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読後感を保証するコラム

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ハッピーエンド至上主義者による、絶対上向きにおわる話。後味だいじ。いちばんだいじ。
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#毎日note

シンデレラタイムをすぎてから使う魔法について

シンデレラタイムをすぎてから使う魔法について

わたしたちが幼かったころ、祖父母はすぐ、あがなおうとした。
じっと見つめていたり、興味をもったものがあれば、すかさず言った。
「ほしいんか」
甘い声だった。
あわてて首をふる。
もの欲しげだったのかと、恥ずかしかった。
そんな卑しさを、だしてはいけない。
ものをほしがるのは、下の下だ。
そう思っていた。

祖父母は、どこかに連れていってくれるたびに、かならずなにかを買ってくれようとした。
おみやげ

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合気道場はいくつになっても、青春を現出してくれる夢の国だということを、道場を変えるときに思い知った話。

合気道場はいくつになっても、青春を現出してくれる夢の国だということを、道場を変えるときに思い知った話。

短冊が、目の前にぶらさがっている。
こう書かれている。自分には能がない、と。
道場を変えることにした。
ああ、むりだ。もう通えない、と思ったあの日の夜のことを、現像できるくらい明瞭に覚えている。
ふつうに考えたらそりゃそうなんだけれど、もう曜日の組みようがない。
日常に占める比重が大きすぎる。
平日の退勤後に、地下鉄で道場に向かう。
帰宅して22時。そこからおふろと夕飯。始業も早いので、早く眠らな

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郷御前はなぜ殺されたのか。静御前はなぜ歌ったのか。鎌倉殿の13人

郷御前はなぜ殺されたのか。静御前はなぜ歌ったのか。鎌倉殿の13人

静御前はなぜ名乗らないのか。

自分が静だと認めたら、命が危ない。
名乗るか名乗らないか、認めるか認めないか。
お腹には、やや子がいる。九郎義経の子。
謀るか、謀らないか。最後の最後まで迷う。
だからこそ輝く、満座のなかで歌いながら舞う白拍子。

しずやしず しずのおだまき くりかえし 昔を今に なすよしもがな

静よ静よと、あの方がわたしを呼んだ、あのころに戻りたい。
だって今もお慕いしているの

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五月病に足をつっこむ前に。主人公である自分を休ませよう。

五月病に足をつっこむ前に。主人公である自分を休ませよう。

ほんとのとこは、なんでもいいんだよ。たいしたことなくても。脇役に感じても。添え物に感じても。お新香ですらなくても。煌びやかでなくても。足に落ちる影が濃くても。濃くみえても。
なんの進歩もしていないように感じても。
ということを引用4連発で重ねるので、引用おわるまでついてきてください。

そう、自分の時間なんだから、ゆっくり使おうよ。
のっとられたり、ゆずったり、明け渡したりしないで、
自分の肩幅く

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おとなになってからの友情はありえるのか。平尾誠二と山中伸弥「最後の一年」

おとなになってからの友情はありえるのか。平尾誠二と山中伸弥「最後の一年」

まだまだ若いラグビー界の伝説が、ある日突然、末期ガンになった。
高校時代、その伝説にあこがれたノーベル賞受賞者が、医師として、親友として、その最後の挑戦を見届ける。

この文言だけを読んで、想像する内容そのままの本。
文面がやわらかく、暴力的なところも、血をふりしぼるようなところもなく、終始、淡々としている。

おとなになってからの友情はありえるのか。
悲劇をまえにして友情は、美しいままでありえる

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悲しむなかれ、我が友よ。旅の衣をととのえよ。遠き別れにたえかねて。惜別の歌。

悲しむなかれ、我が友よ。旅の衣をととのえよ。遠き別れにたえかねて。惜別の歌。

かなしみセンサーの鍛錬に余念がない、切なさ向上委員会のみなさま。
そう、あなたです。
だいたいこのタイトルを聞いただけで、ピンときますね。
きっと戦争だ。
あたりです。
友にわかれを告げるだけで。旅支度をするだけで。
出征する学友の、若いまなざしが、胸を去来します。
かなしい旋律シリーズ、つづきます。

惜別の歌は、一番はこう。

遠き別れに たえかねて
この高殿に 登るかな
悲しむなかれ 我が友

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