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神の遺跡

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土の遺跡〜巡礼の道〜

土の遺跡〜巡礼の道〜

前作:『土の遺跡〜花園の騎士(後)〜』

 ニル・エアルスは灼熱の砂漠を愛馬の背に乗って進んでいる。彼は土の遺跡のある楽園に住まう妖精であったが、人の頃愛した魔法使いと死の都で別れを済ませ、水の遺跡へ向かっていた。愛馬アウステルも精霊ゆえ飲み食いせずとも数日は平気なのだが、こう暑いと流石に辛いだろうなとニルは相棒を心配していた。
「泉か、井戸でもあると良いのだが」
前方に広がるのは果てしない砂の海

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土の遺跡〜花園の騎士(中)〜

土の遺跡〜花園の騎士(中)〜

前作:『土の遺跡〜花園の騎士(前)〜』

=====

 コンスタンは慌ててニルの寝床に顔を出す。彼はいなかったが消えた訳ではない。庭で柔軟をしているニルを見つけコンスタンは胸を撫で下ろす。
「おや、おはようございます」
「……おはようございますニル殿」
草原の上でゆっくり柔軟をしているニルの近くにコンスタンは腰を下ろす。
「貴方の夢を見ました」
「私のですか?」
「騎士だった頃の貴方の夢です」

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うつろの森の騎士

うつろの森の騎士

前作:『土の遺跡・深』

 なあアンタ、よそから来たんだろう? エールを飲みながら俺の話を聞いちゃくれねえか? 何、退屈しのぎだよ。気が進まないなら止めるが。おお、そうかい? じゃあ話をしよう。
 うつろの森と呼ばれる場所がある。そこは俺の家からそう遠くなく、馴染みのある森で幼い頃にはよく近所の悪ガキ同士で連れ立ったものだ。亡霊が出るとか泣き女がいるとかそういう噂が絶えない場所で、暇そうな貴族の息

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土の遺跡〜花園の騎士(前)〜

土の遺跡〜花園の騎士(前)〜

前作:『土の遺跡・深』

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 ニルは釣り糸の先を見つめている。楽園は今日も平和そのもの。リアム、サミーと共に湖で釣りをしている。楽園の湖には小魚しかいないので、釣ったところですぐ放してしまうのだが。それにしても此処数日は全く魚が引っかからないのでニルはとうとう飽きてしまった。
「釣れんな」
「釣れないねえ」
「釣れなくても釣りなのさ」
ようやくニルの釣り糸が揺れ、彼は竿を引く。しかし掛

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土の遺跡・深

土の遺跡・深

※『土の遺跡』を加筆修正したものです。

=====

果てた騎士のその身に残ったものは

──────『土の遺跡・深』

 乾いた土地に吹きすさぶ風。砂塵の向こうに見えるはアロガン王国。幾度もの戦いを経て小国から大国となったその国では、祝宴が行われていた。酒に溺れる同僚や上司をよそに、暗い茶髪を短くまとめた壮年の騎士ガルドアは窓辺に飲みかけの酒を放った。どうせ誰も見ておらぬ。空の盃をテーブルへ置

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水の遺跡

水の遺跡

願わくば、貴方と。

……………………水の遺跡

 ふう、ふう。荒い息づかいが聞こえる。盗んだ装飾品でジャラジャラと音を立てながら彼は走る。
「いたぞぉ!」
後ろには憲兵が迫っている。彼らを撒くように森の深くへと踏み入る。足に絡まる小枝のせいで転び、盗んだ装飾品が散らばる。拾っている暇などなく彼はすぐ立ち上がり再び走る。
「走れ走れ! 捕まっちまう!」
そう独り言ち、追われながらも男は楽しそうだっ

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火の遺跡(前編)

火の遺跡(前編)

少女の祈り

 ぼくは夢を見る。炎が轟々と燃え盛り、その中心に男が立っている。彼がにやりと口を歪めると、決まって夢から覚めるのだ。

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風の遺跡

風の遺跡

巫女の行く先

 少しばかりの水と供え物を持って少女は村の者と別れた。風の神のいる遺跡へ巫女として向かう為だ。獣も盗賊もいつ出てもおかしくない広い砂漠を独り歩く。
 延々と歩き水も尽きてきた頃、行商人と出会った。
「お嬢さんお嬢さん、水はいかがかね」
 少女は近くへ歩み寄る。
「おじさん、この暑い中お疲れ様です。ごめんなさい、お金は持っていないの」
「ええ? お金を持ってない? あんた、そんな軽装

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