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フリーランス時代の軽食。

あれはなんの習性だったんだろう。

フリーランス時代、自宅近くにワンルームを借りてそこを仕事場としていたころのこと。当然のように当時は、徹夜仕事になることが多かった。そしておそらく、あのワンルームマンションで風呂に入ったことは一度しかない。徒歩1分の距離に自宅はあったし、誰とも会わない原稿仕事なら、数日風呂に入らないくらいへっちゃらだった。じゃあ、ごはんはどうしていたのか。てくてく自宅まで、食べに帰っていたのか。いや、ぼくはそうしなかった。なぜだかひたすら、ナビスコ・リッツを食べていた。

もちろん、ずっとナビスコ・リッツばかり食べていては飽きてしまう。そこでぼくは、若かったんだなあ。一味唐辛子を振りかけたマヨネーズでサンドして、それを食べるようにしていた。仕事中の「軽食」に、それはぴったりだったのだ。

どうしてそんなものを食べていたのか。当時の事情を思い返す。

まず、当時はウーバーイーツがなかった。もちろん出前してくれる蕎麦屋さんやピザ屋さんはあったけれど、仕事場にしていたワンルームマンションにはエレベーターがなく、3階とはいえ出前してもらうことを申し訳なく思っていた。

そしてインスタントラーメン的な食事も考えたけれど、飲み残したスープや麺の切れ端など、生ゴミが出るのが嫌だった。コバエやその他の害虫が発生するような事態は、ぜったいに避けたかった。同じ理由からコンビニ弁当を買ってくる選択肢もなくなり、何日も風呂に入っていないのだから近隣の店で外食することも避けたかった。

そんなこんなでたどり着いた最善解がナビスコ・リッツであり、そのプレミアムバージョンが「一味マヨネーズサンド」だったわけだ。保存もきくし、生ゴミも出ない。小腹は満たされ、食べていてちゃんとおいしい。なるほど当時の自分には当時の自分なりの、理路があったわけだ。


いま、会社にはヤマザキの後継クラッカー「ルヴァン」がある。さすがにマヨネーズはないものの、一味唐辛子はある。小腹の空いてきたこの時間帯、軽食としてルヴァンを食べるかどうか迷っている。

これはなんの話だろう。