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ものかきのおかしみと哀しみ

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2019年3月の記事一覧

ベーグル、横から切るか?縦から切るか?

ベーグル、横から切るか?縦から切るか?

こういうニュースに胸がときめく。

ドーナツの形をしていて横から切れ目を入れて具をはさむ、ニューヨークのソウルフード、ベーグルをめぐって、細く縦に切った写真がネット上に投稿されたところ、「犯罪行為だ」といった批判が相次ぎ、全米をあげた論争に発展しています。(NHK 国際ニュース)

大真面目な要素とふざけた要素が、なんともいえない感じに混じり合ったところから生まれる、おかしみと哀しみ。ほんと、こう

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桜と怒りの季節/Cherry blossoms of wrath.

桜と怒りの季節/Cherry blossoms of wrath.

桜が咲くと静かな怒りがよぎる。せっかく世間はお花見気分なのに、なんだか穏やかじゃない話だ。まあだけど、自分の中ではなんとなくそうなってるから仕方ない。

あれは何年前の春だったんだろう。
桜の花びらと生ぬるい風が吹き抜ける夜。当時、僕たちが暮らしていたマンションの目の前の建物で火事があった。

炎というより、ものすごい色と量の黒煙が火元の窓を突き破ってこみあげ、辺りはいろんな意味で一気にダークに染

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空中ブランコ乗り場

空中ブランコ乗り場

部屋の窓からペンギンが通り過ぎるのを見た瞬間、緊張感の糸がゆるんだ。なんでペンギンが道路を? しかも真昼間に? 

一度ゆるんでしまった執筆のテンションを元に戻すのは、簡単そうで簡単ではない。

僕は原稿の続きをあきらめ、外に出る。

街は春の準備で忙しそうだ。新入学、新社会人、新宇宙人のみなさん――。いろんなものに「新」がついて、あれこれ買い物を呼びかけている。

とくに買いたいものも買うべきも

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なんで書くんだろう~もの書きの思案

なんで書くんだろう~もの書きの思案

なんとなくだけど、最近、「書くこと」「創作すること」について悩むというか、想いが逡巡している人が多いような気がする。ただの気のせいかもしれないけど。

悩むといっても、どううまく書け(描け)ばいいんだろうとか、どうすればバズるとか、そういうのでなく「そもそもなんで書く(描く)のか」みたいな本質的、根源的なものだ。

春だからなのかな。いや、季節は関係ないよな。なにかを書く人、創作する人はずっと「な

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イチローのプロ初打席を誰も知らない

イチローのプロ初打席を誰も知らない

プロの生き方としてイチローが好きだった。

もちろん、そんなのは誰もが知ることで、今さら僕ごときがnoteに書くべきことなんて微塵もないくらいのレジェンドだ。だけど、それでも何か話したくなってしまうのがイチローの凄さの一部なんだろうな。

職業や住む世界が違ってもプロの生き方として尊敬できる理由の一つは、彼が常に「自分の言葉」で語り続けてきた人だからだ。

僕はスポーツライターではないけれど、それ

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何かを試される宿

何かを試される宿

仕事でどこかに泊まりになるとき、宿を選ぶ唯一の基準は禁煙の部屋。それだけ。

べつにタバコを目の敵にしてるわけではなく、親しい人間が吸ってる分にはいい。マナー的な問題さえなければ。

だけど泊まる部屋にタバコの匂いが染み付いてるのは無理。まあそれぐらいの嗜好は許してほしい。

たまにビジホで禁煙の部屋を予約したのに、明らかに喫煙も禁煙もどっちでもOKな部屋になってることがあって、さすがにそれは申し

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Not Too Lateなものたちのために

Not Too Lateなものたちのために

ショップの中を流すように服を見ているとNorah Jonesの『Not Too Late』が流れてきた。そう言えば、Norah Jonesはずっと聴き続けてる。好き具合がずっといい意味で一定しているアーティストの一人だ。

それに比べると、高校生とかのときと違って服にかける情熱があまりなくなって (当たり前だけど) なんとなくいまの環境と気分に合ってればいいや的なものになってるけれど 、感じのいい

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生きることは「ひょんなこと」かもしれない

生きることは「ひょんなこと」かもしれない

生きていると「ひょんなこと」がたまにある。

予期しない、得体のしれない、道理では考えられない。こう書くと、すごく重々しいけれど、なんていうか「そう来るか」みたいな感じだ。

偶然というのとも少し違う。べつにネガティブな要素はなく、だけど、どこかで運命的なものも漂わせながら自分の前に現れるもの。

まあ、そういうのがあるから人生はおもしろい。諸先輩方からすれば何を悟ったこと言ってんだと思われるかも

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ライターがときめかない片づけの魔法

ライターがときめかない片づけの魔法

突然だけど流行りにあまり興味がない。

一応、知ってはいるけどぐらいの感じだ。話に乗ることはできる。けど流行りそのものに自分も乗っかろうとは思わない。職業的にいいのか悪いのか。

あえて言うなら、みんなが何かを始める流行じゃなくて、みんなが何かを「しなくなる」流行りのほうが気になる。

自分のやってたことなのに周りがやらなくなったら自分もやめるって何なのだろう。不思議だ。

みんな

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写真徒然 2019.3.17

写真徒然 2019.3.17

春は迷う。カフェ・オ・レとカフェ・ラテのように迷う。

暖かさに油断して、すっかり冬のことを記憶からなくしたのに、冬が忘れ物を取りに戻ってきて微妙な空気になったりもする。僕が春を先取りしすぎた格好をしているからだ。

そうかと思えば、春になったらブラジル体操を始めようかなと思いながら「みんなで筋肉体操」を眺めたりしている。

まあだけど、いまに始まったことでもなく、僕はずっと春という季節に迷ったり

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携帯糸電話

携帯糸電話

朝、起きるとスマートフォンから糸が伸びていた。最初は糸クズみたいなのがくっ付いたのかと思った。

摘んでみたけれど取れない。というよりスマホを持ち上げると、コネクタからスマホの裏側に回り込むように隠れていた糸がだらんと出てきて「ああ」と思った。

たまに聞いたことがある。携帯から糸が出てくる現象だ。

糸が伸びても携帯の機能に支障はないというのがキャリアの公式見解だけど、ユーザーの中には通信速度が

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言葉で少しだけ視界を良くする

言葉で少しだけ視界を良くする

ときどき、ふっと思い出したかのように考えることがある。なんで「書く」仕事をしてるんだろうとか。根源的な問いだ。

本の原稿にしろ何かの記事やクライアントワークで書く文章にしろ、共通してるのは「書くこと」が目的ではないことだ。ここをうっかりすると自分でも勘違いしてしまう。

文章を書いておしまいではない。本当の仕事はその先にある。

じゃあ本当の仕事って何なのか? いろいろあるけれど文章を書い

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カニカマ寮の話

カニカマ寮の話

学生時代、寮に住んでいたことがある。正確にはクラスの友人の代わりに一時期だけ住んでいた。

その寮は一応、大学の公式な寮のひとつということになってはいたけれど、どこが運営しているのか誰もちゃんと知らない。それでも寮費の安さと食堂でご飯が食べれることで入居者は多かった。

寮は三階建の何のデザイン性も感じられない建物で、何かひとつぐらいは好きになれそうな意匠だとか(それが無機質なデザインであったとし

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フリーランスの優雅な休日問題

フリーランスの優雅な休日問題

「休みの日、なにされてるんですか?」

この質問が、いつも答えに詰まる。なにをしてるかが答えられないんじゃなく、そもそも「休み? あったっけ」となるからだ。そこからだ。遠いな。

いや、べつに質問した相手もそんなに真剣に僕の休日をリサーチしたいわけじゃなく、ただの会話だというのもわかる。究極はライターの休日なんてどうでもいいのだから。

だけど自分の中では、まるで哲学的な問いでもされたかのように変

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