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雑記やエッセイ

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日々暮らしの中で感じたことを書いています。完全に個人的な日記だったりメモだったり。個人の感想に近いです。
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#小説

『ノーマル・ピープル』 サリー・ルーニー著 私の孤独を埋める唯一の存在

『ノーマル・ピープル』 サリー・ルーニー著 私の孤独を埋める唯一の存在

早く読み終わりたくてページを捲る手が止まらなくなる小説と、ずっと読み終わりたくなくて何度も同じページを咀嚼してしまうタイプの小説があると思う。どちらも傑作には違いないだろうが、サリールーニーの「ノーマル・ピープル」は、間違いなく後者だ。

この物語に、できることならばずっと浸っていたい。明日また最初から読み直してもう一度自分の感覚を確認したいと思うのだ。

私には10代の頃からの腐れ縁的な男性がい

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どうしようもなく好きな一冊 ルシア・ベルリン「掃除婦のための手引書」

どうしようもなく好きな一冊 ルシア・ベルリン「掃除婦のための手引書」

「自分にとって生涯手放せないであろう大事な1冊は?」と問われたら、
今の私は、ルシア・ベルリン「掃除婦のための手引き書」(岸本佐知子訳 講談社)と答えると思う。

この本に初めて出会ったときの衝撃は、今でも忘れられない。

物語の中の登場人物が、言葉が、風景が、なにもかもが鮮明で、生き生きと、まるで目の前で息づいているかのような描写の数々。
その中に、癒しようのない、人々の孤独や絶望を垣間見る。

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村上春樹と水曜日の午後のピクニックとの三度目の出会い

村上春樹と水曜日の午後のピクニックとの三度目の出会い

村上春樹の小説を10数年ぶりに読み返している。10代の時には共感してやまなかったのに今読見返すと、自意識が過剰すぎて自分の青春時代を垣間見ているようで、なんだか恥ずかしくなる描写もあるのだが、そんな気持ちになる文章は他の小説を思い返しても見当たらないし、一定層から「嫌い」とまで言われる作家なのだから、やっぱりつくづく唯一無二の作家なのだと感じている。

私は彼の短編にしても長編にしても、「これが彼

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かつては村上春樹、今はポールオースターがそばにいる。

かつては村上春樹、今はポールオースターがそばにいる。

私が10代後半の頃、「好きな作家は?」と聞かれたら
必ず村上春樹の名前を上げていた。

彼の作品に最初に出会ったのは、彼の長編1作目である「風の歌を聴け」を読んだ、高校生の時だ。

その後、1973年のピンボール、羊たちの冒険、ダンス・ダンス・ダンスを
読み、ノルウェーの森とハードボイルド・ワンダーランド、海辺のカフカを、読んだ。

それから15年以上たった2020年現在にいたるまで、だいたい村上

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