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短編その7【後編】インタビュー


「お疲れ様ー」
「ああ、お疲れ。良かった、バレなかったよ」
「うまくやったね。あんたB男と絡み少なかったし、それにかけて良かったよ」
「それにしても、あいつマジで先月のこと、信じてんのな」
「ウケる」
「化け物がー、だって。あんなの、よく見りゃ着ぐるみってすぐわかんのにさ。ビビリで有名なだけあるよ」
「今の話じゃあいつの中であたし、化け物になっているのね」
「A子、案外そうなんじゃね?」
「冗談でも怒るよ」
「悪い悪い」
「まあでも、今更だけど。よく旅館の地下なんて使えたよな。C君の叔父さんが経営してるんだっけ」
「そうそう。甥とその恋人の頼みならって、喜んで協力してくれたの」
「彼氏様々だよねー」
「やめてよ、恥ずかしいな」
「でもあの地下、やけに年季入ってたね。カビ臭かったし。一階とか、二階や三階のお風呂と大違い」
「実はあそこ、曰く付きの場所なの」
「え?」
「昔…Cの叔父さまが旅館を買い取る前ね。あの場所、児童養護施設だったんだけど。あの地下で、死人が出たらしくて」
「死人?」
「そそ、女の子って言ってたかな」
「うげえ、マジなやつじゃん。俺達、そんなとこにいたのかよ」
「うん。だから従業員の人達も、あまり近寄らないらしいのよ。エレベーターも下降ボタンなかったでしょ?あれ、お客さんが間違って行かないよう、とっちゃったそうなの。でも、ボイラーとかはあの地下にあるから、埋めるにも埋められないんだってさ。今じゃ、叔父さまが適度に清掃するくらいだって」
「へえ。でもまあ、そのおかげで、雰囲気あって良かったよな。B男も怖がらせることできたしさ」
「ほんとね。皆、協力してくれてありがとう」
「全然良いよ。てか、やばそうな雰囲気、俺達ちゃんと出せた?叫び声とか唸り声とか、結構頑張ったんだけど」
「迫力あったわよ。もしも何も知らなかったら、すぐに一階に引き返したと思う」
「エレベーターの感じも良かったよね!C君の友達みんな、演技力あったねえ」
「あれは流石に俺達じゃできなかったからな。B男と顔割れてるしさ」
「というかA子のお姉さん、A子に似過ぎじゃない?」
「え、そう?」
「あたしびっくりしたわぁ。声もそうだし。瓜二つも甚だしいわよ」
「昔からよく言われた。まあ一卵性だから」
「ノリノリで協力してくれたよね」
「B男に姉がいること、言ってなかったもん。急に二人A子が現れたら混乱しちゃうだろうなって」
「実際そのとおりだったわけな」
「うん。でも、これであいつ、Cに何もしないよね」
「多分な。A子のこと、死んだとか思ってるみたいだし。未練もなさそうだったしな。でも、卒業まではあいつに姿を見られないようにしないとな。とにかく、俺らがカバーするから」
「ありがと」
「B男、やばいもんね。狙った女に彼氏がいると、彼氏を脅して、時には怪我させてでも奪う最低なやつだもん。あたしの知り合いの男の子、あいつと同じ高校だったんだけどさ。色々やられたって」
「実際二ヶ月前にC君、事故に見せかけて轢き逃げされそうになったんだろ?」
「あれ、本当に怖かった。デート帰りだったんだけど、それでC、足を折っちゃって」
「ちゃんと証拠があればパクれたのにな」
「そこらへんは周到だよね、B男」
「本当にな」
「ああいう男は、社会に出ちゃ駄目だよ。絶対事件起こして、巻き込まれた人が泣きを見る羽目になると思う」
「それが俺達にならないよう、自衛はしとこうぜ」
「そうだね」
「それにしてもあいつ、一つ間違ったこと言ってたよな」
「間違ったこと?」
「エレベーターだよ。最初四人乗ってたって言ってたけど、A子の彼氏の友達、三人しか乗ってなかっただろ」
「ああ、そういやそうだったね」
「単なる見間違いじゃん?怖くてちゃんと見れなかったって言ってたしさ」
「それか、あれだ。A子も含めれば四人になるだろ。それと混同したんだよ」
「なるほどねー。まあビビリなだけあって、あの日のこと、B男の頭の中でごちゃごちゃしてんのかもね」
「そうそう。強がってるのは見かけだけかよってな。小心者なあの馬鹿が、少しは懲りてくれればいいんだけどな」
「まったくだ」
「ははははははは」

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