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古賀史健

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古賀史健の note、2018年以降のぜんぶです。それ以前のものは、まとめ損ねました。
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2021年10月の記事一覧

モノマネという芸について。

モノマネという芸について。

モノマネについて考える。

じつは『取材・執筆・推敲』という本のなかにも、モノマネに言及した箇所がある。正確に引用するのは面倒なのであやうい記憶に頼ると、「すぐれたモノマネ芸人の方々は、その人の声や表情をコピーするだけではなく、性格や思考、行動原理まで汲み取って(おもしろおかしく誇張しつつも)再現している。インタビュー原稿を書くライターもそうあるべきだ」といった話だった。

今回書きたいのは、モノ

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たった30分の朝令暮改。

たった30分の朝令暮改。

最近の読書はもっぱら、Kindleを使っている。

重くないし、何冊も入るし、買ったらすぐ読めるし、読書灯もいらないし、便利なことこのうえない。Amazonという会社が好きかどうかは横に置いてKindleという「システム」は、非常にありがたい発明品だと思う。

一方、端末としてのKindleには、まだまだ不満が多い。ぼくが使っているのは Kindle Oasis という端末なのだけれど、動作は遅い

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フリーランス時代の軽食。

フリーランス時代の軽食。

あれはなんの習性だったんだろう。

フリーランス時代、自宅近くにワンルームを借りてそこを仕事場としていたころのこと。当然のように当時は、徹夜仕事になることが多かった。そしておそらく、あのワンルームマンションで風呂に入ったことは一度しかない。徒歩1分の距離に自宅はあったし、誰とも会わない原稿仕事なら、数日風呂に入らないくらいへっちゃらだった。じゃあ、ごはんはどうしていたのか。てくてく自宅まで、食べに

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頼りにならないわたしの記憶。

頼りにならないわたしの記憶。

ひさしぶりに、ドタバタの目覚めだった。

午前6時過ぎに飛び起きて、あわててスマホでメモをとる。混濁した意識のなか、懸命にことばを振り絞って「思いつき」を記録する。こういうときは絶対にメモをとらなきゃダメだ。「これだけすごいことを思いついたんだから、二度寝しても憶えているだろう」と眠りこけたまま、記憶の彼方に消えてしまったアイデアは数えきれないほどある。というか、いまでもしばしばやらかす。幸運にも

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時事ネタを廃した先に。

時事ネタを廃した先に。

いま、いちばん書きたくない話題は「急に寒くなった」である。

誰だって書けること、言われなくてもわかっていること、そしてなんら頭を使わず書けること。これらのネタに頼ってブログを書くようでは、さすがにライターとしてやばいだろう。ちっぽけながら職業人の自負として、ぼくはそういう毒にも薬にもならない時事ネタを、なるべく自分に禁じている。

だったら選挙の話はどうだろう。こちらも時事ネタではあるものの、毒

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自費出版と自主制作。

自費出版と自主制作。

自費出版、という言葉がある。

映画や音楽の世界では「自主制作」の言葉があてられるものの、出版業界ではなぜか「自費」とお金の部分がクローズアップされている。おのれの意志で、おのれ自身の資金を投じて制作する出版物、といった意味の言葉だ。

その意味でいうと、これは「自費出版」に該当するのだろうか。

KDP(Kindle ダイレクト・パブリッシング)では、マンガを含むすべてのジャンルの電子書籍と紙書

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「まぜるな危険」の、この言葉。

「まぜるな危険」の、この言葉。

「若いときの苦労は買ってでもしろ」という言葉がある。

ぼくのような雑草キャリアを歩んできた人間はこれに、「そうだそうだ」と言いやすい。自分が重ねてきた「苦労」を振り返り、いまにして思えばあれも大事な経験だったと信じるからこそ「若いときの苦労は買ってでもしろ」と言う。あるいは、恵まれた環境に生まれ、順調なキャリアを歩んできた人を指して「アイツは苦労を知らない」と否定したりする。

たしかに、エリー

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カタカナ言葉と現在地。

カタカナ言葉と現在地。

もともとぼくは、あたらしいカタカナ言葉が苦手だ。

「美しい日本語を守りたい」とかではない。そしてカタカナ言葉に漂う選民意識が鼻につくのでもない。使いたい人はおおいに使えばいいと思うし、目くじらを立てるつもりはまったくない。ただ、自分がそれを使うことに関しては慎重でありたいと思っているだけである。

ひとつの理由として、「その意味を正しく理解していない」が挙げられる。たとえば、昨年からみんなが語っ

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美しい人が見てるもの。

美しい人が見てるもの。

むかし、うちの犬は「ひっぱり」がすごかった。

散歩に出た際、リードをぐいぐいにひっぱって歩くのである。たいへん元気でよろしいのだけど、これだと交通事故に巻き込まれる可能性があるし、通行人にもご迷惑をかけてしまう。しかも首輪やハーネスが絞まって、本人もぜえぜえ苦しそうだ。

どうしたものかと獣医さんに相談してみたところ、唐突に「リーダーシップの欠如」を指摘された。犬が散歩でぐいぐいひっぱるのは、あ

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後半戦とマスク、そしてある本の話。

後半戦とマスク、そしてある本の話。

後半戦、突入である。

プロ野球の話ではない。ペナントレースはセ・パ両リーグとも、残り数試合のファイナルカウントダウンだ。大相撲の話でもない。大相撲九州場所は、来月中旬からの開催だ。後半戦に突入したのはそう、バトンズ・ライティング・カレッジ、通称「バトンズの学校」である。全8回を予定している講義中、ついに第5回が先日開催された。

やっていて、やっぱり「マスク」が邪魔だなあ、と思ってしまう。

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書きたいことは、いらない。

書きたいことは、いらない。

またこの話題を書くか。

書くということについて、書いてみたい。それもただ書くのではなく、毎日なにかを書く、ということについて。ぼくはもう7年、この note を書いている。土日祝日はお休みするものの、それ以外の平日は毎日書いている。その数はもう、1650本を超えている。

「よくそんなに書くことがありますね」

言われることが、たまにある。残念ながら毎日ぶんの「書くこと=ネタ」なんて、あるはずが

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30年ぶりに思い出した、あのニュース。

30年ぶりに思い出した、あのニュース。

ガソリン価格がぐんぐん上がっている。

すこし前から「上がっている」という報道には触れていたものの、いまいち実感がなかった。けれども今朝、犬の散歩中に通り過ぎようとしたガソリンスタンドの前でぼくは、ちょっとした驚嘆の声をあげてしまった。

ハイオク:170円

ええーっ。いまって、そこまで上がってるの? 車はよく使っているし、つまりはガソリンも定期的に補給しているはずで、ハイオクが160円台に突入

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覆された最強伝説。

覆された最強伝説。

都市伝説のひとつに、「最強伝説」と呼ばれるジャンルがある。

簡単に言えば「ガチで喧嘩したら、この人が最強らしい」との噂話だ。かつての芸能界でいうと、大木凡人さん、渡瀬恒彦さん、石倉三郎さん、生島ヒロシさん、そしてジェリー藤尾さんなどが、その候補として挙がっていた。ここに安岡力也さんや宇梶剛士さんらの名前が入ることもあるものの、そういう「そりゃ強いでしょうよ」の人たちは都市伝説としての魅力に欠けて

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憶えてもらうことのむずかしさ。

憶えてもらうことのむずかしさ。

もっとがんばろう、と思う瞬間がある。

たとえば2〜3回顔を合わせたことがある程度の方、とくに業界の大先輩といえるような方と対面したとき、ほとんどの場合先方はこちらの名前を思い出せない。けれども相手の方に「えーっと、たしか以前に一度お会いしましたよね。あの……」なんて恐縮のことばを述べさせるのも申し訳ないので、そういうときには出会い頭に「ご無沙汰してます。古賀です」と自ら名乗るようにしている。する

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