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午前0時に、来たよ

介護施設。
 
残業の遅番と夜勤者。
 
「鈴木さん…
 まだ、終わらないんですか?」
「うん。
 明日、イベントだから、
 今日中にやっておかないと」
 
「あの…
 私、それ夜勤中にやっておきますよ
「いいよいいよ。
 もう少しだから。
 それにそろそろ、
 誰か起きてくるんじゃない?
 
「確かに。
 そろそろ、
 トイレに起きてくる時間ですよね
「ほんと、もうすぐ終わるから。
 でも、ごめんね。
 遅番なのに、こんな時間まで
 
「いえ、私はいいですけど、
 鈴木さん…明日、早番ですよね?
 寝る時間なくなりますよ」
「そうだよね。
 でも…
 家に帰ると仕事したくなくなるの。
 だからここで…」
 
「それ、わかります。
 家に帰ってまでやりたくないですよね。
 なのに資料作成報告書とか、
 時間外でしかできないじゃないですか?!
 おかしいですよね?」
「そうね。
 人手不足でギリギリだし、
 みんな、デスクワークの時間なんて、
 作れないよね…ごめんね。
 私、リーダーなのに」
「いえいえ。
 それは管理側の問題ですよ。
 
 それに鈴木さんも、
 うちらと同じじゃないですか。
 
 こうやって、残業してるわけだし」
 
「う~ん…
 でも、何とかならないかと、
 上とも話はしてるんだけど…
 
 結局…
 人が入らないとどうにもならない…
 
 で、話が終わちゃうのよね…」
「そこなんですよ!
 
 じゃあ、新しい人、
 いつ来るんですか?
 って、聞いても…
 
 募集ぼしゅうは何個か掛けてる…
 しか、言いませんよね?
 
 ずっと机に座っててさ。
 
 外でスカウトしてこいって、
 思いません?」
 
「あそこはあそこで、
 色々といそがしいのよ…
 ほら、佐藤さん起きてきたよ
「あっ、ほんとだ。
 佐藤さ~ん!」
 
………
 
「あと、もうちょっとなのに…
 時間…え?
 もう、明日になっちゃう
 
「すいません、鈴木さん!
 いま手がはなせなくって!
 高橋さんの呼び出し、
 お願いしてもいいですか!
 すいません!」
 
「いいよ~。
 私、行くから~」
 
高橋さん…
 またいつものように、
 眠れないのかな…

 
高橋さんの居室。
 
コンコン。
 
「は~い」
 
「失礼します。
 高橋さん、どうしました?」
あら、鈴木さん。
 まだ、帰ってないの?

 
「ええ。
 ちょっと仕事で…」
「そう…大変ねえ」
 
「どうかしましたか?」
「あっ、そうそう。
 何か私、急に、
 ブルブルってふるえが来たのよ

 
「震えですか?
 どこか調子悪いとこあります?
「それが…ないの」
 
「ない?
 ……おトイレとかは?
「ううん、大丈夫。
 おトイレは寝る前に行ったから」
 
「じゃあ、何で震えたんです?」
「私もそれが不思議で…
 こう…頭がれたような…」
 
「頭ですか?」
「そんな気がしたの」
 
「ちょっと、失礼してもいいですか?」
「どうぞ」
 
まくらの…
 ああ…ありました。
 これですね?」
「ああ、私の携帯。
 いつもは、このたなに置いてるのに」
 
「何かの拍子ひょうしに落ちたんですかね?」
「でも何かしら。
 私、アラームとかしてないわよ」
 
でも、ピカピカ光ってるから、
 通知が来てるみたいですよ?

「ほんと…何かしら…
 まあ!
 ウフフ…」
 
「高橋さん、どうしました?」
「あらやだ、ごめんなさい。
 孫から連絡
 
「お孫さんから?」
そう。
 明日…いえ、もう今日よね。
 私の誕生日だからって、
 一番にお祝いメッセージくれたのよ

 
「ああ、そうだったんですか。
 いいお孫さんですね」
「優しいのよ。
 覚えててくれたのも…うれしい
 
「良かったですね」
ええ。
 何か…おかげで今日は、
 このまま朝まで眠れそう

 
「そうですか。
 明日は私たちもお祝いしますから」
「ありがとう」
 
「じゃあ、高橋さん…
 おやすみなさい」
鈴木さんも、おやすみなさい
 

このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。 

お疲れ様でした。