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2019年2月の記事一覧

「死ぬかもっ」ってホント怖い 後編

「死ぬかもっ」ってホント怖い 後編

前を走るトラックのテイルランプを頼りに
高速道路からなんとか降りることが出来た。

しかし、周りがまったく見えない状況に変わりはなかった。
このまま前のトラックにビッタリ付いて行けば、道から外れることはないかもしれない。
そう思った矢先に、無情にもトラックは左折。
おれの行くべき方向は右だった筈だ。

「どうするおれ。トラックに付いて行くか」

付いて行ってどうするよ。どこに行くのかも分からないの

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「死ぬかも」ってホント怖い 前編

「死ぬかも」ってホント怖い 前編

何も見えない。

分厚い真っ白なカーテンが、行けども行けども尽きることなく運転する視界を塞いで行く。

重たい重たい雪のカーテン。

猛烈な風と雪によって視界が閉ざされ、何も見えなくなる「ホワイトアウト」
それとは全く別物の感覚。
そう雪は、静寂の中で人を呑み込んで行く事もあるのだ。
風はさほど強くはない。が、寸分の間も無く重たい雪がしんしんと降り続くと、それはまるで真っ白な重たいカーテンの中を、

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音なき音と優しさと

音なき音と優しさと

生産性なんてな無いと思ってた。あの頃は…

北の街の二月には、晴れ渡る青空よりも、少し寒さが和らいだ雪時々曇り、そんな朝がいい。

湿った雪がしんしんと降り続く音無き音。
湿度が窓を曇らせて、この部屋は打ち捨てられた様に静かだ。
彼女と足を絡めながら、狭いベッドで天井を見上げて過ごす。
時折、その髪の匂いを嗅ぐ。
少しだけタバコの香りがする。
彼女はタバコを吸わない。
それだけ、この部屋で長い時間

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