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2023年8月の記事一覧
「あたらしいもの」が眠る場所。
いまとなっては嘘のような、けれどもホントの話。
ライターの仕事に就いた23歳くらいのころ、生まれてはじめてビジネス雑誌というものを読んでみた。与えられた主な仕事が、ビジネス雑誌に掲載する経営者インタビューだったからである。雑誌の表紙には、徳川家康だの武田信玄だの、あるいは坂本龍馬だのといった歴史上の人物が、映画看板のようなタッチで描かれていた。そして登場する経営者たちも「徳川家康のような我慢の経
打ち合わせはいいな。
きのう、次に書く本の打ち合わせをした。
テーマや方向性についてはもう、ずいぶん前に決まっていた。ずっとやりたかった企画だし、たぶん出版する意義もある。ただひとつだけ、ぼくのなかで引っかかっていたことがあった。
「これって『おもしろい』のか?」である。
実現できているかどうかは別として、ぼくはすべての本の目標に「おもしろい」を置いている。たとえば、いかにも硬派な面構えをした『取材・執筆・推敲』
桶屋のわたしの損得勘定。
風が吹けば桶屋が儲かる。
いまのことばで言うと、バタフライエフェクトみたいな話だ。どこかで吹いた小さな風が、めぐりめぐって桶屋を儲けさせる。どういうからくり、まためぐり合わせによって桶屋が儲かるのかをあらためて調べると、けっこうにひどい話が書かれている。なのでまあ「風が吹いたらいろいろあって桶屋が儲かるんだな」くらいで憶えておいたほうがいい。
損得勘定、ということばがある。打算的な人は何事につ
いまになってわかることば。
先週に誕生日を迎え、ちょうど50歳になった。
50歳という区切りの歳を迎えた感慨よりも、「40代が終わったこと」の安堵のほうがおおきい。終わったから言えるもののぼくにとっての40代は、やたらと長く、大変なものだった。
いまから10年前、ちょうど40歳になる年に『嫌われる勇気』という本を書いた。書き上げたのは39歳の夏、40歳になる直前のことだった。いいスタートだったと言える。
そしてその翌年
いちばん身近な豊かさの砦。
図書館の話をしよう。
前にも書いたことがあるけれど、24歳の夏にぼくは会社を辞めた。あわてて名刺をつくり、フリーランスのライターだと名乗った。しかしながら名乗ったところで仕事がくるわけではない。ただでさえ少なかった貯金は、毎月おもしろいように目減りしていった。
それでぼくは、音楽CDの購入をやめた。なので1998年以降にデビューしたミュージシャンについては、いまでもあまり詳しくない。そして定期
アドバイスに代わることばを。
メジャーリーガーはあまり練習しない、と言われる。
しかし、日本からアメリカに渡った野球選手のインタビューなどを読むと、かならずしも練習しないわけじゃないらしい。メジャーでは全体練習の時間が短いだけで、その後におこなわれる個人練習の時間を合計すると、日本とさほど変わらないのだそうだ。そして一流の選手ほど、ハードな個人練習に取り組んでいるという。
また、コーチの役割も違うそうだ。メジャーリーグのコ
あたらしい企画を考えるときに考えること。
企画の季節である。
次はどんな本を書こう。あの分野に飛び込んでみようか。こんな本を書いてみようか。手がかりになりそうな資料に目を通しつつ、あれやこれやと考えている。そのさまはちょうど、部活選びに迷う新入生に似ている。ひとたび入ってしまえば当面、そこに青春の住民票を置くことになるのだ。あせりは禁物である。
自分の本の企画を考えるとき、ぼくは「自分にできること」の見定めを大切にしている。どんなにや
謙虚な人の、謙虚な理由。
実るほど 頭を垂れる 稲穂かな
具体的なイメージを伴った、非常に秀逸なことばである。「立派な人は、だいたい謙虚であるものだ」「ほんとうに偉い人は、ことさら偉そうにしないものだ」。そういう意味で語られることばであるし、社会経験を重ねるほどそうした人に会う機会は増えていく。
しかしながらぼくが秀逸だと思うのは、そこに稲の成長過程が描かれているところだ。
稲だって、最初から頭を垂れていたわけではな
理想の打ち合わせを考える。
一度会ったはずの人を、すぐに忘れる。
名刺を交換して、その場で何度も顔と名前を確かめて、なんなら打ち合わせのあいだ「○○さんは〜」とその名を呼んでいたにもかかわらず、忘れる。数週間後に名刺を見返しても、ほとんど顔が浮かばない。そして後日、なにかの席で「はじめまして」と名刺を差し出すと、「前に一度お目にかかってるんですけどね」なんてひと言を添えられる。面目がない。
どうしてこんなに記憶力が弱いの
その記憶が消えてしまったとしても。
ライターはいつも、ICレコーダーを持ち歩いている。
いや、そうじゃないライターも多いと思うけれど、ぼくは持ち歩いている。それにいまじゃ、スマホがレコーダーになる。なので、ライターにかぎらずみんなが持ち歩いていると言ってかまわないだろう。
だれかとしゃべっていて、おもしろい話に差しかかったとき。たとえば、ただの打ち合わせがめちゃくちゃおもしろい話に突入していったとき、ぼくはしばしば(断ったうえで
「こんな夢を見た」の話。
戦争の夢を見た。
自宅でも実家でもない一軒家の壁や窓ガラスが、突然爆破された。破壊された窓、立ち上る煙の向こうに自動小銃を構えた男たちが立っていた。軍服は着ていない。しかし手にしているのは明らかに軍事用の自動小銃だ。男たちは窓を乗り越え、部屋の中へと入ってきた。銃口をこちらに向け、異国のことばでなにやら叫ぶ。興奮しきっている彼は、いまにも乱射する勢いだ。ぼくは自分が武器を持っていないこと、そして
才能の入口にあるもの。
以前、映画監督の李相日さんにインタビューしたときのこと。
たのしかった取材の最後に「映画監督をめざす10代の読者にメッセージをお願いします」とリクエストした。すると彼は、こんなふうに語りはじめた。
そして彼はこう続ける。
取材したのはもう15年くらい前なんだけど、いまでもこのときのことばは折に触れて思い出す。いちばん大事な教訓が、ここで語られている気がする。
ものすごく大雑把な話をすると、
10年経った、その先を。
平日の noteを書きはじめて、もう8年以上になる。
以前、あるインタビューのなかで「とりあえず10年は続けたい」と答えた。10年続ければ、なにか見えてくるかもしれないからと。吉本隆明さんも、そう言っていたからと。
なのでまあ、10年続けることはもう確定である。この8年のあいだにも公私ともどもいろんなことがあったし、これから1年半のあいだにも「こんなの書いてる場合じゃない」な事態は、たくさん起
ストライクゾーンを見極めるときの罠。
以前、「バズる文章術」なる企画の提案を受けたことがある。
バズる文章術。プロのライターが教えるバズる文章の書きかた、というわけだ。企画書を受け取ったぼくは、自分がこれまでのソーシャルメディア人生において一度としてバズった経験を持たないこと、また、そのような趣旨の本を書くつもりはないこと、などを書き添えたうえで丁重にお断りした。
おそらく「最近、文章術の本が売れてるな」「バズる文章の書きかた、っ