが一瞬遅く、無情な勢いで閉じた扉に挟まれて胴の真ん中からまっぷたつにされた。それと同時に押してもいないのにHELLボタンが薄オレンジの光を灯し、エレベーターが降下し始めた。俺は切断面からはらわたと血をぶちまけた元榎本1/2と共になすすべなく地
もっとみるアローン・イン・ザ・メイズ
観音開きの金属扉をくぐった先は映画館だった。暗い館内には椅子が幾列にも重なり、スクリーンではトラックと小型車がカーチェイスを行っていて、すぐにトラックが爆発炎上した。無事だった方の車に乗っていた男が何かを叫ぶ。知らない言葉だ。下には字幕が表示されていたが、斜め線と丸とを組み合わせたようなそれも知らない文字だった。足下に気をつけながら横に歩き、緑の光が点る非常口から出た。扉を閉める瞬間に再び爆発音
もっとみる『紋白蝶厨子』(1970) 狛江柊三作
タマムシの羽で飾られた厨子は玉虫厨子、モンシロチョウの羽で飾られた厨子は紋白蝶厨子。すっきりした理論であり特に疑問を抱くようなところはない。疑問があるとすれば、そもそもそんなものが実在するのかということであるが、これは実際に存在する。美術作品――ということになろうが、大して美しいものでもなく、全体的にぼんやりとした色合いと質感で、むしろ漠然とした嫌悪……虫という存在そのものに対する嫌悪と、このよ
もっとみるフルニエ著『アウゲイアス王の家畜小屋における不快な虫けら共の断罪と救済についての悲喜劇(全三幕)』をめぐる悲喜劇
「ヘラクレスの12の難行を全部言えるか?」
言えないだろ、という言外の意図を内包したミトさんの質問にコナチはあっさり答えた。
「言えますよ」
当然でしょと言わんばかりの口調にミトさんが明らかに不機嫌そうに黙る。そりゃコナチなら言えるだろう。ギリシャ語の原典を読めるくらいなんだから。しかし空気は読めない。
「いや、言えないすね。獅子退治とヒドラ退治くらいは覚えてますけど」
とりつくろうようにおれがそ
二度目のプロジェクトは一度目のそれを凌駕するか
「縦に高く積んだ積み木ほど、崩した時に広範囲に拡散する」
そう言いながらマリーは自分の身長よりも高く積み上げた北欧製の積み木を実際に崩して見せた。やかましい音と共に、色とりどりの数百のピースがリノリウムの床一面にとっちらばる。一番遠くまで転がった円柱型のひとつは、20mも離れた壁際まで転がってそこでやっと止まった。
「物理だ」
「物理だな」
「つまりより広範囲に拡散させたいと思うなら、より高く積