Jabal Qadeem

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マガジン

  • 百夜百冊

    これまでに読んだ本の中で影響を受けた本を1冊ずつ地道に紹介してゆく企画。(2020/09/07〜) 本をたくさん読んできたという自覚があっても、時間が経つにつれて実は多くの本の内容は忘れてしまっていることが多い。必要に応じてじっくりと時間をかけて再読をすることもあるので更新頻度は不定期。一応は「百冊」を目標に掲げるものの、目標に到達するまで何年かかるかわからないし、途中で挫折してしまうかもしれない。 単なる書評に留まらず、その本にまつわる思い出や人との出会いについても書いてゆければ良いなと思う。

  • 料理のお話

最近の記事

生臭坊主(後編)

(これから書く話は基本的に実際に見聞きしたことを書いたものをもとにしているが、ずいぶんと昔に見聞きした話も含まれるため、一部に筆者の記憶違いや創作、過剰な演出も含まれる。このため、あくまで「フィクション」として読んでいただければ幸いである。なお、今回の話には特定宗教の特定宗派が登場するが、これらを貶める目的がないことをあらかじめお断りしたい)。 当家は元々仙台藩士の家柄ということもあって、その菩提寺と墓が仙台の北山にある。お寺などの記録を辿ると江戸時代中期の享保年間まで遡る

    • 2023年、冬、沖縄②

      3日間目いっぱい沖縄を楽しもうと思い、朝7時30分神戸発の飛行機に乗り、10時前に那覇空港に到着した。初めて降り立つ那覇空港の印象は、地方空港にしては非常に大きいなという印象だった。個人的な印象としては伊丹の大阪空港と同規模か、それ以上の大きさを感じた。後で調べてみたら、大阪空港は敷地面積311ha、滑走路は1,828×45m、3,000m×60の2本、那覇空港は敷地面積490ha、滑走路は3,000×45m、2,700×60mの2本とのことで、那覇の方が1.5倍以上ある。

      • 2023年、冬、沖縄 エピソード0

        先日、念願だった沖縄旅行に行ってきた。その前後で考えたことを何回かに分けて書いてみることにした。 「沖縄」というのを初めて認識したのは、今から30年ほど前の小学校5年生の頃だったと思う。同じクラスに「与那」という名前の同級生がいた。両親が沖縄出身で、南国出身者特有の浅黒い肌と彫りの深い顔立ちで、とにかく足の速い女の子で、陸上選手のジョイナーに似ていたから、「ジョイ」というあだ名もつけられていた。 社会科の授業で沖縄について触れた時、この与那さんのお母さんがさとうきびを

        • 選挙ハガキが届いて考えたこと

          先日、今般の参院選の候補者から選挙ハガキが届いた。推薦人は地元選出の県議会議員となっているが、この県議会議員についてはそもそも面識もなく、昨年の市長選(落選)、県議補選のいずれにおいても支持したことがないし、今後も支持する可能性が全くないのにもかかわらず当方の住所にハガキが届いた。 「どこかから名簿が漏れている可能性があるかもしれない」と思って、ハガキに記載されていた選挙事務所の電話番号の方に問い合わせてみようと思った。とはいえ、せっかくの機会なので関連法規について簡単に調

        生臭坊主(後編)

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        • 百夜百冊
          9本
        • 料理のお話
          1本

        記事

          新型コロナウイルスに罹患して考えたこと

          はじめに先日、新型コロナウイルス感染症に罹患し、自宅での療養を経て復帰することができた。感染経験については、その有無を聞くことはあっても療養経過などについて詳細に語ってくれる人はなかなかいないと思う。また、感染したとしてもその後の症状や経過は千差万別であるため、ある人の感染経験が他の人の感染時にそのまま教訓として適用できるわけではない。ただ、感染経験や感染後にどのように行動し、何を考えたのかという点を記しておくことは全くの無駄になるわけではないだろう。そこで、私自身の感染経験

          新型コロナウイルスに罹患して考えたこと

          “The Book of the Day!”記録(3/1~5)

          3/1 藤沢和希『ぼくは愛を証明しようと思う』別の読書会で課題本になっているため読んだ本。私自身「非モテ」に属する人間であるからということもあるが、一言で言ってしまうと非常に不愉快な読後感を抱いた1冊である。特に女性の読者がこの本を読んだ時どのような感想を抱くのだろうかが気になる。 「非モテ」の主人公が「恋愛工学」の様々なテクニックを駆使することで次々と女性を口説いてゆくことになるのだが、それとともにタイトルとは裏腹に「愛」を失ってゆく様が描かれている。 この作品の中で展

          “The Book of the Day!”記録(3/1~5)

          “The Book of the Day!”記録(2/22~26)

          2/22 サラーム海上『MEYHANE TABLE』この日は中東料理の本を紹介した。サウジアラビアに赴任していたこともあり、他の人よりも中東料理に触れる機会にちょっとだけ恵まれた。サウジアラビアにいた時の一番のお気に入りは、「ファラフェル」というひよこ豆のコロッケだ。パーティーの時はもちろん食事付きの会議の時にも必ず出てくる一品だった。 日本に帰ってきてからもこれを食べたいと思い、レシピを調べて自分でもたまに作るようになった。コイン状に成形をする際には手でこねるのが正しい作

          “The Book of the Day!”記録(2/22~26)

          “The Book of the Day!”記録(2/15~19)

          2/15 セバスチャン・ラシヌー『コーヒーは楽しい!』毎朝この読書会に参加する際にコーヒーか紅茶を飲んでいることから、この日はコーヒーに関する本を紹介した。「楽しい!」シリーズは他にもウイスキーやワイン、スパイスに関するものもあるのでおすすめ。 コーヒーを飲むようになったのは中学生の頃からだが、大学院に進学した頃からドリップコーヒーを飲むようになり、海外勤務を終えて日本に帰国した5年ほど前にミルを購入し、豆を挽いて飲むようになった。東京のような大都市はもちろんだが、地方でも

          “The Book of the Day!”記録(2/15~19)

          "The Book of the Day!"という新しい読書習慣(2/8~12紹介分)

          The Book of the Day!2/8から月~金の朝6時30分~7時までClubhouseで行われている"The Book of the Day !"という朝活ルームに参加している。京都時代から付き合いがあり、これまでも様々な読書会を紹介してくれた編集者の友人から誘われたのが参加したきっかけである。毎朝本を1冊紹介するというシンプルな朝活なのだけど、紹介される本とそこから派生する話が非常におもしろいので初参加から既に10回連続で参加というヘビーユーザー状態になった。

          "The Book of the Day!"という新しい読書習慣(2/8~12紹介分)

          ちょっと料理のことを書いておこうか

          幸いなことに、これまでの人生において料理をすることが苦痛だと思ったことが一度もない。むしろ最近は料理をすることが心から楽しくなっているので、ちょっと料理について書いておこうと思う。 料理をやるようになったのって一体いつからだろうか?小学生の頃から母のハンバーグや餃子づくりを手伝ったり、休日に袋麺を茹でるくらいのことから始めたのだと思う。具なしのラーメンでは何だか寂しいということで、野菜ラーメンを作るようになり、炊飯器に残っていたごはんで炒飯をつくるようになり、徐々につくれる

          ちょっと料理のことを書いておこうか

          【第四夜】エドモン・ロスタン著『シラノ・ド・ベルジュラック』

          2002年、大学3年生の時、第二外国語のフランス語の再々履修を受けた。真面目な学生や普通の学生、要領の良い学生であれば第二外国語などというものは大学2年生までにきちんと単位を取得できるものである。私はあろうことか一度ならず、二度までもフランス語の単位を落とし、大学3年生になってもフランス語を週3コマも履修していた。 2つは2年時に落とした分、1つは1年時に落とし、2年時の再履修で落とした分とフランス語の成績は散々で、今でもフランス語で覚えているのは、”Ce qui n'es

          【第四夜】エドモン・ロスタン著『シラノ・ド・ベルジュラック』

          【第三夜】有川浩著『阪急電車』

          2008年の2月に東京から大阪に転勤になり、阪急西宮北口駅から徒歩10分程度のところの阪急電車の車両基地の近くに住んでいた。もっとも西宮北口駅の近くに住んでいたとはいえ、職場の関係で通勤に利用していたのはそこから徒歩20分程度のところにあるJR甲子園口駅であったが。 有川浩の『阪急電車』(幻冬社、2008年)を読んだのはそんな2008年の2月のことだ。ちょうど阪急西宮北口駅構内にあるブックファーストに平積みされていたのである。この本が宝塚~西宮北口間を舞台にしていることと、

          【第三夜】有川浩著『阪急電車』

          【第二夜】ヨースタイン・ゴルデル著、池田香代子訳『ソフィーの世界』

          かつて「NOW 1」という洋楽オムニバスCDがあった。1993年に発売されたアルバムだが、このアルバムを聴いてクイーンの「伝説のチャンピオン」、ペット・ショップ・ボーイズの「ゴー・ウェスト」、レニー・クラヴィッツの「自由への逃走」などを知り、その後色々な洋楽を聞くようになった。「オムニバスCDというの実にお得だな」という意識が刷り込まれ、その後、iTunesが登場するまでは洋楽に限らず様々なオムニバスCDを買うようになった。 「オムニバス」というのは実に素晴らしくて、圧倒的

          【第二夜】ヨースタイン・ゴルデル著、池田香代子訳『ソフィーの世界』

          【第一夜】ヴォルテール著『寛容論』

           『百夜百冊』の記念すべき第一夜はヴォルテール著、中川信訳『寛容論』(中公文庫、2011年)を取り上げたい。当初、第一夜には別の本を紹介するつもりでいたのだが、この本が『百夜百冊』を書くきっかけとなった中島大希さんからいただいた本だったので第一夜に持ってくることとした。 著者のヴォルテール(1694~1778)は18世紀のフランス出身の哲学者である。英国、プロイセン、スイスを拠点に活動し、「百科全書派」の啓蒙思想家として知られる。「私はあなたの意見に反対である。だが、あなた

          【第一夜】ヴォルテール著『寛容論』

          【第零夜】「百夜百冊」はじめました

          先だって「ブックカバーチャレンジ」なるものがSNS上で流行った。自分がこれまで読んできた本の中から7冊を選んで紹介するという趣旨のものである。私も友人から回ってきたのでやることにしたものの、この手の「バトンもの」があまり好きではないため「漫画しばり」に変更して手っ取り早く終わらせてしまった。しかも、通常は何人かにバトンを渡さなくてはならないのであるが、「不幸の手紙」やら「〜バトン」を自分のところで終わらせることに使命すら感じているため、「ブックカバーチャレンジ」も自分のところ

          【第零夜】「百夜百冊」はじめました

          生臭坊主(前編)

          (これから書く話は基本的に実際に見聞きしたことを書いたものをもとにしているが、ずいぶんと昔に見聞きした話も含まれるため、一部に筆者の記憶違いや創作、過剰な演出も含まれる。このため、あくまで「フィクション」として読んでいただければ幸いである。なお、今回の話には特定宗教の特定宗派が登場するが、これらを貶める目的がないことをあらかじめお断りしたい)。 大人になってから母親から知らされる意外な事実というのは時として衝撃的なものも含むものである。 私は幼い頃とある仏教系の幼稚園に通

          生臭坊主(前編)