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古賀史健

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古賀史健の note、2018年以降のぜんぶです。それ以前のものは、まとめ損ねました。
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2023年11月の記事一覧

より自由に、より自分らしく。

より自由に、より自分らしく。

名前を間違えられる経験は、多くの人にあるだろう。

たとえばぼくはむかし、有名な詩人のあの人が萩原朔太郎なのか荻原朔太郎なのか、おぼつかない時期があった。あるいは作家のカート・ヴォネガットのことをカート・ヴォガネットと言う人がいたり、映画監督のブライアン・デ・パルマをブライアン・デルパマと言う人にも遭遇したことがある。

これらの間違いは主に、「その人について誰かと会話したことがあるか」に起因する

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時代の変化ではない、自分の変化。

時代の変化ではない、自分の変化。

大学生のころ、音楽ライターになりたいな、と思ったことがあった。

好きな音楽の話を、自分の好きに書く。一般よりも早く、新譜を入手する。仕事としてライブに出かける。そして好きなミュージシャンに、好きなだけインタビューする。しかもそれでお給料がもらえるなんて、うらやましいにもほどがあるぜ。シンプルにそう思っていた。

しかし「おっさんになったらどうするんだろ」と思った。40歳(!)とかのおっさんになっ

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紙の新聞がほしい。

紙の新聞がほしい。

現在、電子版の新聞を3紙購読している。

紙の新聞はとっていない。もうずっと、とっていない。上京してすぐのころは、ぜんぜんお金がなかったにもかかわらず紙の新聞をとっていた。光熱費に準ずるものとして、NHK受信料と同じ種類のものとして、新聞をとっていた。巨人戦のチケットがもらえるかと思って、読売を選んだ。もらえたものは洗剤セットであり、それはそれで重宝した。

どうして貧乏をかえりみず、新聞をとるこ

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鍋という名の状況料理。

鍋という名の状況料理。

このところ、週に2度ほど鍋を食べている。

準備は簡単だし、野菜もとれるし、あたたまるし、なによりうまい。いっそのこと、毎日鍋でもいいくらいだ。——と、人はなぜか少しでもうまいものを見つけると「毎日これでもいいくらいだ」とか言いたがるものだけれど、別に毎日食べなくてもよろしい。せっかくうまいものを見つけたのだから、自分を飽きさせない工夫のほうが大切である。

そういうニーズを察してか、この数年はさ

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彼がつくった、きつねうどん。

彼がつくった、きつねうどん。

高校の学食にあった、うどんがおいしかった。

かけうどんは100円だったと記憶している。そして月見うどんが150円。なんだ、それじゃあこの生卵が1個50円もするってことなのか。……なんて不平や不満は漏らさず、みんなでずるずる月見うどんを食べていた。350円の定食と合わせて、ちょうど500円。すばらしい学食プライスである。

ある日に友人が、かけうどんを注文した。見ると彼は、小脇にタッパーを抱えてい

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ぼくたちはなぜリスクを選ぶのか。

ぼくたちはなぜリスクを選ぶのか。

きのう、進化心理学の本を読んでいた。

きっかけは、ダンバー数だ。人間が(会話に基づく)安定的な関係を維持できる集団の上限を「150人」だとする、例の学説である。これについてもうすこし詳しく知りたいと思い、周辺情報を調べていたところ、ダンバー数の話には続きがあって、「すなわち、人間らしい心の働きは150人までの生活集団を前提にデザインされている」ということになるらしい。そしてそれは進化心理学という

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夕食に肉まんを食いながら。

夕食に肉まんを食いながら。

仕事帰りのスーパーで、肉まんを買った。

スーパーに入るまでは、焼きそばでもつくるかなあ、と思っていた。適当に惣菜を買うのもいいけれど、なんかつくりたいよな。でも本格的な料理をつくるだけの時間も元気もないよな。やっぱり焼きそばかな。あれ、そういえば土曜日もたしか、焼きそばつくらなかったっけ? みたいなことを考えながらスーパーに入ると、生鮮食料品売り場の横に、肉まんが売られていた。まるでこちらの調理

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かわいいは循環する。

かわいいは循環する。

ぎゃー、きゃー、ぎゃー。

犬と公園を散歩していたら、突然に呼び止められた。高校生には見えず、おそらくは大学生。ジャージ姿の、運動部の女の子だった。

「ぎゃー、かわいい! え? え? もしかしてレモンビーグルですか? きゃー、うちの実家でも飼っているんです! えーっ、めちゃくちゃめずらしくないですか? あーん、かわいい。え? え? もしかしてブリーダーさんとかですか? ぎゃー。だって、だって、う

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タイムラインから遠く離れて。

タイムラインから遠く離れて。

この人はソーシャルメディアの使い方がうまいなあ。

そう思える人を、何人かフォローしている。ここでの「うまい」とは、インフルエンサーとしての技術、拡散力にすぐれたさまを指すものではなく、とてもたのしそうにソーシャルメディアを使い、フォロワーさんらをたのしませている人たちの態度のことだ。

その人らの投稿は、だいたいおもしろい。目にするとうれしくなる。文章がうまいのは大前提として、もうすこしなにか、

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歴史上の人物に手紙を書く。

歴史上の人物に手紙を書く。

「歴史上の人物に、手紙を書きましょう」

小学校の授業で、そんな課題を出された。歴史上の人物、というのもなんだか漠然とした言い方だ。ぼくはそれを尊敬する故人、と解してえんぴつを握った。宛名はそう——相良寿郎さんへ。

相良寿郎。彼はアントニオ猪木の祖父である。ほんとうはアントニオ猪木に手紙を書きたかったのだけど、あいにく猪木は「歴史上の人物」ではない。まだバリバリの現役として、リングに上がっていた

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宝くじが当たることを前提に生きる。

宝くじが当たることを前提に生きる。

言うとおどろかれることも多いのだが、宝くじを買っている。

しかもサマージャンボや年末ジャンボを記念購入するのではなく、自分で数字を選ぶロトくじを毎回、定期購入している。銀行のオンラインサービスのなかに定期購入の申込みページがあり、それを利用している。

宝くじは、わかりやすくギャンブルである。全体で見れば主催者が儲けて、買う側が損をするようにできた正真正銘のギャンブルである。そこにお金をかけてい

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どうでもいい話をするだけの理屈。

どうでもいい話をするだけの理屈。

測っても熱はなく、風邪ではないはずだ。

けれど先週あたりから、ずっとうすく、調子が悪い。なんとなく熱っぽいというか、ぼんやりしている。熱をもった目がかゆかったり、鼻がぐずぐずだったりする。秋の花粉がもたらす、アレルギー性鼻炎なのだろう。

ぼくの鼻炎はそこまで重度なものではなく、市販の鼻炎薬を飲めばある程度おさまる。「とくにこれが効く」という薬が何種類かあり、それを飲んでしのいでいる。

しかし

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むかしながらの洋食の、その魅力。

むかしながらの洋食の、その魅力。

おいしいナポリタンをつくる。

こう書くと、案外にたくさんの人が「いいなあ」「おいしいナポリタンは、ほんとにおいしいよなあ」と思ってくれるのではなかろうか。うん、おいしいナポリタンはとってもおいしいものだし、使うバターやケチャップの銘柄によっては贅沢な料理とも言えるくらいだ。

けれどもよく知られているように、ナポリタンはちっともナポリ発祥の料理ではなく、戦後にどこかの洋食屋さんがはじめた料理であ

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働き人のアイデンティティ。

働き人のアイデンティティ。

ほのかなあこがれもあってか、スーツについて考えることは多い。

ファッションとしてのスーツおよびネクタイを、ぼくはとても好ましいものだと思っている。たとえばワールドカップ開催国から帰国する際のサッカー日本代表。空港に降り立った彼らが着ているオフィシャルスーツ。長身でスタイルがよく、ワールドカップを通じて好感度が爆上がり中の面々が着ているだけあって、非常にかっこいい。ヒューゴ・ボスがスポンサーを務め

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