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「こんな夢を見た」の話。

戦争の夢を見た。

自宅でも実家でもない一軒家の壁や窓ガラスが、突然爆破された。破壊された窓、立ち上る煙の向こうに自動小銃を構えた男たちが立っていた。軍服は着ていない。しかし手にしているのは明らかに軍事用の自動小銃だ。男たちは窓を乗り越え、部屋の中へと入ってきた。銃口をこちらに向け、異国のことばでなにやら叫ぶ。興奮しきっている彼は、いまにも乱射する勢いだ。ぼくは自分が武器を持っていないこと、そして敵意の欠片もないことを示そうと、伸ばした両手を床についた。違うんだ、帰ってくれ、頼むから撃たないでくれ。そんなことを震える声で叫んだ。男は銃口を、ぼくの右手の甲に押しつけた。押しつけたままぐりぐりと力を込め、ぼくは悲鳴を上げる。撃たれるのか。右手が吹き飛ぶのか。それはどれだけ痛いのか。さまざまな思いが瞬時に駆けめぐる。まさか、そんなことが起こるはずがない。自分の人生に起こるはずがない。だってこれまでにもそんなこと、起こらなかったじゃないか。気を落ち着かせようとそう考えるも、違う、と思う。あの戦場で命を奪われた人たちも、銃やミサイルで亡くなった人たちも、みんな同じだったはずだ。みんな「まさか自分が」と思いながら、撃たれたんだ。

けっきょく男たちは一発も発砲することなく、そして水や食料を奪うこともなく、家から去っていった。去りぎわに「もうすぐ本隊がくるから、急いで逃げろ」と言い残していった。


これまで、おばけ系の怖い夢は何度も見たことがある。高いところから落下する夢も見たことがある。でも、きのうの夢はちょっとレベルが違う怖さを持っていた。(銃で)殺されるという理不尽をあそこまでリアルに感じたのは、はじめてのことだった。それはちょっと、今後ウクライナ関係の報道を見る目が変わりそうなくらい鮮烈な出来事だった。


ちなみに、おばけ系(?)で過去いちばん怖かったのは、巨大なぬりかべに追いかけられる夢である。

締切前のギリギリのとき、机に座ったまま仮眠をとっていたら、ぬりかべに追いかけられる夢を見た。目も鼻も口もないぬりかべが、無言で追いかけてくる夢だ。逃げて逃げて目が覚めると、書きかけの原稿に「ぬりかべが」との文字が記されていた。眠りながら、悪夢にうなされながら、締切という名のぬりかべとぼくは戦っていたのだ。あんな夢はもう二度と見たくない。