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新型コロナウイルスに罹患して考えたこと

はじめに

先日、新型コロナウイルス感染症に罹患し、自宅での療養を経て復帰することができた。感染経験については、その有無を聞くことはあっても療養経過などについて詳細に語ってくれる人はなかなかいないと思う。また、感染したとしてもその後の症状や経過は千差万別であるため、ある人の感染経験が他の人の感染時にそのまま教訓として適用できるわけではない。ただ、感染経験や感染後にどのように行動し、何を考えたのかという点を記しておくことは全くの無駄になるわけではないだろう。そこで、私自身の感染経験を以下の通り書き記しておきたい。

なお、できる限り正確に書き記したいと思うが、自分として書きたくない点についてはあえて捨象している。この点については予めご了承いただければ幸いである。また、私自身が医療に関する専門知識を有しているわけではないことから、医療知識、表現に思い込みや誤りを含む可能性があることも予めご了承いただきたい。

1.基礎情報

療養経過を書くにあたって必要と思われる基礎情報は以下のとおりである。

・年齢:40代
・性別:男性
・職業:会社員
・婚姻:未婚
・居住地域:近畿地方(都市部)
・居住形態:一人暮らし(賃貸物件居住)
・ワクチン接種:2回接種済み(2021年9月)

2.発症・療養の経過

以下では、明確に発症を認識した1/19の2日前からの行動履歴について振り返る。

1/17(月)
出社。若干の咳あり。

1/18(火)
出社。若干の咳と寒気があり、会社の上司から咳について指摘を受ける。やや寒気があったことから日中はカイロを使用。夜に友人と2時間程度の会食。

1/19(水)
咳と発熱の症状があったことから、検温したところ37.6度。血中酸素濃度は97~98%で推移。欠勤の連絡をし、午前中にかかりつけ医の発熱外来を受診。抗原検査を実施したところ、新型コロナウイルス、インフルエンザともに「陰性」の判定。かかりつけ医より解熱剤と抗生物質を4日分処方される。また、近隣の大規模病院でのPCR検査の案内を受けるも、この日は予約できず。

1/20(木)
朝の時点では36.6度だったものの、咳の症状があったことから欠勤。血中酸素濃度97~98%。かかりつけ医紹介の病院へのPCR検査予約を試みるも、電話がつながらず断念。この日は36.2度~37.5度の範囲で推移。(夕方から夜にかけて熱が上がる状況)。

1/21(金)
朝の時点では36.5度だったものの、まだ咳の症状があったことから欠勤。血中酸素濃度97~98%。この日もかかりつけ医紹介の病院へのPCR検査予約を試みるも、電話がつながらず断念。この日も熱は36.5 度~37.5度の範囲で推移。(夕方から夜にかけて熱が上がる状況)。

1/22(土)
朝から36.5度前後の平熱をキープ、咳の症状なし。血中酸素濃度98~99%。咳と発熱の症状がなくなっていたことから、かかりつけ医から処方された解熱剤と抗生物質の服用を停止。

1/23(日)
朝から36.5度前後の平熱をキープ、咳の症状なし。血中酸素濃度98~99%。

1/24(月)
朝から36.5度前後の平熱をキープ、咳の症状なし、血中酸素濃度98~99%。欠勤。かかりつけ医に電話で相談し、もう一度抗原検査を受けたい旨申し出るも、抗原検査キットの在庫がないため検査できないとの回答を得た。既に症状がない状況であったため、薬局等の検査を利用してはどうかとの回答を得た。これを受けて、最寄りの薬局にてPCR検査を受けた。(薬局では抗原検査キットの在庫がなかった)。

今回はかかりつけ医からのアドバイスに基づき薬局でのPCR検査を受けたが、本来的には発熱等の症状がある場合は薬局での検査は受けられない。この日の時点で、熱は36度台に落ち着き、咳の症状もなかったため、「症状なし」と言うことは「嘘ではない」ものの、きわめてグレーなものであったと思っている。

1/25(火)
朝から36.5度前後の平熱をキープ、咳の症状なし、血中酸素濃度98~99%。欠勤。深夜になって検査機関からPCR検査の陽性通知を受けた。陽性通知を受けて、検査機関のWeb問診票を作成し、返信。

1/26(水)
朝から36.2度前後の平熱をキープ、咳の症状なし、血中酸素濃度98~99%。欠勤。厚生労働省より陽性者登録を促すSMSを受診したため登録。保健所からの連絡なし。

1/27(木)
朝から36.2度前後の平熱をキープ、咳の症状なし、血中酸素濃度98~99%。欠勤。保健所からの連絡なし。

1/28(金)
朝から36.2度前後の平熱をキープ、咳の症状なし、血中酸素濃度98~99%。欠勤。保健所からの連絡なし。

1/29(土)
朝から36.2度前後の平熱をキープ、咳の症状なし、血中酸素濃度98~99%。保健所からの連絡なし。以下、厚生労働省の資料より、発症から10日かつ症状軽快から72時間が経過したことから療養解除と認識。

厚生労働省による療養解除基準
https://www.mhlw.go.jp/content/000814817.pdf

1/30(日)
朝から36.2度前後の平熱をキープ、咳の症状なし、血中酸素濃度98~99%。午前中に保健所からの連絡があり、健康観察の問診あり。(上述の経過を説明)。厚生労働省の療養解除基準に合致していることから、1/29をもって療養解除となったことを確認するも、保健所の認識ではPCR検査を受けた1/24を0日目とし、そこから10日間の療養が必要との回答を得た。しかしながら、その後保健所側の説明が誤りであるとの連絡を受け、当方の療養解除の認識が正しいことを確認した。

1/31(月)
36.2度、咳の症状なし、血中酸素濃度99%。療養解除を受けて出勤。

3.症状のまとめ

発症から療養期間中に生じた症状は、発熱(最大で37.6度)と咳、悪寒、若干の関節・筋肉痛のみである。喉痛や吐き気、頭痛、腹痛、息苦しさ、味覚障害などの症状はなく、通常の風邪をひいた時の症状と変わらなかった。

4.感染源の推定と濃厚接触者への連絡

発症前の自分自身の行動履歴を考えると、既に感染した人への濃厚接触は確認できなかった。また、自分自身の職場でも発症前に最後に出社した1/18までに感染者は発生していなかった。私自身は毎日朝夕それぞれ満員電車に40分程度乗車する生活を送っていることから、この満員電車が自らの感染源になった可能性が極めて高いものと考えている。

なお、発症2日前から濃厚接触をした人間は1/18に会食をした友人1人のみであるが、この友人の感染は確認されておらず、PCR検査も陰性であった。したがって、職場を含めて目に見える形で私自身から感染した人間は今のところ確認できていない。(単純に特定ができないということであって、自分自身が感染源ではないと言うつもりは全くない)。

5.療養期間中の生活

1/19のかかりつけ医での受診、1/24の最寄り薬局でのPCR検査以外は外出をせず、かかりつけ医および最寄り薬局へはいずれも徒歩で赴き、公共交通機関の利用は行わなかった。療養期間中は自宅にて安静を維持し、十分な睡眠をとることに努めた。

食料については従来から週1回の生協の宅配サービスを利用しているため、調達において不都合は発生しなかった。療養期間中の食事は全て自分で行った。今回は症状が比較的軽微であったこともあり、調理に難が生じることはなかった。なお、一部自治体においては保健所を通じて食料供給を行っているようであるが、1/30に保健所からの連絡があった時点では食料供給についての言及はなかった。

私の場合、一人暮らしではあるが、従来から生協の宅配サービスを利用しており、また自炊をする習慣があったことから特段不便を感じることはなかった。しかしながら、同じ一人暮らしであっても、スーパー等での食料調達を行って自炊する人、そもそも自炊をしない人にとっては自宅療養のハードルは極めて高くなるはずである。自治体によって食料供給のサービスが受けられるとしても、感染拡大の状況下ではそもそも保健所からの連絡が遅くなるため、食料供給自体が遅れる可能性が否定できない。したがって、感染症等感染時の自宅療養、災害等に備えた非常食料の常時備蓄を行っておくことが望ましい。

6.その他雑感

今回コロナに感染して感じたことは、感染症に対する保健行政および医療機関の能力とリソースが必ずしも充実しているわけではないということである。特に感染拡大の局面ではそれが顕著となる。私自身、発症からPCR検査を受けられるまでに6日を要し、PCR検査の陽性判明から保健所からの健康観察の電話連絡が来るまでに5日を要した。PCR検査を受けた時には症状はほとんどなくなっており、保健所から電話連絡があった時点では厚生労働省が定める療養解除基準を満たしている状況であった。つまり、PCR検査も保健所からの連絡も遅きに失していたわけである。

また、保健所の健康観察担当者自身が療養解除基準について十分理解していない中で業務を行っていることもよくわかった。私の場合は、事前に厚生労働省の療養解除基準についてある程度目を通していたため、担当者の説明に誤りがあることを見抜けたものの、多くの市民は事前にこのような資料に目を通すということはしないだろう。したがって、健康観察の担当者が誤った指示を行い、その誤った指示を受けた市民が何の疑いもなしにこれを信じてしまう可能性というのも十分考えられるのである。

こういった能力とリソースの不足はもちろんきちんと改善されなくてはならないし、そのためにはしっかりと声を上げなくてはならないとは思うものの、現実的に考えると声を上げたところで自分の療養期間中にきちんと改善されることは難しいだろう。とすれば、低い能力と足りないリソースの中で、できる限り正確な情報を集め、「よりマシに」行動することでしか自分の身は守れないと考えた方が無難なのである。

PCR検査の受診と保健所からの健康観察の連絡は大幅に遅れたものの、症状の把握と検温、血中酸素濃度の計測を小まめに実施、記録し、厚労省の定める療養解除基準に照らし合わせることで、発症から10日で療養解除に至った。軽症状、無症状の場合はある程度参考になる自宅療養生活を行ったのではないかと思う。大きな問題が起きることなく自宅療養を行えたことは、症状が比較的軽くて自炊習慣があるなど、ある程度のことを自分自身でコントロールできたからであろう。もしこれがより重篤な症状であったら、たとえば39度台の熱が出ていたり、ひどい喉痛などに見舞われるということになっていたら自分自身でコントロールできていたかどうかは怪しい。そう考えると、単純に「運が良かった」だけなのかもしれない…。

現在主流となっているオミクロン株は「重症化しにくい」ものの「感染力は非常に強い」とされる。誰でも罹患するリスクがあることを考えると、単純に予防をするだけではなく、罹患した際のこともある程度想定しておくことが重要だろう。私の感染経験談が少しでも役に立てれば幸いである。

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