2023年 新人ブログ⑨ ベテラン編集者インタビュー〈行政分野編〉~ターニングポイントは「研修」?~

皆さん、こんにちは。入社2年目のNです。
先週に引き続き、今回もベテラン企画者にインタビューしてまいりました。
今週は、行政実務書ご担当のMさんにお話を伺いました。
 
実務書の企画という仕事についてもっと詳しく、深く知りたい皆さん必見の回となっております。
行政分野にご関心がある方もぜひ参考になさってください!
  

行政分野の特徴

  
――さっそくですが、行政分野の特徴は何だと思われますか。
 
読者の仕事内容が幅広いことが特徴です。
公務員(自治体職員)と一口にいっても、自治体の仕事は多岐にわたり、人事異動が必ずあります。生活保護のケースワーカーをしていた人が、急に自治体のデジタル化を担当する部署に行ったり、財政課で予算を担当することになったりして、異業種への転職に近いともいわれます。
 
学陽書房が扱っている行政以外の2分野(教育・法律)の読者は、あくまで教師であれば、担当する学年の違いはあっても、学級担任として子どもたちに教えることには変わりなく、弁護士でも、専門分野などの違いはあっても、依頼者を弁護するという点では同じです。
 
行政分野の場合は、公務員という幅広い仕事をしている方々が読者なので、読者の仕事を理解したうえで、ターゲットを絞った企画を考えたり、反対に部署を問わず共通してニーズのある企画を考えたりする必要があります。

専門知識は要りますか?

 
――その幅広さを理解していくためにはやはり勉強が必要だなと思いました。実際に、よく学生さんから「専門知識は必要か?」という質問が寄せられます。きっと皆さん不安なのだと思うのですが、Mさんは専門知識についてどう思われますか?
 
いりません!
 
――即答ですね(笑)
 
全くとは言いませんが、入ってから少しずつ覚えていけば十分です。
私自身、恥ずかしながら大学で地方自治は一切勉強していません。
それでも十分やれますし、今学陽書房にいる企画者の中では、担当分野を勉強してきた人のほうが少ないと思います。
 

編集の楽しさ

 
――心強いメッセージ、ありがとうございます。次も就活生からの鉄板の質問の一つです。編集の仕事をしていて、楽しい瞬間は何ですか?
 
企画を思いついて、企画書を書いてるときが一番楽しいかなと思います。
本作りは最初の工程が一番大事で、良い企画書が書ければ売れると思っているので。
 
私はどちらかというと、テーマやコンセプトを先に考えるタイプなので、それでうまく著者がはまって、「これはいけそうだな」という企画書が書けたときはわくわくします。
 
あと、自分の期待を超える原稿が出てきたときは、「やっぱりこの著者に頼んでよかったな」と思います。

大変なこと

 
――では反対に大変だったことは?
 
いろいろありますが、売れる本を作れるようになるまでは、大変でした。
最初の頃は、読者ニーズをきちんと意識できていなくて、どこか自分の仮説と著者の方の考えだけで作っていたようなところがありました。
それでは当然、数字が上がらなくて。
「売れる本じゃなくても、“良い本”が作れればいい」と強がっていたような頃もありましたが、やはり売れる本、多くの人に読んでもらえる本は、それだけ多くの人に役立った“良い本”です。売れたほうがいいに決まっているわけで、もどかしい思いがありました。

編集人生におけるターニングポイント


――そんな状況を変えるようなターニングポイントはあったんですか?
 
30歳の時に1年間営業部研修に行ったことでしょうか。
学陽書房では、編集者が30歳、40歳、50歳になる節目に、書店の現場を改めて学ぶという意味で、一定期間営業部で研修を行うことになっていますが、私はその制度の第1号だったんです。
編集者の営業研修は、今は2か月ですが、私の場合は1年間でした。
 
――1年! 研修としては長いように思います。どんな発見があったのでしょうか?
 
書店で他のジャンルを知ったことで、いろいろな発見がありました。
営業研修に行くまでは、書店に行っても教育実務書などはほとんど見ていませんでしたが、いろいろな書店での販促を経験して、教育分野と行政分野の一番大きな違いとして、いわば季節商品があるということに気づきました。
春なら学級経営、夏は授業づくりとか、また学期末の少し前には通知表の本が売れます。
そうした季節商品は、定番本になると、その後毎年その時期にしっかり売れてくれるんです。
そういう本を行政分野でも作らなければ、という意識に変わりました。

そこで、営業研修をしながら、公務員にとって毎年読者が生まれる要素を考えたときに、「人事異動のときには、必ず新しい仕事に関する知識が必要になる」と思って、編集に戻ってから、『自治体の法規担当になったら読む本』という本を作りました。
その後、「財政担当」「議会事務局」などを作り、今は他の若手も別のテーマで作ってくれて、10冊以上のラインナップのあるシリーズになったので、よかったなと思います。

現在の目標


――学陽書房の人気シリーズ『~担当になったら読む本』の原点はMさんの営業研修だったんですね。貴重なお話をありがとうございます。
では最後に、目標について質問です。2年目の私は、企画書を書けるようになることが目標ですが、Mさんは、今どんなことを目指しているのか気になります。

 
自分の作る本だけじゃなくて、会社全体の本の質を高めることに貢献できればと考えています。
私は、上司や先輩から、編集や売れる本の作り方について、たくさんのことを教わって育ててもらったので、自分が教わってきたことを同じように若い人に返していかないと、と思っています。
また、自分なりに試行錯誤して得たものも、若手に指導やアドバイスすることを通じて、会社全体の売上が上がるようにしたいというのは、目標の一つです。
 
あとは、公務員の方が本を書きたいなと思ったときに、「学陽書房のMに相談してみようかな」と思ってもらえるくらいの信頼を得られたらなと思います。
ただ、前に出て名前を売りたいという承認欲求はないので、いつの間にか、口コミで広がって、そんなことになったらいいな、と思う程度ですが。
 
――Mさん、ありがとうございました!
「会社全体の本の質を高める」という目標は、若手の指導にも携わっているMさんならではだなと思いました。たくさん吸収できるよう、頑張ります!

 


いかがでしたか?
先日の記事でインタビューした若手編集者とはまた異なる視点や経験が語られ、皆さんが想像する「編集」の仕事に奥行きが出たのではないかと思います!
 
就職活動のお役に立つことができたら幸いです。
次回もぜひご覧ください!