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ミッドナイト・エクスプレスと尊厳破壊

古い映画を見るのが好きでよく見ます。今回はミッドナイト・エクスプレス。なぜなら
ヘッダ画像をお借りしています。

なぜならもなにもガチ目に古かったからですね。ノートの利用者の大半が生まれていないんじゃないだろうかと思える。じゃなかったらごめんなさいね。ぼくも死んでいた頃なので知らない。

あるものを描写する際に「変な位置にある、悪目立ちしてると一般的・客観的にに思えそうな位置」に焦点を当てて話すのはマジで好きじゃないんだけど、この映画は先駆的であり、多分当時にしては凄まじい描写のオンパレードであったりする。

それは自業自得なんだけど異国で捕まった哀れな男の尊厳がいかにして失われていくか、その尊厳を奪い取るトルコという国の残忍さ……といいますか野生衝動的に何も考えていなさ、まるでホッブズがリヴァイアサンで言うところの自然状態、どいつもこいつも「自分の利得」しか考えようとはしない、という「自然状態」がこと刑務所ないでも横行、蔓延しているところにある。

残忍な描写……といいますか人とはここまで人に対して適当に当たれるのか、失礼なことができるのか、、と。

ガチで両国の関係が悪かった時に作られた映画らしいので、多分このトルコが今の支那だったら今はリリースできるんだろうか?ハリウッドなら別に普通のことか……中国国内ならばまずこの映画を作ろうとした時点で秘密警察に消されるのでしょう。なんと子供じみた国なのだろう。事実を伝えようとすると殺すなんて子供以下なのか?そのような国が現代にある事が恥ずかしい、と向こう側の仮想世界に生きるぼくはモニタを通して思う。

この映画の感想をたぐっているとほぼほぼ主人公の恋人が面会に来て、何とかして牢獄から出るための金を持ってきてくれたにも関わらず正常な判断ができなくなっている主人公はその恋人にガラス越しに生の胸部を見せてくれるように頼み、一旦は渋るんだけどあまりにも可哀想になったのか従う恋人の様を見ながら射精するシーンが挙げられている。

確かに印象的だろうし、16禁になるのも分からなくもない。しかしながらおっぺぇヤッホーというよりも、ここまで正常な判断ができなくなってしまったのかと主人公に対して想い、恋人の献身について思わずにはいられない……気がする。

つまりは獄中であるのになんてことをしとんねん、みたいなことでしょうか。人間の尊厳がここまで落とされたという描写について精一杯がんばった結果がこの表現であるような気もする。仲間の二人も尊厳が破壊された。念入りである。意味不明な像の周りを歩いて回転する人たち、四肢がない人達、ぼくは刑務所とは何らかの働きをさせられる場だと理解しているのだが、この人たちは普段はなにをしているのだろうか。こんな状態では働きなどできるわけがない気がする。友達のうちマックスじゃない方は下半身にとてつもない拷問をされて療養所で結局死んだらしい。マックスは友達が声をかけても反応できなくすらなってしまったようだ。

こういう感じの尊厳破壊、人が人でなくされていく描写はその後、日本のエロゲーとかエロゲじゃなくてもゲーム、物語や漫画とかでも見られるようになった気がする。尊厳破壊のきもとは(そんなきも知りたくもないのだが)もう元の形には戻れないあたりにある気がする。せめて元の形に戻れたのであれば、尊厳が破壊される前の幸せを再度享受できたのに、と。

それが絶対にかなわない形に主人公なりヒーローヒロインの姿を変えてやろうとする尊厳破壊が、ミッドナイト・エクスプレス前後で爆速的に流行っていったのではないだろうか。つまり皮肉なことにミッドナイト・エクスプレスは始祖ゆえに後世に比べるとその尊厳破壊のさまが甘いわけです。

だってやれ肉体と神経が切り離されて植物状態にさせられて性的快感だけを味合わされ続けるだの、やはり手足をどうにかされて赤子の格好をさせられて永遠にばぶばぶ言わされるだの……どこまでやれば気が済むのかというような尊厳破壊が横行する羽目になった。でもミッドナイト・エクスプレスには救いがあり、その救いを救いたらしめるために入念に主役と主役に感情移入する視聴者の心を折っていく。だけどこのように後世のより残虐な尊厳破壊を目の当たりにしてきた者にとって、ミッドナイト・エクスプレスは純文学の文脈のように伝わるのだろう。


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