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カタカナ言葉と現在地。

もともとぼくは、あたらしいカタカナ言葉が苦手だ。

「美しい日本語を守りたい」とかではない。そしてカタカナ言葉に漂う選民意識が鼻につくのでもない。使いたい人はおおいに使えばいいと思うし、目くじらを立てるつもりはまったくない。ただ、自分がそれを使うことに関しては慎重でありたいと思っているだけである。

ひとつの理由として、「その意味を正しく理解していない」が挙げられる。たとえば、昨年からみんなが語っている「テレワーク」。もはや特別なカタカナ言葉ではないものの、ぼくがその言葉の意味を正確に理解しているかというと、やや怪しい。ぼくとしては「在宅勤務」と同義のようにテレワークの語を理解しているのだけれど、(いま調べた)一般社団法人 日本テレワーク協会の説明書きによるとテレワークとは「情報通信技術を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のこと」なのだそうだ。ほーら、言わんこっちゃない。テレワークひとつでさえ、これである。

そしてもうひとつの理由として、「だったらテレワークとか言わずに『在宅勤務』って言えばいいじゃん」が挙げられる。生半可な知識をもとに不慣れなカタカナ言葉を使うよりも、そこに対応する漢語・和語を使えばいい。そうすれば用法を間違うこともないし、恥をかくこともない。カタカナ言葉は言いまちがいもしやすいのだ。

けれどもカタカナ言葉、いや外来語のなかには、「どうしてもそのカタカナを使わないと日本語ではうまく説明できない言葉」がいくつもある。

テレワークに近い言葉でいうと、「ワーケーション」あたりは代表的な例である。JTB総合研究所の説明書きによるとワーケーションとは、

英語のWork(仕事)とVacation(休暇)の合成語。リゾート地や地方部など、普段の職場とは異なる場所で働きながら休暇取得を行うこと。あるいは休暇と併用し、旅先で業務を組み合わせる滞在のこと。仕事主体と休暇主体の2つの概念が存在する。

のだそうだ。

浅学なぼくは上記のだらだらした文言を、端的な漢語・和語に変換することができない。ワーケーションというどこか間抜けな響きをもつ言葉を使うしかないだろう。


で、こんな話を書いているのも現在、ぼくがワーケーションをしているからである。近県の、犬が泊まれる貸別荘で昨日から「普段の職場とは異なる場所で」働いている。そしてここは人によりけりだと思うけれど、旅先、いやワーケーション先での仕事は、あんまりうまく進んでくれない。

まあ「仕事主体と休暇主体の2つの概念が存在する」らしいので、後者だと思って身体と頭を休ませつつ、ほどほどに仕事を進めていこう。