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レプタイル(蜥蜴/reptile)で数十年後のベニシオ・デル・トロを見た

数十年後とはユージュアル・サスペクツの数十年後である。ヘッダ画像をお借りしています。

https://note.com/fuuke/n/nab3877ad086a

note.com/fuuke/n/n97502ab67503

ユーサス(ユージュアル・サスペクツ)についての感想は上に書いたつもりでアメリカン・ビューティの感想だけになっていた。先にユーサス見てからアメビュに移ったので、ユーサスはケヴィン・スペイシー像の形成のもととなっている。

ケヴィンのヴァーバル・キントは、その気弱そうな風体をしているくせに実は……とか、体に不自由がある感じは後の日本のゲームMother3に強い影響を及ぼしたほど、ユージュアル・サスペクツ自体が凄まじい映画であるとぼくは考える。

そしてユーサスにはベニシオ・デル・トロが出ていた。在りし日のベニシオ・デル・トロは信じられないほど若かった。ガチでレプタイルのベニシオとは別人である。ぼくはなぜレプタイルを見る前にベニシオ・デル・トロがユーサスに出ていたチンピラだ、と気づけたのだろう?もっとも、それぐらいユーサスは好きだという下地があるのだけど。

ユーサスのベニシオは絵に書いたようなクソガキっぽさがあり、言っちまえば香田晋みたいなガチ三下とかレベルのチンピラ感だった(香田晋が三下だというわけではなく、彼が普段演じているような役柄がそうであり、当該イメージを総称してこのようになる)。あ、さっさと死ぬだろうなと思えるほどである。

実際後先考えず、なりふり構わず話を狂言回ししてきそうだなこいつ、という嫌な目で見ていたと思う。5人が捕まるシーンでのあのアドリブでの大爆笑がまんま本番で採用されたというあのやり取りがなければマジでそれだけで終わりだった。

逆にあのシーンがないと5人に愛着が持てなかったりすらしたのではないだろうか。NGシーンがそのまま入っている映画なんて他に知らない。

reptileとは爬虫類という意味らしいが邦題があっさりと「とかげ」になってしまった……なぜだろう。言葉をジャンルから名詞に単純化するという行為にはターゲット層を集中化するという意味がある。ターゲットとは軍事用語なので本来マーケティング上で使うべきではないのだが、「この映画を刺すべき層」を絞るために蜥蜴という題名には何らかのよい意味があると推察される。

だってまるで邦題だ。ベニシオ・デル・トロのイタリヤンだかスパニッシュだかの雰囲気からまるで離れている気がするのだが―――くだらない憶測をするのであれば、ベニシオ・デル・トロが活躍したユージュアル・サスペクツの30年前に映画を全力で楽しんでいた層が現在50代~60代以上だとするのなら、たしかに蜥蜴という名前は刺さる気がする。しかしその程度だ。

サスペンスでありクライム……その題名に「蜥蜴」はものすごく安直に思える。

reptile

なんも悪くないじゃないか?

ベニシオのかつてのユージュアル・サスペクツでの立場とも真逆だった。フレッドフェンスターはカイザー・ソゼを恐れ軽薄に逃げ出してしまい、おそらくソゼに呆れられ、情けないと思われ惨殺された。最初に退場してしまうような役割だった。上記で抱いたぼくの感想そのままの男でしかなかった……とまでは思ってないが、そう思っている人がいてもおかしかないんじゃなかろうか

しかしながらレプタイルでは、最大の悪を暴いた上にユーサスのように取り逃がすこともなく、殺したり何だったりをして捕まえた。こう見ると真逆ですね。

ベニシオが軽口を叩く前半はまるで彼が警察官だとは思えないほどの軽快さであり、かつてのフェンスターすら思い起こさせるのかもしれない。

だがベニシオはレプタイルにおいてガンガンひどい目に遭う……といいますか後から色々明かされる。前職場で相棒の不正を告発したが実はもっとその不正の利益を受けてた連中がいたのにそっちは黙ってたとか、妻が異様に良い体をしていて、若い水道業者に粉をかけられていたり、意味不明な一時停止違反を咎められたり、いくら地元警察だからと勲章の状況まで知られていたりなんかクライムもの、ネオノワールもののアレなのかも知れないけどパラノイアめいた心情を主人公に強要してくる。

正義を調べていたのに勝手に追い詰められてくるベニシオ・デル・トロ……という構図はユーサスに似ているかも知れないが、終わり方がまるで違うところは良いことなのでしょう、と思う。

ベニシオは脚本だか舞台設定だかのディティールにまで細かく関わっており、まさかそれぞれの人々の通勤方法とか趣味だとか(最初の犯人だと思われてた奴が女の立体造形を造っており、その髪を表現するのにバスで全く知らない女の後ろの席に座り、こっそり髪を切り落としたりして奪うみたいな本筋に何ら関係ない趣味がある)まで決めていたとは気づけない。だがベニシオとはそこまでの映画関係者になったのだと驚かされる。

めっちゃいい雰囲気のネオノワールだという評判だが、続編は作らないとされている。監督はMV監督が普段の生業だそうで、造るならまた別のひとつを造りたいみたいでした。

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