マガジンのカバー画像

短編小説(ショートショート含む)

12
短編小説(ショートショート含む)を まとめてみました。よければ是非。  ※更新頻度は不定期となります。
運営しているクリエイター

#小説家志望

短編その7【後編】インタビュー

短編その7【後編】インタビュー

「お疲れ様ー」
「ああ、お疲れ。良かった、バレなかったよ」
「うまくやったね。あんたB男と絡み少なかったし、それにかけて良かったよ」
「それにしても、あいつマジで先月のこと、信じてんのな」
「ウケる」
「化け物がー、だって。あんなの、よく見りゃ着ぐるみってすぐわかんのにさ。ビビリで有名なだけあるよ」
「今の話じゃあいつの中であたし、化け物になっているのね」
「A子、案外そうなんじゃね?」
「冗談で

もっとみる
短編その7【中編】インタビュー

短編その7【中編】インタビュー

——旅館で置き去りにした彼女ですか?
 ああ。…夜の十時ぐらいのことだったかな。とんとんって、泊まっていた部屋の扉が叩かれたんだよ。そんな遅い時間に客が来るか?観光で来たし、他の誰とも約束なんかねーの。彼女かなとも思ったっけど、あの旅館に置き去りにして、その時間まで帰ってきてないからなあって。
 俺が泊まった宿、部屋の扉に覗き穴があってさ。そろりそろりって、穴を覗いてみたわけ。そうしたら、まさかの

もっとみる
短編その7【前編】インタビュー

短編その7【前編】インタビュー

——これまでの人生で一番怖かった体験について、お話しください。
 怖かった体験ね。ああ、あるよ。しかもとびきりのやつ。先月彼女と一緒に、岐阜県にあるXX温泉郷に足を運んだ時のことなんだけど。

——彼女とは、どんな人物ですか。
 あ、彼女のこと?まだ付き合って数日って程度の付き合いたてで、めちゃくちゃ美人でさ。彼氏がいたんだけど、ガンガン押しまくったら奪えちまった。そりゃもう嬉しかったね。元彼の野

もっとみる
短編その6 ハイブリッド

短編その6 ハイブリッド

文字数:1,300字程度
------------------------------------

 コンビニでバイトをしていると、普段関わることのないような人種と関わり合うことができる。今回、俺が実際に働いていて、これまで出会った輩について、少しだけ紹介したい。
「いらっしゃいませー」
「煙草。メビウス。ライト」
 例えばこんな奴。単語だけを区切って述べる奴。こんな奴らを、俺は『コミュ症』系と

もっとみる
短編その5 きになっちゃうおばけ

短編その5 きになっちゃうおばけ

文字数:2,200字程度
------------------------------------

 ——やあ!僕は、きになっちゃうおばけ!
「わ!びっくりした」
 突然私の目の前に、それはふわりと現れた。
 ——ミカちゃん、はじめまして!僕は、きになっちゃうおばけだよ!
 「おじゃる◯」に出てくる、貧乏神のような。逆三角形の位置に黒い穴三つ、真ん中に鼻という、典型的なハニワのような顔をしたそれ

もっとみる
短編その4 腕フェチ

短編その4 腕フェチ

文字数:3,200字程度
------------------------------------

「聞いてくれよ。この前、バイトの夜勤出てたら大変な目にあってさ」
「なんだよ急に」
 ある日の午後。大学の帰り道にて、友人のタカシが話し出した。
「というかお前、そもそもなんの夜勤やってんだっけ?」
「ファミレスだよ、ファミレス。一応俺、ホールな。まあとにかく、二日前のことなんだけどな。変な客が店

もっとみる
短編その3 草まんじゅう

短編その3 草まんじゅう

文字数:3,800字程度
------------------------------------

 古めかしい門構えをくぐり、妻と境内に入る。
 中は雑多な参拝客で溢れかえっていた。近所にあるその寺は、知名度から普段より賑わっている。三が日を終えた平日であっても、それは変わらなかった。
「天気が晴れて良かったね」
「ああ」
 隣で歩く妻が、にこにこと笑顔を浮かべている。二日前までの天気予報では

もっとみる
短編その2  未来予知

短編その2 未来予知

文字数:2,600字程度
------------------------------------

 俺には未来予知がある。

 突然言われても、「何を馬鹿なことを言って」と笑われることは分かっている。しかし、事実なのだから仕方がない。

 ただ、俺の持つこの能力は使えそうで使えない。

 これまでいくつもの未来を予知した。中高と部活でレギュラーになれない予知。受験で第一志望の大学に落ちる予知。

もっとみる
短編その1 よくあること

短編その1 よくあること

文字数:1,800字程度
------------------------------------------

「私、昔ミニバスやってたんだけどさあ」
「ん?何、急に」
 日曜日の正午過ぎ。ソファに座って『新婚さんいらっしゃい』を観ていたその時。横にいる彼女が、徐ろに話し出した。
「いや、幼い頃の話。何だかふと思い出して」
「ふーん。何々、話してみてよ」
 そう催促すると、彼女は「うん」と強く頷

もっとみる