辛い麺メント
辛い麺メントをしよう。と思ったのだ。
思ったはいいんだけど、困ったことに私に辛い麺を食べる習慣がない。担々麺すら一度も食べたことがないありさま。
辛い物がそこまで得意ではない、というのに加えて、食においては保守派も保守派、ラーメンならどこに行こうと基本は醤油ラーメンで、あっさりとこってりが選べるなら常にあっさり。31アイスではポッピングシャワーもコットンキャンディも選ばずジャモカコーヒーとバニラ。ポテチはうすしお。そんな人生。(ただし果物は果物である時点で最低限度のおいしさが保証されているので全てチャレンジする)
だがこの機会を逃せば、次に辛い麺にチャレンジしようと思い立つことなど無いかもしれない。
ので、やる。
それ以前にそもそも食レポをしたことがないという問題もあるけどそれはどうにかなるだろう。
ここまで辛い麺メントにふさわしい店名もなかろうということで一店目はこちら。なんかあちこちに支店があるので間違いなかろう。数は力なので。
では今までに経験のない新しい味に……辛醤油あるの? じゃあそれで。辛さのランクが選べるらしいのだが、なんか上の方が天井知らずになっている。三辛までと四辛からで値段が違うので、まあなら四辛くらいにしておくかな。冒険はしない。
届いた麺は確かに赤いものの、においで目が痛くなる……とかそういうことは全くないのでまずは一口。
うまい醤油ラーメンにうまい唐辛子を入れた味がする。
馬鹿の感想なんだけどそれ以外に言いようがない。食べた瞬間から、このラーメンは辛くなくても絶対にうまいな……というのがわかる味をしている。麺が中太ちぢれ麺だという時点ですでに+30点されているが、スープの方にもおそらく野菜由来だと思われるコクがあってうまい。唐辛子についても単純な辛さだけでなくみずみずしい……ボタニカルなうまみがあるような気がする。壁に「うちの唐辛子はすごくイイ唐辛子」ということが書かれているのできっとそう。
相当に辛かったが何ら問題なくおいしく完食。ごちそうさまでした。これは五辛くらいならいけたんじゃないかしら。
後日、再び店に行きスパイスラーメンにチャレンジした。さすがに辛醤油ラーメンでは新しい扉を開いたと言えないし、スパイスラーメンってカレーラーメンとどう違うんだ、という疑問もあったのでちょうどよい。
ちょうど昼時に入店。前回は平日二時にほぼ満員だったんだからこの時間帯ならよほど混んでるだろう……と思ったら誰も並んでない。アレェ? と思って中で食券を買ったところ、裏口に並んでくださいねと告げられる。なるほどね。
辛さは中辛で。冒険はしない。しばしの後着席。無辛を頼む人もちらほらいる一方、隣の人は14辛だという正気ではない量の唐辛子がかかった麺を平然と啜りこんでいた。妖怪?
そんなこんなしているうちにスパイスラーメンが到着。啜る。
……スープカレーだ。かなりうまいやつ。味噌が入ってるらしいが隠し味程度にしか感じられず、ほぼカレーラーメン。
おいしいんだけど全然辛さが足りんなあ……と思っていたが、スープを口に運ぶと辛さを含む味の全てがランクアップした。どうやらほかのラーメンと比べると麺にスープが絡みにくいらしい。スープと麺とを同時に啜るようにすると相当な辛さが来るが、それがまたいい。ただどうしても脳内にコメの姿がちらついてしまう。
麺を少なめにしてでも小ライスを頼むべきだったな……と思っているうちに完食。ごちそうさまでした。
辛い麺、というと味噌ラーメンのイメージがあるので、辛い味噌ラーメンも行っておこうとこちらの店をチョイス。辛味噌ラーメンは四段階なので、ひとまず二辛を頼んでみた。
到着した麺には確かに唐辛子が乗せられており、いつもの味噌ラーメンとは違う……が、さほどの量ではない。これは……辛くないのでは……? と思いつつ一口。
まいった。すごく美味いけれどやはり全然辛くない。もともとこの店の味噌ラーメンはクセがない上に塩気がとがっておらずどこまでもまろやかなのが特徴なのだが、辛さがそのまろやかさの中に完全に包み込まれてしまっており、相当遠くの方にしか感じられないのだ。
これではただの麺メントだ。確実に3辛の方がよかったな。超辛でもギリいけたかもしれない。
とはいえ満足して完食。ごちそうさまでした。
さて最後は担々麺である。辛い麺の実績解除が目的なのだから、担々麺を避けて通るわけにはいかない。さいわい、手近なところにかなりの有名店があるのでどこにするか迷うことはなかった。
よくふらふらする辺りに店があり、昼食ごろにふと視界に入ると大体行列しているのでずっと気にはなっていたのだ。
選択したのは白ゴマ汁アリ担々麺。おすすめはシビれ1の辛さ1だという。ならばそれを……いや……。
「シビれ1の辛さ2で」
ここまでチャレンジしてくればわかる。そのくらいの辛さならいける。
平日の3時なので店内には二人しか客がいない。待つほどでもなく運ばれてきた丼は見た目がもうかなり辛そうでやや後悔する。具はひき肉と水菜とカシューナッツ。麺にナッツ? 知らない文化だ……。
覚悟を決めて啜る。
あれっ。思いのほか辛くない。食べ進めるうちに辛さが後追いでやって来るのか……と思ったがそうでもない。ほどよく辛く、うまい。
さほど熱くないのに加えて麺が柔らかめで啜りやすくそれほど主張してこないので、辛い中にも鶏の味が感じられるスープの実力が前面に出てくる。今までの辛い麺が「元からうまい麺に辛さをプラス」みたいな料理だったのに対し、これは辛さが前提になっている麺だと感じる。もちろんどっちがいい悪いではなくタイプの違いだ。
具も当然美味で、意味の分からなかったナッツも、柔らか麺にちょうどいいアクセントを加えてくれている。
担々麺は……おいしいものだな……。
というか多分この店がうまいだけだと思うのだが、大変満足。ごちそうさまでした。
いろんな辛い麺を食べてみたが、結果「全部うまい」という大泉洋風の感想しか出てこなかった。自分が食レポには向いてないことがよく分かった。
でも全部うまいって生としては大成功だから全然OK。全然辛い麺じゃないじゃん! と思われるかもしれないがそこはホラ……ほんとに辛い物は……ツワモノにまかせたいじゃないの……。
明日はメサイア・オブ・ザ・デッドが令和の御世にもなってから劇場のスクリーンにかかるというちょっとした奇跡を確認しに行く。サツゲキ周りの狸小路にもまだ知らない麺屋はたくさんある。今の私なら今まで気にも留めなかった辛い麺も選択できる。
まあでも醤油ラーメン(あっさり)があったらそっちを頼んじゃう気がするのだけどそれはまたそれだあね。
では。